二つの銀河帝国~アルマージュ・ランドー氏の受難~

宮前葵

一章、そもそもの始まり


道に迷った時、人間ってものは性格によって、大体2つの行動のどちらかを選ぶ。


一つは冷静に状況を把握しようとして、立ち止まる。


もう一つは、まぁ、いいか、って感じで闇雲に歩き続ける。


俺は断然後者に属する。だから、どうだと言う訳ではない。俺という男はそういう男なんだと理解してくれれば良い。




帝国歴219年暮れ。銀河帝国軍少佐であるところの俺。アルマージュ・ランドーは、多少困っていた。


俺が艦長を勤めていた駆逐艦「ホープ」は、敵の攻撃によって見事に大破。つまり行動不能になり、仕方なく俺は総員退艦を命じた。


運命を共にするほど大した艦でも無かったので、俺はむしろ我先に救命艇に乗込み、脱出した。総員211名中201名が脱出に成功した。戦死した我が部下の魂に安らぎあれ。


救命艇で漂っているだけでは助かったとは言えない。一応国際条約で救命艇への攻撃は禁止されている訳だが、宇宙空間に撃ち出されちまったビームやミサイルにとっては、そんなことは知ったこっちゃ無い訳で、装甲板などある訳も無い救命艇で戦場に漂っている状況というのは、なかなか良い感じのスリルを味わえる状況なのだった。


救命艇は救助を求める発光信号を発しながら、戦場を懸命に逃げ回った。そして、とある宙域で応答信号を発してくれた救いの神を発見。喜び勇んでそのデカイ戦艦に近寄ると、


それがなんと敵の艦だった。


という訳で、俺は多少困っていた。え?多少で済むのかって?




「参りましたね」


副長のオリオンがぼやいた。救命艇を操縦しているのはこいつだ。


「どうします?別に逃げても撃たれはしないと思うのですが…」


俺は腕組みをして考えている振りをした。実は、考えるまでも無く結論は決まっていたのだが。


なぜなら、オリオンの茶色い頭越しに覗き込んだ救命艇のコンソールパネルで「燃料不足」のランプが点滅していたからだ。ビンボーランプ。つまり、戦場に取って返して新たな救いの神を探すような真似をすれば、かなりの確率で俺達は宇宙の漂流者になるであろうということである。


じゃぁ、なぜ考えている振りをするのか。そりゃあんた、俺が何の躊躇も無く「はいはい」とばかりに敵に投降してみなさいよ。捕虜交換か何かで帰国した時に「あいつは喜んで敵に投降した!」などという内部告発が無いとも限らない。下手をすれば軍法会議だ。ここは多少なりとも、苦渋の選択を強いられた指揮官の様な芝居をしとくのが得策だ。


しかし、俺の軍人生活もこれでチェックメイトだな。多少の感慨が無いでもない。士官学校を卒業して5年。そこそこは順調な昇進をし、将来を嘱望されていなくも無かった俺なのに。


故国、銀河帝国を離れることには、あまり執着は無い。両親は既に死んでいたから家族はいない。ちらっと思い浮かぶ顔も無いでは無いが、別にそれほど未練がある訳でもない。27歳まで育ててくれた我が祖国よさようなら、また会う日まで…。


てなもんだ。なんてことを考えていたら、救命艇はその敵艦に近付いていた。救命艇は動いていない筈なので、あっちが動いたのだろう。


白い、優美な戦艦だった。敵国、ロスアフィスト王朝の艦は、認めざるを得ないことに、我が銀河帝国艦隊の艦よりも余程カッコイイ。特にこの艦は一際典雅だった。艦名が艦首に記されている。どれどれ?


「ナイチンゲール」


…おいおい。


それって、もしかして…。


「これ、敵の総旗艦じゃないんですか?」


オリオンが半ば呆然と指摘した。その通りだ。俺の脳みそにも、敵の総旗艦の名は「ナイチンゲール」だと記憶されている。総旗艦。敵の親玉が乗っている艦だ。


だからどうだと言う訳ではないが。捕虜になるのはどうせ同じなのだ。しかし、銀河帝国皇帝陛下の座乗する、我が総旗艦に乗ったことも無いのに、敵の総旗艦に乗れるというのは、それはそれで面白げだな。俺は決断した。


