旅だって三日で野たれ死にのかっこわりー勇者
俺は今、どこにいるんだろう。
ふらつく足で一歩一歩、歩みを進めながら、ぼうっと遠くを見やる。
歩いても歩いても見えるのは草ばかり。ときどき木がぽつんと生えているぐらいで、少しも進んでいる気がしなかった。
なにがきついって、空腹よりも喉の渇きだ。
たしか飯よりも水のほうが断たれるとすぐやばくなるはず。三日ぐらいで死ぬみたいな話を見た気が。それ、もう今日じゃん。
体だけでなく心情的にも最低だった。
信用されて報酬を前渡ししてもらったのに、クエストを達成できないばかりか依頼品まで食っちまって。もうあの酒場には行けないな。いや、どこかの街までたどり着けるのか、俺…………。
不意に、世界が回った。
体がなにかにぶつかる。
目の前の土の匂いを嗅いで、ああ、ぶっ倒れてんだ俺、と気づいた。頭がぐるぐるする。
とても立つ気力が湧かない。というか体が動かない。目を開けているのもだるかった。
やべ…………これ、死ぬやつだ。
旅だって三日で野たれ死にか……。はは、かっこわりー勇者……。つか、こっち来て勇者らしいところなんてなんにもなかったな……。クソ弱くて、仲間見捨てて、逃げまどって……。某大冒険の初期のポッ◯かよ……。いや、あっちのほうは呪文は普通に強かったが、俺は勇者のくせに完全にステータスが死んでる……。ゴミもいいとこだ……。もう、いっそすがすがしいほどのザコだね、ザコ……。これも俺にお似あいのくたばりかただよ……はは……ははは…………。
なんだよ……もう半死半生の俺に構うなよ……誰だか知らねえけど…………。
脇に立つ人影の幻覚へ、俺はそうぼそりつぶやくように口を動かした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます