覚えにくい名前の悟空八戒カッパのトリオのパーティーにいきなり加わってたんだがこいつらがもうザコいのザコくないのって、控えめに言ってカス?

 三人の屈強な男たちは、アニメかゲームで見るような鎧やローブを身につけ、剣や杖を構えている。コスプレ? こんな三十か四十ぐらいのおっさんが? 人里離れた僻地で? 牙をむきうなり声をたてる数十匹の犬に取り囲まれて?


 おっさん一人一人を見ていると、なぜかそれぞれの名前がわかった。

 右から【アルバテグニウス】【ロンゴモンタヌス】【ウェンデリヌス】ってなげーな。めんどいから雰囲気で、サル顔の悟空、落ち武者頭のカッパ、メタボの八戒でいいか。

 てか名前わかるとかゲームみたいだな。なかなかに面白い夢だ。

 レベルやクラスもわかるらしい。全員レベル三。しょっぼ。レベル三て。カスみてーな連中だな。

 で、クラスは――悟空【戦士】、カッパ【魔道士】、八戒【重戦士】。メタボなだけに。


「勇者様はなにがなんでも死守するぞっ」


 悟空が怒声をあげた。八戒が太い声で応じる。カッパはなにやらごにょごにょ唱えていた。

 え、なに、勇者って俺のこと? 自身のステータスも確認してみる。

 お、ほんとじゃん。クラス【勇者】ってよ。マジか。すげー。

 自身の格好をよく見てみると、俺も剣を握り鎧を身にまとっていた。連中のような見るからに量産品の武具とは違って、剣も鎧も、透き通るように白く輝いている。王家の紋章のごときいかめしい印が刻まれ、古代文字とおぼしき文言や記号があしらわれる。こいつぁーもしかしなくても伝説の武具かあ? 名前を確かめる。


【聖剣ラグランジュ】

【聖鎧ジョゼフ・ルイ】


 おおー、なんかクッソ強そうな名前。かっけー。

 そうだ、俺の名前はなんなんだろ。


【アルタイル】


 お、いいねえ。主人公っぽいネーミングだ。


 夢であることをいいことにひとりではしゃぐ俺のかたわらで、犬たちが動きを見せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る