なほあまりある 4


 俺の事より、昭仁の方が心配だ。中学の頃は、出席した日数よりも欠席した日数の方が多かった。もちろん成績もそれに比例している。


 夜は遊び歩くから何度も補導されたし、他校の奴等との喧嘩もしょっちゅうだった。


 はっきり言って、中学だったからこそ、卒業出来たのだ。


「オレ? オレは」


「竹内ィーッ!」


 俺達の会話を遮るように、怒気を含んだ声が響く。驚く俺達の視線の先で、昭仁の友人の1人がペッとガムを地面へと吐き捨てた。


「俺等、先行ってっから」


 俺へと睨みをきかせながら歩いていく。


「おー。後で追いつく~」


 呑気に答える昭仁に、相手は苛立ちの籠った仕草で背中越しに手を振った。残りの3人も、俺達に冷たい一瞥をくれてから背中を向ける。


「――昭仁」


 低くなった俺の声に、なぜか昭仁だけではなく、弘人までもが反応した。去って行く友人達から視線を剥がし、俺を見る。


「お前。先輩の言ってた事、忘れた訳じゃねぇよな?」


 敢えて弘人を無視したままで言う。突然出てきた『先輩』という言葉についても、説明する気はなかった。

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