085 新たな旅立ちⅤ
「あの人、お前らも姉さんに会ったんだな」
「はい。いつも通り嵐のように去っていきましたけどね……」
三久は頬を引きずりながら愛想笑いをした。
「そうか。まあ、この一週間考え続けて、姉さんの話も聞いて、やっと俺なりの意思がまとまったよ」
「そうですか。それであなたは結局何をするんですか? この先、何のために生きるのですか? これからどこに行くのですか? 私には? 一花には? 二葉には? なんというつもりですか?」
裕也は相当な質問攻めに当てられ、自分のヒットポイントが失われていくような感覚だった。
「待て待て、そんなに言われたら話せるものも話せないって……。そうだな、まずは一つずつ目の前の事と向き合ってから前に進む。それにはものすごい時間がかかると思う。そして、俺の目的は元の世界に変えることだ。それにはこの世界を旅し続けていかなければならない。まあ、生きるって事はそう簡単ではないって事は分かっているつもりだ」
「そうでしょうね。生きるってことは、衣食住において、絶対にかけがえのない事です。衣類が無かったら外も出られない。風邪をひいて、病気になってしまいます。食べ物が無ければ、餓死していくだけです。住むところが無ければ、厳しい自然に勝つことすら出来ません。人というのは、食物連鎖の中では一番下の地位にいるのかもしれません」
裕也の言葉にしっかりと返す三久。
「後は、色々と心配かけてすまなかった。確かに俺ばかり抱え込んでいた。本当にすまなかった。悪いと思っている」
裕也は頭を下げて謝った。
「べ、別に私はいいです。それよりも他の二人に謝ってください。私も同罪何ですから……。だから、私に謝れなどは撤回します」
三久は恥ずかしそうに顔を隠す。
自分も裕也と同罪だと思っており、罪悪感を抱いているのだ。
あの時の事を二人には未だに話せておらず、切りだすタイミングが見つからなかったのだ。
一花はどこかに行ってしまい、二葉はベットの上で毛布をかぶって横になっている。
裕也は二葉が寝ているベットの上に座り、二葉に背を向けながら話し始める。
「ああ、その……お前にも色々と心配かけたな。あと……」
「それ以上言わなくていい」
「え?」
裕也は後ろを振り向く。
二葉がゆっくりとうつ伏せの状態から体を起こし、顔をこちらに向ける。
「分かってる。だから、今度はしっかりと話してくれればいいから……」
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