第35話「続魔女が13人いる」

 最初のゲームが始まるわ。


 わたしより先に来ていたのは、尾瀬子おせこ魔理恵まりえ久利須くりす の3人だ。


 さっさと挨拶を済まし本題にはいる。


「アース。ここには何度目?」尾瀬子が私に質問してきた。

「2度目よ。前回は、賢者に封印されたわ」

「負けたのか……」と尾瀬子の顔が落胆に変わる。


 嘘よ。もう20回は輪廻している。でも今回は違う。魔女が13人いる。ひとり多い。


「魔女は12人いたはずなんだけど……なぜか13人いたわ」


 賢者は、初めからいた魔女にすり替わって参加しているハズ。そうでないこの世界は、私の知らない世界だ。私以外に『時を渡る魔女』がいるのかしら? コレはとても楽しいことだ。私の知らない未知の存在。それが作り出す未知の世界。コレはとてもワクワクする。


「13人目の魔女は、賢者だ!」と尾瀬子は言う。

「ねえ、久利須。私たち魔女以外が『魔女LINK』に参加することは可能かしら?」と魔理恵。

「そうね──。不可能と言いたい所だけど……あの賢者だもの。可能性はゼロじゃないわ」と久利須、そう久利須。あなたは賢者のはずね? 私が守るべき対象。でも、たまに読み違えることがあるわ。この久利須は、果たして賢者なのかしら? 他の魔女に気づかれぬよう……接触する必要があるわ。でも、それは今じゃない。


 RRRR……

 4人目の魔女の登場よ。

「フーリンだ。尾瀬子おせこ。今回も『人狼ゲーム』だな?」

「すまん。私は前回の記憶を……」


 フーリン? 誰? 私の輪廻の記憶にはない、新たな魔女ね? 「へ──。こいつが『時の魔女』? 良いわ。試してあげる。私は、今までの時間では、存在しなかったアドリブを入れる。

「フーリンって──あのフーリンなの? 確か賢者の知り合いじゃなかったかしら?」

「……」「……」「……」

 他の3人が沈黙する。フーリン、あなたはどう返すかしら?

「賢者には、常に煮え湯を飲まされてきた。流石はアース。私の賢者に対する憎しみの歴史をご存知だとは……」

 知らないわよ、そんなもの……。とは言えない。やられた! 私は『輪廻の魔女』として、知っていなければならなくなった。知らないなどと言えば、私は自分の『輪廻の魔女アース』の名前を汚される。

「まあまあ、私も賢者との嫌な記憶を思い出したくない方だから……フーリンもそうだろう?」

「尾瀬子の言うとおりだね。今は忘れよう。ありがとう」と逃げられた。フーリンは、尾瀬子側の魔女か?」



 ……もう一度やってみよう……

 ……私は輪廻の魔法を行使する……



 RRRR……

 4人目の魔女の登場よ。

「フーリンだ。尾瀬子おせこ。今回も『人狼ゲーム』だな?」

「すまん。私は前回の記憶を……」


 フーリンの登場シーンからだ。私は輪廻の力を使った。もう一度挨拶をやり直すことにした。

「フーリン。久しぶりね? あなたの事は、尾瀬子から聞いているわ」

「……」フーリンは意外そうな顔をした。「ああ。輪廻を使ったんだね? 私はあなたより魔法力が上らしい……。覚えているよ。フフフ……」

「……」今度は私が沈黙する番だ。輪廻の魔法は、すべてをリセットする魔法。でも魔法総量が多い魔女には効かない。輪廻しても記憶を持ち越してしまう。「……あなたは一体だれ?」

「お互いあまり話さないほうが良いと思うよ。それでは、あなたが賢者の支援者だとバレてしまうよ?」

 今この場では、尾瀬子・魔理恵・久利須の3人も聞いている。とてもまずい。

「アースが、賢者の仲間なのは承知している」尾瀬子がこんなことを言った。そして、魔理恵と久利須も同じだと言った。

「そうか、私を封印するかい?」

「いいや、コレが一回きりの勝負ならそうするが……あなた(アース)が、私たちにも輪廻を使ってくれるなら今すぐには、封印はしないよ。私たちの目的は、賢者の封印だから……ちなみに、私(尾瀬子)も記憶を持ち越している……気にするな……そういうものだ」

 傍観者を気取っていた私は後悔した。もうゲームは始まっているのだ。私もこのゲームの参加者なのだ。

「ところで……アース。この中に賢者はいるのかい?」尾瀬子の尋問だ。

「わからない」と私は素直に答えた。「まだ賢者と接触していない」

「それ以上聞くと、アースが可哀想だよ」とフーリンが助けてくれた。フーリンて良いヤツかも……「ゲームが面白くなくなるよ」なんてヤツ──前言撤回だ!


 私は尾瀬子よりもフーリンを最新のライバルに認定した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る