第04話 開拓2日目 -進入路工事の続き-
◇ ◇ ◇
私が小屋作りを短期集中で行うのは時間が限られているからである。
私は某国立大学の後期博士課程に所属する院生である。
院生に小屋作りしている金も時間などあるはずないだろというツッコミもあるかもしれないが、それは私が小屋作りのために計画を立て、数年前から着々と準備してきたからこその賜物である。
多くの学生が学部卒業や修士修了時に大金をかけて海外旅行に行ったりするが、私はそれらの時期もひらすらバイトし、土地の購入資金や小屋の資材費を貯め、また研究を計画的に進めることでD2の5月という時期に1ヶ月の自由時間を捻出したのである。
しかし捻出できた時間はたった1ヶ月間だけであり、作業時間にそれほど余裕は無い。
◇ ◇ ◇
[ 2日目 ]
自分の山林で過ごすはじめての朝。
テント泊での朝は早い。天幕を通して朝日が入って眩しくなるので目醒めざるを得ない。私の土地は太陽に東向きで面しており、日の出も、日没も早いのだ。
テントの外に出ると雨は降っていないものの高密度の湿気を感じた。場所が山中ということもあり、やはり湿度は高いようだ。高湿度環境では木材が腐りやすくなるため、今回の小屋作りにおいて防水・防湿対策は必須といえるだろう。
自分の身体は昨日の作業で全身筋肉痛だ。時に腕が酷い。チェンソーでの伐採作業や土嚢の運搬が効いたのではないかと思われる。
泣き言を言って時間を無駄しても仕方がないため、おそるおそる全身を軽くほぐすようにストレッチしたあと早朝から作業を始める。
今日は昨日に引き続き、進入路の工事を進め、次に資材置き場を建設する。進入路と資材置き場は昼頃までには完成させて、さっさと小屋の資材を買いに行きたいところだ。
◇ ◇ ◇
[ 進入路工事の続き ]
昨日伐採した木を並べて体積を稼ぎ、隙間を土嚢で埋める。
地味な作業だが仕方がない。進入路の工事さえ完了すれば、自動車で物資を運べる様になるので開拓が楽になるだろう。
2時間ほど掛けて十分なスロープが出来たので、次にスロープの上に土を被せ、固めていく。
進入路工事は重機を使えば楽に終わることなのかもしれないが、今回の小屋作りでは進入路工事を含め重機を使わない予定だ。正確に言うと使わないのではなく"使えない"。
その理由は単純に予算が少ないからであり、文明の利器を否定しているわけではない。
また重機の免許を持っておらず持っている人のツテもなく、使うとしたら業者に依頼するしかないが、依頼に必要な費用の相場がわからないというのもある。
工事を終え、試しに軽自動車で通ってみる。
運転は慎重に行う。なにしろこの軽自動車はレンタカーであり、もしひっくり返ったりでもしたら大変だからだ。
ごくごく低速で進入路に入る。
段差を埋めた傾斜はかなりなだらかにしたつもりだが、それでも自動車ではかなりの傾きを感じが、それ以上に問題なのは凹凸である。土を被せて足で踏み固めたが、ぜんぜん締まっておらず土の中はスッカスカだったみたいだ。
軽自動車で通ること自体は問題無かったが、このあとで資材搬入を行うことには不安が残るので玉切りにした木に左右2本の棒をボルトどめして簡易的なタコを作り土固めを行った。
今回作った進入路は恒久的な道として使用するにはあまりにも脆弱だろうが、資材搬入のために数日間使う分にはなんとか耐えてくれるだろう。
スマホで時間を確認するともう11時になっていた。
資材置き場はまだ着手すら出来ていないが、そろそろ建築資材を買うためホームセンターに行かなければならない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます