しづこころなく 1
風呂から出てリビングに入ると、テーブルで携帯が点滅していた。持ち上げて相手を確認すると、『織田 弘人』と出ていた。
――着信1件に、メールが1通。
両方が弘人のものだった。留守録には何も入っていないようなので、メールを開く。すると『電話くれ』と唯一言、文面が書かれていた。
何かあったのか?
髪をバスタオルでガシガシと拭きながら、取りあえず電話をかけてみる。電話を待っていたのか、いつもは流れる騒がしい音が流れる間もなく、すぐに弘人が出た。
『祐志?』
「ああ」
どうかしたのか? とこちらが訊く前に、向こうが口を開いた。
『お前、今から家出れる?』
「あぁ?」
時計を見上げると、まだ22時前。
「なんだ? 明日じゃ駄目な事なのか?」
春休みは終わって、明日も普通に学校がある。多少の事ならば、明日学校で聞けばいい事だ。
『明日じゃ遅いから、今言ってんだよ』
イラついてる訳ではなさそうたが、急かすような口調で言う。
「…………」
『……無理っぽい?』
こちらが無言だったので、渋っていると思ったのだろう。遠慮がちな声で問いかけてくる。
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