第3話 別れ

 村を襲った武装組織は、村人を、 男、女、少年の3グループに分けた。村人たちは、全員沈黙し、自分たちの運命がどうなるかを静かに待っていた。


 襲撃者のリーダーと思しき男が、一人の少年と、一人の男を連れ出した。そして少年に銃を渡し、「撃て!」と命令した。

 

 少年は怯えた目つきで泣きじゃくりながら首を降った。できないと言おうとしたが、言葉が出なかった。その瞬間、

「バン、バン」

 銃声が2発轟き、リーダーの男が少年と男を撃ち殺した。


「キャー!」

「あー!」


 村人たちが悲鳴をあげると、男が銃を空に向け、銃を一発放った。

「黙れ!」

 村人たちが静まり返る。

「男たちは全員殺す。子供たちは使えるやつは生かすが、使えないやつは殺す。若い女は生かすが、年寄りは殺す」


 そして、皆が怯えるなか、また一人の少年と、一人の男を連れ出した。少年に銃を渡し、「撃て!」と命令する。

 少年が泣きながら首を振ると、再び銃声が2発轟いた。


 先程あがった悲鳴が、今度はあがらない。


 張り詰めた沈黙の中、さらに、一人の少年と、一人の男を連れ出す。少年に銃を渡し、「撃て!」と命令する。

 少年が泣きながら銃をかまえる。男の体が恐怖に震える。少年が銃を撃つと、男の体が沈んだ。

「よし、連れて行け」

 少年が襲撃者たちの集団に迎えられた。


「次からは、泣いているものも殺す。我々に弱者は必要ない。わかったか」

 男が少年たちを恫喝した。


 一人、また、一人と、少年と、村の男が連れ出されていった。そして、銃を撃てなかった少年、泣いた少年、全ての男たちが殺された。


 最後に、沙羅が連れ出された。沙羅の前には、ユセフがひざまずかされた。

「撃て!」

 リーダーの男が命じる。沙羅は必死に涙をこらえ無表情を作った。ユセフは沙羅を見つめ、無言で頷いた。


「バン!」

 沙羅の撃った弾丸が、ユセフの頭を貫いた。


 そして、沙羅の心は死んだ。

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