036 三年後の世界XIII
「それにしてもあいつ、一体今まで誰と話していたのかしら?」
「たぶん、デミトロフ大佐でしょう。二葉に話があると言っていましたし……」
「民間回線で軍人と連絡? 盗聴されるんじゃないの」
二葉は整え終えた髪を乾いたタオルでそっと撫でる。
「たぶん、大佐が同じように民間回線に切り替えたと思いますよ」
「ああいうことに関しては抜け目ないのよね、あの大佐」
「ユーヤと似ている。先々と考え、誰にも言わずに自分一人で行動していく」
「確かにあの二人は似ているわ。特に面倒なところがね」
「そうですね。氷と炎は昔からいがみ合っていると言いますしね」
「そんなことわざあったかしら?」
三人は少し笑いながら裕也が帰ってくるまで二人の嫌みを話し出す。
夕食の時間までまだ時間があり、裕也が帰ってくる頃にはちょうどいい時間帯になっているだろう。
「それにしても明日からはこういった暇な時間が無さそうね」
「一花はいつも遊びすぎ」
「あんたが言うか! 運動神経鈍いあんたがいつも足を引っ張っているんでしょ!」
「だとして、それ以外でカバーしているから一花よりはマシ」
「何言ってるのよ! 私がいないと攻撃力がいつも下がるでしょ!」
「でも、私がいないとそれが有効活用されるとは限らない」
一花と二葉はすぐに口喧嘩になる。
「ふ、二人とも今はそんな話をしているんじゃないでしょ!」
「三久は黙ってて!」
「あんたはいいわよね。錬金術でいろんなものを作り出せるから……」
「なら、一花も錬金術師になればよかったんじゃないんですか!」
「そもそも錬金術ってくだらないのよね。魔法に劣っているし、あまり使いどころがないじゃない。創る事しかできないのよ。錬金術師は……」
「何か言いましたか? 錬金術師というのはですね……」
三久が何か言いだしそうになった時――――
「お前ら! もう少し静かに話せ!」
と、風呂上がりの裕也が叫びながら部屋に入ってきた。
「おい、そこの三つ子三姉妹! 今は夜で他の部屋には人がいるんだぞ。人の迷惑も少しは考えろ!」
三人を床に正座させて、裕也は椅子に座り足を組み、腕を組む。
さすがの裕也も頭を悩ませていた。
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