「よし。この艦に投降しよう。投降信号を出せ」




収容活動はなかなか手早かった。さすがは旗艦。俺達の救命艇は気密デッキに係留され、それから通信での要求に応じて全ての武器を船外に投棄した。ハッチを開けると完全武装の兵士が30人ほど入って来て、船内を隈なく調べ、一人一人のボディチェックをする。指揮官は誰かと問われたので、俺が名乗り出た。


船外に出ることは許可されなかった。戦闘中であるのだから当然である。しかし、武装兵の隊長らしき男が俺だけは救命艇を出るように指示した。なんで。


「皇帝陛下がお会いになる」


なんで×2。


「知るか」


ごもっとも。俺は手錠を掛けられ、心配げな部下の視線を背に受けながら、救命艇に別れを告げた。


戦艦ナイチンゲールの中は、別にゴテゴテしい飾りがある訳でも無い、素っ気無い普通の戦艦の内装で、少しもおもしろい所は無かった。戦闘中なのにえらく静かで、艦が鳴動するようなことも無い。


艦橋の入り口で2回ボディチェックを受けた。うち1回は超音波で頭の先から爪先に至るまでの中身を覗かれた。裸にされるよりはマシか。


ナイチンゲール艦橋。ロスアフィスト王朝軍の心臓部というわけだ。広さは150畳ほどもある。かなり広い。頭上は半円のリアルスクリーンになっており、宇宙空間がそのまま映し出されている。


前方方向の端に固まって座っているのが艦橋要員で、入ってすぐの後ろの方にあるテーブルを囲んでいるのが艦隊司令部の面々なのだろうとあたりを付ける。艦橋の中は薄暗く、そしてやかましかった。引っ切り無しにオペレーターが何か叫んでおり、それに応えて艦長らしき士官や参謀らしき男が怒鳴り返している。


艦橋の中央にホログラムスクリーンが展開されており、戦況図が映っていた。俺がそれをしげしげ観察しようとしていると…。


「余計なものを見るな」


と引っ張られた。


艦隊司令部らしき連中がいる後ろに、1mほど高くなっている場所があり、そこに一つの椅子が設えられていた。あれが玉座であろう。おお、ついに敵の皇帝陛下と御対面だ。俺の心がときめかなかったと言ったら嘘になる。何しろ憎き敵の親玉と、小学校の頃から散々吹き込まれてきた相手なのだ。一体どんな面してやがるのか。


玉座の手前で俺を連行してきた兵はその役目を交代し、代わりにロスアフィスト王朝近衛軍の気取った制服を着た士官が玉座の前まで俺を連れていった。跪いて恭しく何事かを告げる。俺も強制的に跪かされた。別に信条的なこだわりもなかったので大人しく頭を下げる。


「あんたが敵の士官なの?」


突然間近から声が降ってきた。思わず顔を上げる。


「角も生えてなければ尻尾も無いじゃない」


そりゃ、そうだろ。


「唯の人間なわけ?つまんないの!」


俺は呆然とした。その言い草にもだが、その言葉を発した人物に対してもだ。


少女だった。女の子。まだ成人してはいまい。どう見ても15~17くらいだ。真っ黒でやたらに大きな瞳に好奇心を充填させ、人のことを珍獣でも見るかのように観察している。髪は紫にさえ見える程の黒髪で、腰のあたりまで伸ばされている。着ている服は深緑色を基調に各所に朱を配されたロスアフィスト王朝の軍服。そして頭上には、控えめな王冠を頂いていた。


「なんだおまえは」


俺の言葉に彼女はむしろ面白そうにふんぞり返ると、高らかに名乗った。


「控えなさい!我こそは銀河帝国21代皇帝、エトナ・ロスアフィストなるぞ!」


…そうだとは思ったけどな。


まぁ、知ってはいた。敵国(ちなみに連中は「我こそが正当なる銀河帝国」と名乗っているのだが、我が方としてはそんなことを認めてやる訳にはいかない)の皇帝は最近代わり、先皇帝の娘であったエトナ・ロスアフィストとやらが跡を継いだのだということは。しかし、まさかこんなに若い少女であるとは、ちょっと予想外だった。


皇帝エトナは俺のことを頭のてっぺんから爪先まで観察し終えると、失望の吐息を吐いた。


「なによ、全然普通じゃない。敵の士官ともなればもう少し変っているのかと思ったのに!」


「どういうのを期待してたんだ?」


途端に俺の横に跪いていた士官がいきり立って俺を押さえつけようとする。いいじゃねぇか別に。俺はこの少女に忠誠を誓っている訳でも屈服した訳でもないんだぜ?エトナが士官を制してくれたので、俺は再び彼女と目線を合わせた。


