いや、男のはべつにいいです、興味ないんで
「じゃあ、我々はそろそろ行くよ。あの森の薬師への用事がまだ途中だからね」
「なんか、面倒をかけてしまってすんません」
俺が萎縮すると、助けを必要としている者に手を差し伸べなくて、勇者殿の供になる資格はないよ、と四人は笑った。
勇者――俺はその言葉に食いつき尋ねた。
「魔王を倒すため、勇者殿を探している」男の人は面持ちを引き締めて言った。「この世でただ一人、魔王を討てる者。しかし、さしもの勇者殿も一人では魔王には立ち向かえない。勇者殿もまた仲間を求めて旅をしていると聞く。我々はその供にふさわしい力と魂を誇っていると自負している」
ほかの三人も、笑みを隅に置いて、自信に満ちた目でうなずく。どうやらこの人たちには俺のステータスは見られないらしい。
どうして――どうして言えるだろうか。
あんたたちの探し求める勇者は目の前に立っていると。なにを隠そう俺がその勇者だと。
言えるわけがない。こんな完璧超人の前で。ゴミザコでダメージ量小数点以下で仲間見殺しにしてスケべで馬鹿でロリコンで無職童(中略)の俺が名乗り出られるか。爆笑されるのがオチだ。
いや、それで済むならまだましだ。万一、信じられて、絶望させてしまったら。そっちのほうが耐えられない。他人に失望されるのが一番キツい。
もっと強くなってからだ。この人たちに胸を張って勇者を称するのは。
誰かが言ってくれた。俺は強くなり、世界の救世主になる、と。どれぐらいかかるか見当もつかないが。
問題は、将来どうやってこの人たちに連絡をつけるか。
「一応、聞いてみるんですけど、メールアドレスとか持ってます? あるいは電話番号……」
「すまない、よく聞きとれなかった。もう一度言ってくれないか」
あ、いや、いいです、なんでもないです、と俺は笑ってごまかした。
とりあえず名前だけは知っておこうとステータスを確認したが、見慣れない妙な名前で四人分も覚えられない。男はイケメンA、B、Cでいいか。お姉さんだけ覚えとこう。
あと、もしかして、お姉さんのあれも見られるんだろうか。チェックせねばなるまい。
【B???/W???/H???】
ああ、やっぱりパラメーター、存在するんだ。で、見えないんだ。
ちなみに男のは見えた。
では、またどこかで会おう、そう言い残して完璧超人たちは空の彼方へ飛び去っていった。
浮き上がった瞬間、お姉さんの、短いローブの裾を凝視した。見えた。白だった。今夜のオカズは決まった。
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