わが身ひとつの 3


 な? な? と俺が問うと、祐志は「まさか」と当然のように首を振った。


「そうなったら、俺は迷わず先輩側だな」


「なんでだよッ」


「俺、先輩には嫌われたくねぇもん」


「ええ~ッ?」


「でもお前なら、俺を嫌わねぇだろ?」


 アホか、嫌うわッ! と叫ぶ俺に、祐志はまた楽しそうに笑った。


「まったく」


 溜め息1つ吐いて頬を膨らませると、「ひろッチーッ!」とどこからか叫び声が聞こえてくる。


 祐志から視線を外し前を見ると、バス停から少し離れた所に停まる白い車が目に入った。車の横に立っている2人のうちの1人が、俺達に向かって大きく手を振っている。


 祐志の友人、竹内昭仁だ。


「――誰? 『ひろッチ』って」


「さあ。お前の事じゃね?」


 そう言った祐志が、竹内の隣に立つ人物を見止めた途端、足を止めた。


 放心したように動かない祐志の顔を覗き込む。


「……祐志?」


 俺が何度か名前を呼んで、ようやく祐志は「ああ」と小さく反応した。


 そうしてゆっくりと歩き出す。


 走り寄って来た竹内は、俺の両手首を掴むとブンブンと大きく上下に揺らした。

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