第24話 本体を探せ!
「大切なものが残っている解体した時見付けよ、だって」
「それじゃあご本体が残っているのかも、見付かれば良いけどねえ」
「あの五來さんミッションて何処から?」
私の代わりにおばちゃんが説明してくれる。
「あんた小学校は別だったの、この子はね五年生の終わりまで病院のベットでずっと眠り続けていたんよ、一生目を覚まさないかもしれないって言われてたけど神様が助けて、いや仏様かお寺の子だからね、助けてもらったんよ、だから神様の声が聞こえるんよ」
「聞こえるって言うか頭の中に言葉が浮かぶの、ただの幻想かもしれないけどやっぱりお返ししないとね、私が生きているのは神様と仏さまと今の両親のおかげだから」
「い、いまの、、、?」
「うん親に見捨てられたみなしごだったの、私が眠っている間に親になってくれてほんとの子供以上に可愛がってもらっている、恩返ししない訳にいかないのよ」
「あ、、、」
「何も聞いてなかったら無理もないさね、私だってこんなに元気になるなんて思っても無かったよ」
奥に居たおじさんも黙っていられなくなったようだ。
「ほんまになあ、中学生になるまでは生きておるんか死んでおるんか分からんような子やった、こんなええ娘さんになるなんて、、、うっうっうっ、、、」
「あんたは向こうへ行ってな、ええ歳してみっともない」
「あああ、え、えっとう、、、」
「あのさあ可哀そうとか思わないでね、私幸せだから、多分世の中で一番幸せを感じられてると思う、そりゃもっと幸せな子は沢山いるだろうけど、でもわたし程生きてることで幸せを感じている子はめったに居ないと思うよ」
「そうそういくら可愛がられても当たり前とかもっと贅沢したいとか、欲深いものは幸せにはなれんのよ」
「あーボクもその口かも姉や弟の出来がいいからってクヨクヨしちゃって、いつも言われるんだ、お姉ちゃんは勉強が出来て弟は運動が出来て、あんたはどっちもダメねえって」
「いやいや、あんたはうちの子を助けたそれで十分えらいよ、勉強できても知らん振りしたり苛めに加わったり、そんな子なんて何の値打ちもありゃせん」
「はあ、褒められるなんて初めてかも、僕は出来が悪いから」
「そんなこと思っちゃダメ、勉強できるから全て良いって事は無いの、学校の先生が悪いことをやったり、警察官がお金盗んだりそれじゃあダメなの、いくら勉強ができたってそんなことしたら自分も周りの人もみんなが不幸になってしまう、そんな事が分からない人がダメなの、家族を守れない人はダメなの」
力説してしまった、マジ引かれた。。。
「五來さんて見かけによらず逞しいって言うか、強いね、羨ましいな」
「わたしは今持っているものを失くしたくないから、手からこぼれ落とさない様にしたいんだけど、わたしの頭はポンコツだからさらさら流れ落ちても気が付かなかったりして、今有るものが全てなんだ、最近やっと少しだけ記憶が残る様になったけど、小学校の記憶なんてほとんど残ってないの、だから今を大切にしたいんだ」
「それで神様の声が聞こえたりするんだ」
「幻覚かも知れない、あまり本気にしないで」
「でもお狐様を助けて頂戴、昔はそりゃあ楽しかったもんだよ」
「うん何かが残っているんだきっと見付けなきゃ、おばちゃん家の取り壊しが決まったら教えて、一日中張り付いて見張るから」
水曜日帰る前にケータイを見たら喫茶パリのおばちゃんから電話が入っていた、電話掛けなくても例の家の解体に決まっている、高坂君も手伝ってくれると言うので事前に打ち合わせをしておいた、解体の連絡が有れば下駄箱に赤のシールを貼っておくと。
違う組に入っていくのは恥ずかしい、高坂君も止めて欲しそうだったので下駄箱にシールを貼っておくと決めておいた。
学校から一緒に帰った事はまだない、多分この先も。
最近になって出来る様になった早歩き(それまでは急ぐと倒れた)で急いで喫茶パリに到着。
おばちゃんも一緒に解体する家の所へ向かった、すでに家の形は無く瓦礫となっていた。
建設機械が瓦礫を掴んでダンプカーに積み込んでいる、私は有る方向へ引かれる感覚を感じたけど作業の邪魔になるのでおばちゃんと歩道で待機した。
「おばちゃん左の奥の方に何か有る、引っ張られる」
「そうかい、それなら探す手間が掛からんね、機械が止まったら(探し物が有ると)頼んでみるさ」
「入れてもらえるかなあ」
「大丈夫、任してちょんまげ」
なんとも力の抜けるギャグを放って一人悦に入るおばちゃんだった。
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