「もうちょっと邪悪な顔をしているとか、切れ者っぽく眼鏡がキラーンって光るとか、エロそうな顔をしているとか」


「我が軍のどこをどう連想すればそういう士官像が完成するんだ?」


「だって、邪悪なるアーム王朝軍の士官でしょう?普通な顔をしていたら面白くないじゃないの!」


…これは彼女を教育した者の罪だな。まぁ、俺も敵の皇帝は、男であれば玉座に美女を侍らせた腹の出たおっさん、女であればペルシャ猫でも抱いた妖艶な美女を連想しちまったくらいだからエトナのことは言えない気もするのだが。


我が銀河帝国(アーム王朝)と敵国ロスアフィスト王朝(こっちも正式には銀河帝国)はそもそも一つの帝国だった。帝国は銀河の各地を探査し、植民し、どんどん人類世界を広げていった。


それが100年ほど前、跡継ぎ争いに単を発した抗争で帝国は分裂。以来、たまには仲直りの期間があったにせよ、両国は慢性的な戦争状態にあるのだった。


その歴史を思えば、両国の国民、兵士、ついでに皇帝も、そうは違いがあろう筈も無いということは簡単に理解出来る。少なくとも同じ人間同士であることは間違い無い。


「ふん、つまんない!もういいわ」


エトナは手を振り、俺は引っ立てられた。まぁ、いい。目的は果たされた。敵の皇帝がなんとかわいい女の子であることが確認出来ただけでも収穫だ。これから捕虜になる身でそれが何の役に立つ訳でも無いのだが。




それは、俺が艦橋を出て、背後で自動ドアが閉まった瞬間に起こった。


気が付いたら暗い場所で浮いていた。…どうなってんだ?


浮いているのは、ここが無重力だからだろう。慣れ親しんだ感覚である。すぐに分かった。しかし普通、艦船の中は人工重力が働いているはずだ。実際、さっきまでは確かに俺の足は床に着いていた。


なんだか体中が痛い。段々思い出してくる。背後で艦橋の自動ドアが閉まった瞬間、俺は何故か後ろから突き飛ばされ、俺を連行していた士官と共に通路の壁に叩き付けられたのだ。


なんで閉まったはずのドアから突き飛ばされねばならんのか。俺はとりあえず反動を付けて姿勢を整えると、手近な壁に足の裏を押し付けた。磁力ブーツが働いて、俺はとりあえず仮の地面を得る。


暗い。さっきまで通路に満ちていた明かりは消え、非常灯だけが視界の頼りだ。


何かが浮いている。近寄ってみると、俺を連行していたはずの士官だ。良く見ると、首が有り得ない方向に曲がっていた。…運が悪かったな。俺はそいつのポケットを探り、3つ目のポケットで目的のもの、手錠の鍵を発見した。ようやく両手の自由を得る。


何が起こったのか、段々分かってきた。俺は通路を歩いて、艦橋のドアまで辿り着いた。ドアは艦橋側から巨人に蹴飛ばされたかのようにひん曲がっていた。空いた隙間からどうにか身体をねじ込む。


けたたましいアラームや叫び、雑音。艦橋の中は音で満ちていた。天を覆っていた星空はただの半円形の天井となり、その一部に真っ白な部分がある。


ああ、やっぱり。どうやらナイチンゲールは艦橋に直撃弾を受けたらしい。あの白い部分はビームか何かが貫通した部分で、そこを補修剤が直した痕なのだろう。傷が小さいところを見ると、直撃を被ったのは別の部分で、ビームか何かの粒子が流れ弾となってここに当たったのかもしれない。


艦橋に人影はなかった。そりゃそうだ。補修剤によって気密が復活するまでは多分数十秒だったろうが、その間ここは真空になったのだ。気圧差で人間など簡単に吸い出されてしまう。一応俺は艦橋要員が着くべき座席を見て回り、誰もいないことを確認すると、艦隊司令部の連中がいたテーブル周りを見、最後に階を昇って、あの生意気な小娘が座っていたはずの玉座を確認した。


…いた。なんとエトナは玉座に座ったままだった。鼻血を出している。あれ?そう言えばこの玉座の周りだけは重力が無くなっていないようだ。さすがに玉座だけあって、ここは何かしらの防御装置があるのかもしれない。


