人の恋しき 2


「いいよ。鍵は置いといてくれたら」


「……女子も行くって言ってんだぞ」


 少し声を潜めて囁いてくる。俺は少し笑ってから「いいよ。また今度な」と返した。


 美術部員の中にも、結構面白い奴等は何人かいる。この倉田も、その内の1人だった。


「じゃ、頼む」


 そう言って、他の数人の美術部員達と共に美術室から出て行った。


 美術室に残っているのは、俺と弘人のみ。もともと今日は暑いからか、部員の集まりは悪かった。


 大城はそういう所は結構大雑把なので、夏休み中の部活の参加は自由参加だ。大城自身も毎日来るには来るが、長くいたりすぐに帰った りとまちまちだった。


 現に今日なんかは午前中に顔を出しただけで、すぐに帰って行った。


 する事もないので、窓の外に目を向ける。カーテンが揺れているからやっぱり風は吹いてるんだろうな、と今更ながら感心していた。


 そしてようやくカーテンを大きく靡かせてこちらまで届いた風は、弘人の髪をくすぐるように揺らす。


 思わず笑いが洩れた。変な方向に曲がった弘人の髪を指先で戻してから悪戯に、そのまま髪を撫でてやる。

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