最弱勇者語録「ラッキースケベ。それは女には理解することのかなわぬ果てしなき男のロマン」

「おまえがいないと困るんだって。魔王倒せないだろ」


 競歩かというぐらいとばして振り払おうとする横につき、説得を続ける。デネブは目もあわせようとしない。


「勇者の使徒はほかにも集まるのでしょう? 正妻戦争だかなんだか知りませんが勃発するほど。私ひとりぐらい抜けたってかまわないでしょう」

「そんなことないって。戦力はひとりでも多いほうがいい」

「ではおおぜいお集めになればいいじゃないですか。勇者様お好みの、下着がチラ見えする女性ばかり」

「そりゃ見えないよりは見えたほうがいいけど、風呂場ではちあわせするとか転んだ拍子に胸をわしづかみするとか服だけ溶かす粘液を出すモンスターと遭遇するとかのラッキースケベがあるかもしれないから、そこは大丈――」「最っ低ですね」


 ぱっとひとにらみして前を向きなおると、デネブは歩みを速めた。

 やばい、選択肢を間違えたっぽい。くそ、エロゲーならロードしてやり直せるのに。やり直しきかないとか、もとの世界と同じじゃん。異世界、使えねえな。


 コンティニューなしの一回勝負だ。よく考えろ。理詰めと感情の両方から攻め落とすんだ。

 まずはデネブを必要としていることをもっと強調し、情に訴えかけよう。

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