もしかして生きているのか?俺はエトナの首に手をやった。…脈がある。運が強い娘だ。艦橋にいた連中が全滅した中で一人生き残ったのだから。


しかし、困ったことになった。俺は気を失ってぴくりとも動かないエトナのあどけない顔を見ながら考え込んだ。放っておく訳にもいかないだろう。しかし、医務室の位置も分からないし…。


いや、それより先にもっと困ったことになっているようだった。アラームの中、切れ切れに聞こえてくる他艦からの通信。


『敵接近中!』


『4時方角!伏兵だ!』


『旗艦!指示を!』


『旗艦どうした!進路がずれているぞ!』


俺は艦橋中央の戦況を表わすホログラムを見た。なかなか丈夫な機械だな。


なるほど。俺の艦がやられる直前には、両軍はがっぷり四つに組んでの至近砲撃戦を展開していたはずだ。我が軍が推定4千隻、ロスアフィスト王朝軍が5千隻。


それがどうも我が軍が劣勢となり、後退をし、ロスアフィスト王朝軍が追撃を掛けた(ここらへんで俺の艦は大破した)。


しかし、我が軍の後退は擬態だった訳だ。惑星の陰に伏せておいた千隻あまりの分艦隊がロスアフィスト王朝軍の斜め後方から襲い掛かった。最後方に位置していたナイチンゲールは運悪く被弾。


ここぞとばかりに後退を止め、反転迎撃に出た主力艦隊と伏兵である分艦隊に挟み撃ちにされ、しかも、旗艦は被弾。司令部は機能停止。


ロスアフィスト王朝軍の命運は風前の灯火というわけか。


俺はエトナを見、それから戦況図をもう一度確認した。ナイチンゲールは明らかに迷走しつつ有り、あまり考え込んでいられる時間は無さそうだった。


この期に及んでも艦橋に人が駆け付けてこないということは、艦橋に繋がる緊急気密隔壁が閉鎖されてしまったということなのだろう。当分の間は誰もここには来られない。誰かが艦をコントロールし、艦隊を指揮しなければロスアフィスト王朝軍は壊滅するだろう。そして、この艦橋には実質、俺しかいない。


つまり、エトナとロスアフィスト王朝軍をなんとか出来る可能性があるのは、この俺だけなのだ。


それなりに悩んだはずだが、結論はあっさり出た。仕方ない。助けられた恩も有るしな。それに、お姫様を守るのは騎士の勤めでもある。じゃじゃ馬っぽいとは言え、エトナは正真正銘のお姫様だ。


ま、やってみるか。見た限りロスアフィスト王朝軍の状況はかなり悪い。俺が何をやっても何ともならない可能性の方が高い。だったらとりあえずやってみよう。


俺は艦橋の最前方にある操舵手席に座り、転がっていたインカムを装着した。


「機関室聞こえるか!」


『こちら機関室!艦橋の状況は!』


「俺が以降操舵を引き継ぐ。なお、人員不足のため機関官制も俺がやる。とりあえず両舷半速!」


俺は舵輪を回してナイチンゲールを本来の進路に復帰させると、席を立って通信員席に移動。全艦隊に向け通信を発した。


「こちら旗艦。旗艦は直撃弾を受け、司令部人員が全滅した。なので俺が指揮を受け継ぐ」


どこかの艦から切迫した調子の通信が入る。


『直撃だと!被害は!皇帝陛下は無事か!』


「ご無事である。なので、安心して俺の指揮に従え」


『貴官の官姓名は?司令部が全滅したとはどういうことか!』


俺はまったく心を痛めること無く嘘をつく。


「俺はアルマージュ・ランドー少将だ。先程皇帝陛下に司令官代理に任命された。なので安心して俺の指揮に従うように」


随分な身分詐称だが、大将だの元帥だのと名乗らないところが俺の奥ゆかしさなのだと思って頂きたい。


さて、俺は状況図を確認し、大きく息を吸い込むと全艦隊に指令を発した。


「全艦、4時方向に全速で後進せよ!」


『は?』


という呆れ果てた声が宇宙空間に響き渡った気がした。俺はもう一度言う。


「全艦、4時方向に全速で後進しろ!ケツを敵艦隊の鼻面にぶつけてやれ!」


俺はそれだけ言うと操舵席に取って返し、機関室に向けて怒鳴った。


「機関後進一杯!」


機関室の復唱を確認すると、俺は舵輪を回し、ナイチンゲールが敵、つまり我が銀河帝国軍分艦隊に後ろ向きに突っ込む様に操舵する。


さぁ、どうなるかね。俺は呟いた。状況図ではナイチンゲールを示す光点が一瞬停止。それからどんどん味方を置き去りにして後進して行くのが表示されている。このまま俺の命令をロスアフィスト王朝軍が聞かないと、ナイチンゲールは銀河帝国軍の集中砲火を浴びることになるだろうね。


