054  ウエストシティの内戦XVII

 裕也は一枚の紙切れを渡した。



「ああ、言い忘れていたが、この講堂の周りには私の部下たちが待機してある。逃げるなどそんなことはさせぬぞ!」



「さすが、元軍人。四方八方からの逃げ道を防ぎ、一瞬の隙を与えないところはさすがだな。だが、それは普通の魔導士や錬金術師の話だ。俺はそうじゃねぇ……」



 立ち上がって、ゆっくりと男に近づく。



「だからこんな男は俺一人で十分だ。来いよ、空っぽの操り人形。俺がすぐに片づけてやる」



 裕也は人差し指を立てて前後に動かす。



「行け! 俺が交戦中の間はすぐに抜け出せるだろ!」



 襲い掛かってくる男に対して冷静陣なしで地面を砕き、足元を狙う。



「逃がして堪るか! ウェスト、二人とも捕まえろ!」



「了解」



 ウェストは小声で答え、砕けた地面を思いっきり右拳で殴る。



 地面は割れ、裕也は体勢を崩して、膝を地面につける。



「にゃろぉ……」



 裕也は苦笑いをしながらウェストを見上げる。



「だったら……紅蓮の爆炎グレン・エクスフレイム!」



 と、裕也はウェストの足元に魔法陣を発動させる。



 そして、地面が爆発し爆発の炎に包まれ、体を焦がされる。



 だが、ウェストはすぐに爆炎の中からすぐに脱出してきた。どこにもダメージらしきところはなく、何事もなかったかのように平然と立っていた。



「やはり、これだけで倒れるようなものじゃねぇーよな……」



 感心して、ウェストが連続で裕也を殴りかかってくる。



 それを綺麗にかわして後方へと跳びはねていく。



「‼」



 右からマーロスが放った魔法が飛んでくる。



 ――――間に合わねぇ!



 裕也はマーロスの魔法を正面から受け止めそのまま壁に叩きつけられる。



「ぐはっ!」



 口から吐血し、そのまま床に倒れる。



 ――――どうやら、二葉はあの穴から外に逃げたようだな。しっかりと脱出してくれよ……。



 裕也は傷ついた体をゆっくりと起こして、立ち上がる。



 右腕は使えないほどの怪我を負い、血が流れだしている。



 このままでは苦戦を強いられるだろう。

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