【悲報】異世界で最初の朝、とんでもないことになっていた……【盾のない勇者でも成り上がれますか?】

 とりあえず最初の足がかりは酒場だ。ほとんど人の出歩いていない朝の表通りを見るまでもなく、こんな時間にあいてるとも思えなかった。コンビニじゃあるまいし。


 開店まで時間をつぶそうにも、そのコンビニは、この石畳と石造りの建物となんだかわかんない戦士っぽい石像という、とにかく石・石・石、コンクリなにそれ食えんの、な街並みには一ミリもたたずむ余地なし。伊勢っぽい神社だとかのクソの役にもたたない施設とかいらねえから、どうせ日本ぽい要素をぶっ込んでくるなら、もっと現代社会人に優しい商業施設を完備しといてくれりゃいいのに。まったく、そういうとこだぞ、エセ界。いやゴミ界だったか。


 毒を吐きつつ、しかたなしにその辺をぶらつこうと歩きだし、すぐに足を止めた。

 なにかがおかしいことに気づく。いや、さっきからずっと違和感はあったんだが。


 ――剣が、ない。


 ゲロのところを見たが落ちてはいなかった。

 よく考えてみたら盾も持っていないし兜もない。それどころか鎧さえ身につけていない。酒場に忘れたか。いや、べろべろに酔っていたが、出たときは全部持っていたのを覚えてる。まさか。

 嫌な予感がして懐を探った。有り金が入った小袋、アイテムをまとめた道具袋、金目のもの――――いっさいなくなっていた。


 と、盗られた…………全部。


「うああああああああーっ!」


 すこやかな朝の街に、俺の悲痛な雄叫びが響いた。

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