ロスアフィスト王朝軍もそう思ったのだろう。旗艦に続き、総数5000隻程の艦隊全てが、慌てふためいて後進に移った。どうやらうまくいった。俺はほっと息を吐いた。その時。


「何よこれ!」


俺の後ろで金切り声が上がった。


「どうなってるの?何なのよ!どうして誰もいないの?何であたし、鼻血なんて出してるのよ!」


あらま、意外に早くお目覚めだ。振り向くと皇帝陛下、エトナ・ロスアフィスト嬢が玉座の前で立ち上がり、いきなり頭から熱湯を掛けられた猫のようなパニック状態に陥っていらっしゃった。無理も無い。


その内俺を見付けたらしい。エトナはなんだか物凄い勢いで階を駆け下りようとし、途中であらぬ方向に飛んでいった。


ああ、玉座以外が無重力になっていることに気が付かなかったのか。しかも無重力に慣れていないらしい。くるくる回りながら天井方向に飛んで行く。ほっとけば激突だ。仕方ない。俺は床を蹴ってエトナの方に向うと、彼女の腕をキャッチ。反動を付けて回転を止めると、エトナを抱えながら天井を蹴ってゆっくり床へ戻った。


色々あり過ぎてキャパシティオーバーになったらしい。エトナは口を意味も無く開閉させながら、俺のことを見、周囲を見回し、状況図を見、そして俺の耳元でいきなり喚き始めた。


「なにこれ!どうして敵に向って後進してるの?どういうことなのよ!」


戦況を慮るほど状況が理解出来ているとは思い難いね。しかし、落ち着かせるために解説してやるのも良いかもな。俺はエトナを砲手席に放り込むと、ベルトを締めてやった。


「座ってろ。その内主砲の操作もしてもらわにゃならん」


「何なのよ!無防備な背中を晒してわざわざ敵に接近するなんて!あ、ほら、撃たれてるじゃない!」


俺はエトナの頭に手を置くと、砲手席にあるモニターに状況図を映し出し、解説してやった。


「いいか、我が軍は敵に挟み撃ちにされている。特にまずいのは位置的に近く、火力的にも有利な後方にいる、この敵分艦隊だ」


モニターを指で叩く。


「これから逃れるには、前に逃げたい訳なんだが、前には敵の主力がいる。敵の主力は分厚く、正面突破は難しい。じゃぁ、分艦隊の方へ反転迎撃するか。有り得ないね。敵前回頭などしたら陣形が崩壊する」


俺はエトナの、少し涙ぐんでいるような黒い瞳に少し動揺しながら続ける。


「じゅあ、どうするか。そう考えると敵に向って逆進して行くのが一番いいんだよ」


「だって、敵に向って背中を見せながら近付いて行くなんて聞いたこと無いわ!自殺行為じゃない!」


「理由は幾つかある。第一に、敵の意表を突ける」


エトナは俺の正気を疑うような表情を浮かべた。


「ばか、意外に重要なんだぞ。見ろ。敵の分艦隊は意外な我が方の行動に驚いて砲撃の足並みが揃っていないだろ。こっちの損害は僅かだ」


「…ほんとだ」


「正面の敵の本艦隊も我が軍がこんな動きをすると思っていないから、追撃が遅れている。迷ってる隙にどんどん射程外に離れている。これで我が軍は挟み撃ちの状況を脱した訳だ」


