夜ぞふけにける 8


 浴衣なのも気にせず大股でズンズン歩いて来たかと思うと、俺達の間に割って入った。


「フンッ」


 そう言って俺から顔を逸らせ、潤一さんの腕を両手で抱えるようにして歩いて行く。


「ちょっ……」


 引き留めようと伸ばした手が、虚しく宙で止まる。驚いた顔で姉貴を見つめる潤一さんの背中は、無情にも そのまま遠ざかっていった。


「……なんだあれ?」


 闇に紛れてしまった背中を見つめ、俺同様取り残された祐志に呟く。


 すると祐志は肩を竦めるようにして、「そりゃあ」と返してきた。


「弟が、顔赤くして自分の彼氏見つめてたらねぇ」


「なっ!」


 それこそ、顔に熱を持つ。


「誤解だーッ」


 叫んだ俺に、祐志がクスクスと笑う。そうして歩き出しながら、「どうだかなー」と揶揄うようにそっぽを向 いた。


「ホントだぞ! 潤一さんに確認してみろッ」


 追いかけながら、背中を指差し言ってやる。「あー、はいはい」と等閑に頷く祐志に、「お前こそ、姉貴と何話してたんだよ」と腕を掴んだ。


 2人で腕なんか組みやがって。

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