さしも知らじな 9


 さっきよりはゆったりとだが、手首はまだ握られたままだ。


 後ろ姿しか見えないこいつが、今どんな顔してるんだろ、なんて思う。


 自分では見れないけど、握られた手首ばかりを見つめている俺自身も……。


 それでも、嬉しさが込み上げてくるのはどうしようもなくて。


 祐志に引っ張られながら、目の上に片手をかざして夢中で花火を見上げた。


「すっげぇ。キレイ! な、な、祐志! 今の見た? スゲェよな?」


 はしゃぐ俺に、振り返りながら祐志が苦笑を浮かべる。




 ――ああ、そうだ。




 俺達はこんな、ちょっとした『探検』にドキドキする。


 花火の見事さにはしゃいで、時折じゃれ合うように体をぶつけて、同じタイミングで歓声をあげたりする。

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