エトナの瞳に理解の色が浮かんだ。やれやれ。俺はエトナの頭をぐりぐり撫でてやり、彼女に通信士用のインカムを渡した。


「しかも、我が軍は敵の分艦隊と加速度的に接近中だ。もっと近付くと面白いことが起こる。ま、その前に、全軍が心配している。声を聞かせて安心させてやれ」


エトナは、おずおずと頷き、インカムを頭に装着。俺のキューの合図を受けて喋り出した。


「全艦隊に告げる。エトナである。皆に心配を掛けたようだが、余は無事だ」


ロスアフィスト王朝軍全艦艇の隅々から、宇宙空間に歓声が広がるのが聞こえるようだ。


「戦いはこれからだ。戦意をあらたにして、司令官、えっと、ランドー少将?の指揮に従うように。以上」


インカムを外してから初めて、エトナは俺の顔をまじまじと観察した。


「ランドー少将?」


「嘘だがね」


俺の制服。ブルーのジャケットとベージュのスラックスを見る。


「あなた、さっきの…」


「おっと、今更信用出来ないなんて言ってくれるなよ?この艦橋には俺とおまえしかいないんだからな」


ここでエトナが俺を疑えば全てが終わる。俺はまじめな顔をしてエトナと見詰め合った。


エトナは多少の躊躇はしたようだが意外にあっさりと言った。


「信用する」


理由は言わなかった。その方が俺も気が楽だ。


そんなこんなをしているうちに、艦隊は段々加速しながら(宇宙空間だからな)敵の分艦隊にがんがん接近した。近付けば近付くほど敵の砲撃は薄くなった。宇宙艦船の砲撃戦では距離によってビーム粒子の種類やミサイルの射程を変更せねばならない。予想外の我が艦隊の後進に対応し切れていないのだ。


そして、更に接近すると敵艦隊の動きが突如乱れた。


「どうしたの?」


「このままでは衝突することに気が付いたのさ」


我が艦隊は一直線に敵艦隊に突進している。放って置けば当然ぶつかる。うむ、自明のことである。


「ぶ、ぶつける気?」


「その前にあっちが避けるだろ」


頼むよ親愛なる銀河帝国艦隊の同僚諸君。


敵の分艦隊は、我が艦隊が突っ込む直前で慌てふためいて二つに分裂。別れたその中央を我が艦隊が悠々すり抜けて行く。ここで俺は指令を発した。


「全艦隊!機関戻せ!」


まだ敵艦隊の直中であったが、この辺で前進に移らないと慣性で敵艦隊から離れ過ぎてしまうのだ。ナイチンゲールの機関室にも指令を発する。


我が艦隊は急ブレーキを掛け、スピードを落しつつ敵艦隊の間を擦り抜けると、敵艦隊から少し離れた所で停止した。


つまり、分裂して混乱した敵分艦隊の後方至近である。


「エトナ!」


俺の声を待つまでもない。エトナはインカムのマイクに噛り付くようにして叫んだ。


「全艦隊に告げる!復讐の時が来たわよ!憎むべき敵艦隊に思う存分怒りの炎をぶつけてやりなさい!」


誰にも見えないだろうに。エトナは大きく右手を打ち振った。


「撃てぇ!」


宇宙空間に光が満ちただろう。ロスアフィスト王朝軍5千隻の主砲門が一斉にビーム砲を発射した。同時にミサイルも、航跡を描きながら敵艦隊に襲い掛かる。ナイチンゲールの主砲を操っているのはほかでも無い皇帝陛下だ。俺が艦を動かし、敵艦を正面に入れると、エトナが喜び勇んで主砲発射レバーを引く。


まさに大逆転である。敵の分艦隊はのた打ち回りながら次々を砲火を浴びて撃沈されて行く。何が起きているのか理解できないだろうね。


アーム王朝の分艦隊はもともと1千隻程度と数が少なかった。しかも分散して、混乱中でしかも後背から5倍の敵に攻撃されたのだ。壊滅までに1時間と要しなかった。さっきから敵だ敵だと言ってきたが、連中はさっきまでの俺の友軍だ。多少は心が痛む。まぁ、生き残るためにはやむを得ない。


エトナの喜び様は見せてやりたいほどだった。ベルトを外してやると俺の手を振り回しながら無重力に身体を舞わせて自作のダンスを踊り始める。


「ね、ね、次はどうするの?まだ敵はたくさん残ってるじゃない!どうやってやっつけるの?」


などと踊りながら言い出す始末だ。俺は頭を振った。


「もう頃合いだ。撤退した方が良い」


エトナの動きがぴたりと止まった。要説明という視線が間近から俺の両目に向けて飛ぶ。


「…確かに、今の戦闘で戦力的には大差が付いた。だけど、敵の本軍と正面から戦えば互いに大きな損害を出してしまうだろう?無駄だよ。敵に大損害を与えたことに満足して引き上げるべきだ。これでも十分な大勝利だろ?」


