087 新たな旅立ちⅦ
「一花がもう少し手加減してくれれば、この怪我も無かったんだが……」
斜め前に座っている一花を見て、裕也は頬の傷を撫でながら、列車が発車するのを待った。
「それにしてもここともしばしの別れか……。いい場所だったが、そうでもなかった。まぁ、そんな感じか……」
構内では人々が行き来している中、人際異彩を放つ二人組に目が留まった。
黒のワンピースを着た女性と同じく黒一色の衣類を着ていた男が裕也の目の前を通り過ぎて行った。
――――あれは……。
「どうしたんですか?」
窓の外を見ている裕也に三久が話しかける。
「いや、あそこに……あれ? いや、なんでもない……」
二度見すると、そこには二人の姿はなかった。
『この列車は間もなくセントラルに向けて発射いたします。ご乗車の方は扉が閉まりますので、駆け込み乗車はおやめください』
車内アナウンスが流れると、扉が閉まる音がし、列車はゆっくりとセントラルに向けて動き始めた。
裕也が見た二人組は、アルブレヒト教会・神の神殿にいた。
「あらあら、ここまで派手にやってくれるとはね……」
「なあ、これをどう報告すればいいんだよ」
「ありのままに報告するわよ」
「はぁ……面倒くせぇな……」
「いいのよ。私達は一度この国を後にして、私達の主の元へ戻るわよ」
「へいへーい……」
男は、女の意見に逆らわずに後を着いて行った。
――――今度はじっくり殺し合おうぜ。炎の魔導士さんよぉ……。
少しずつ、時間が刻まれて行き、運命の日に近づいていく。
誰もが予想もしていなかった事が加速していくのだ。
選択肢はいつも無数に広がっている。
その一つを人は歩いてゆかなければならない。
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