第1話「魔女の集会」(前編)

 魔理恵まりえは、私より1晩早く目覚めていた。

尾瀬子おせこおはよう!」

「早速、男子をはべらしているの? 誰?」

 痩せ型の美男子が、魔理恵まりえを膝枕している。彼女は魔法薬の薬師で、特に媚薬を得意としている。

「生徒会長の、高橋ミナトくん。昨日知り合ったの。私を寝かせるのが上手かったわ」

 艶のある話をしながら、魔理恵まりえは私にキスをする。

「オトコの味」



 私は、杖をひと振りして、部屋の模様替えをした。明るい、洋風の部屋になった。

「あら? 怒った?」

 杖をもうひと振りすると、生徒会長が消えた……帰宅したようだ。

「怒ってないわ。それより賢者。 まだ来てない?」

「さあ、あなたの方が詳しいんじゃない?」

「反応はないわ。でも油断できない。前回もいつの間にかやって来て封印された」

 ギリと歯ぎしりの音がした。悔しかった。

「前回は、まとまり過ぎてたわ。あれでは一網打尽にされるだけ……」



 前回の賢者との対決は、とある国の城攻めだった。賢者がひとりで城を守り。

対する12人の魔女が城を攻めた。3人ずつ4方向から城攻めを行った。

魔女の配置も良かったのに……。

 攻め込んだ大講堂に、12人の魔女が集まった瞬間。魔女たちは、石化され封印された。あれから200年も経っていない……口惜しい。



「でも、ミスはミス……」

 私の手に、スマホが現れた。

「今回はコレよ!」

「ミナトくんが持ってたわ。スマホでしょ?」

 魔理恵まりえは、ちゃっかり彼のスマホを拝借していた。そのまま使う気だ。

「この方が便利でしょ?」(スマホは本体を買うより、契約するが大変なのだ)



「むむ。久利須くりすにアプリを頼んでいるの。私たちだけが使えるアプリよ」

 空中で、スマホが回転している。ピピピと鳴った。

「はろー尾瀬子おせこ出来たわよ−!」


 空中のスマホに新しいアプリが登録された。

久利須くりすは創作の魔女だ。今回は、LINEそっくりのアプリを作った。

『魔女LINK』と命名されている。



「魔法を感知して起動するの。私たち12人の魔女だけしか使えないわ」

 空中に浮かんだ、スマホに久利須くりすの顔写真が浮かぶ。話している相手の顔が表示される仕様だ。久利須くりすのスマホには、私の顔が表示されているのだろう。



 RRRR……

「来たわ」魔理恵まりえのスマホにも『魔女LINK』が登録された。

「ちょっと待ってて、目覚めた魔女全員に『魔女LINK』を登録するわ」



 RRRR……

「アースからよ『魔女LINK』を登録してるわ」

「今回は『魔女LINK』スマホね? 元気にしてた?」アースは、輪廻の魔女だ。同じ世界を渡り歩く魔女。『魔女LINK』について知っているところを見ると、何度か来ているのか?」



「アース。ここには何度目?」

「2度目よ。前回は、賢者に封印されたわ」

「私たちを戻してくれたの?」

「ええ。今回はゲームよ。『人狼ゲーム』って知ってる?」

「村人に化けた狼が、村を襲うゲームでしょ?」

「そう、村人が出来ることは、疑わしい村人を処刑することだけ」

「そして、狼が出来ることは、毎晩ひとり村人を殺すこと?」

「賢者が狼よ!!」

「12人の魔女に紛れているか?」



 アースの説明はこうだ。私が、12人の魔女に『魔女LINK』を配った瞬間。

魔女が13人いることに気付く。12人の魔女+賢者だ。

賢者は『人狼ゲーム』をしようと持ちかけてきた。

『人狼ゲーム』と違うところは、処刑ではなく封印するところ。

魔女側にも『賢者の封印の力』を貸し与えてもらい、ゲームはスタートした。



 昼間に、魔女たちが会議をし、封印する魔女を選ぶ。その中に、賢者がいなければ、夜のターンになる。夜のターンは、賢者の封印により魔女がひとり封印される。

1日でふたり封印されることになる。

 魔女は、賢者が封印された途端、魔女の封印が全て解けて、ゲームに勝った事を知る。

 逆に賢者は、自分以外の魔女を封印して。 今回のゲームも勝利する。


「アース、詳しくは教えてくれないのか?」

「ああ『輪廻の魔女』としては、教えることは出来ない。理由はわかるな?」

「教えた途端、全く異なる未来が始まる」

「今回は、私より能力の高い者が3人いるようだ。自力で覚えろ!」

「私と賢者。そして……フーリン」

 私とフーリンは、とても強い魔女だ。他の魔女を合わせて何10倍しても叶わない程の力を有している。ではどちらが強いか? それは今後、対決してのお楽しみだ。



「記憶を維持できるのは、魔女では、私とフーリンだけね?」過去に戻る『輪廻の魔法』は便利だが、ほとんどの魔女の記憶も元に戻る。記憶を維持できるのは『輪廻の魔女』アースよりも魔法の力が強い魔女だけだ。12人の魔女の中でも2人だけ。そして憎いのが、賢者も力が強い。だから賢者も記憶を維持できると見ていい。



 RRRR……

「フーリンだ。尾瀬子おせこ。今回も『人狼ゲーム』だな?」

「すまん。私は前回の『人狼ゲーム』を知らない様だ」と私は謝罪する。

「……ふぅん。心当たりはあるが、今は言わないでおこう」

「なんだ? 勝ち誇った様な言い方だな? お前の方が魔法力が強いと言いたいのか?」

「違うちがう。お前が早めに封印されたせいだろう?」

「ああ、なら記憶がないのも判る」



「なあ、アプリに色を付けれないの? 例えば、尾瀬子おせこは『青』魔理恵まりえは『緑』みたいに」フーリンが提案した。

「ああ、視認性をあげたい? わかったわ」と久利須くりす「できたわ」



『青』が尾瀬子おせこ

『緑』が魔理恵まりえ 媚薬の魔女

『黄』が久利須くりす 創作の魔女

『灰』がアース 輪廻の魔女

『紫』がフーリン 力の魔女



 RRRR……

 RRRR……

「「ハロー ハロー」」

「「ちょうどいま来たとこ」」

このハモって喋るふたりは双子の魔女。


『桃』が「世梨奈せりな」双子の魔女(姉)

『苺』が「香梨奈かりな」双子の魔女(妹)


「桃色はわかるけど、苺色って何?」と魔理恵まりえ。この双子が苦手だ。

「ま、ほとんど赤ね」と私。

これで半分、7人の魔女が揃った。

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