「でも!」


「それに」


俺はエトナを押し留めた。戦況図を指差す。


「敵の方がこれ以上の戦闘を望まないよ」


そこにはアーム王朝軍が後退して行く様が示されていた。当然だ。戦術が失敗し、戦力的にも大差が付いた状態で、あえて逆転を願って戦闘に訴えるなど軍事ロマンチズム的な行為だと言うべきだ。まともな指揮官ならやらない。


エトナはその様子を落っことして転がって行く丸いパンを見送るような、残念そうな表情で見ていたが、やがて晴れやかな笑顔で俺の方を見上げた。


「ま、いいわ!」


そしてダンスの続きを踊り始めた。


程なく気密隔壁がどうにかして解除できたのであろう、ナイチンゲール艦橋にロスアフィスト王朝軍の近衛軍士官が大挙して入って来た。そして皇帝陛下となぜか複雑な顔つきで踊っている敵の士官(俺だ)を発見するや、アメリカンフットボールのラインバック顔負けのタックルをかまし、10人掛かりで押え込んだ。


言い訳する暇もありゃしない。連中の俺に対する扱いは著しく丁重さを欠き、なかんずく俺にけがをさせる危険性など微塵も考慮した形跡が無く、あまつさえ死んだって構わないとさえ考えているのは明白で、俺は危うく両腕を折られた挙げ句に窒息死してしまう所であった。


これを見るやエトナが柳眉を逆立てて怒った。


「アルを放しなさい!」


びっくりするぐらいの大音声だ。俺を押さえつけていた連中は一瞬硬直、そしてまるで雪だるまが陽光に照らされたかのように、俺の上にあった人のかたまりがバラバラと崩れた。


エトナは俺に駆け寄ると、有り難くも俺の身を案じ、それから俺の首に噛り付くように抱き付いた。


俺の運命が決定されたのはこの瞬間なのだろうね。後から考えると。




銀河帝国軍(アーム王朝軍)少佐であった俺は、一夜にして銀河帝国軍(ロスアフィスト王朝軍)少将となった。まったく人生というのはどこに向って転がって行くのか分からないな。


実は俺は少佐だったのだという俺の告白にもエトナは頓着しなかった。


「あっそ。じゃぁ、あたしを助けたことで2階級特進、我が軍を勝利に導いたことで2階級特進ってことで良いじゃない」


ということだ。帝政における皇帝の絶対権力に栄光あれ。


つまり、俺は何時の間にか投降ではなく亡命した事にされ、その上でエトナを救って軍を救った英雄として、なんだか何時の間にか大々的に賞賛される立場になってしまったようなのだ。エトナの侍従から、真新しいロスアフィスト王朝の軍服と少将の階級章を渡された俺は、はっきり言ってうろたえた。


「こんなの、困る」


「何が困るの?」


ニコニコしながら見ていたエトナが怪訝そうに眉を顰める。


「俺は別に自由意志で亡命した訳じゃないし、こっちの艦隊の指揮を執ったのは、え~、緊急避難というやつで…」


エトナがじっと俺を見ている。


「その、こんなことをしてもらいたくてやった訳じゃないんだ。俺と部下を無事に国へ戻してもらうだけで十分だよ」


「帰りたいの?」


エトナが愕然としたように言った。


「なんで、なんで帰りたいの?あたしと一緒にいたくないから?そうなの?」


「いや、そうじゃなくて…」


「あたしは…、アルにいて欲しいのに!」


エトナの大きな瞳にみるみる内に涙が満ち溢れるのを見て俺は慌てた。女の子を泣かせる奴は男として最低だ。


「わ、わかった、分かったから。ただ、俺の部下で帰りたいって連中は帰してやってくれな」


この希望は過不足分無いくらい叶えられた。なにせ、この日の内に救命艇ごと送り届けられたくらいだ。俺はつまり、ただ一人ロスアフィスト王朝に残されたのである。


「安心して!」


エトナは俺の手を握りながら熱っぽく言った。


「誰がなんと言おうと、あたしがアルを守ってあげる!だってアルはあたしの命の恩人だもの!」


結局俺は亡命を選択した。エトナの言葉を信じたからではない。選択の余地が無かったからだ。


何しろ俺は、敵に投降した挙げ句その敵艦隊の指揮を執り、味方に大損害を与えてしまっていたのである。ばれなければ大丈夫と高を括っていたのだが、どうもそういう訳にはいかなかったようだ。なぜなら、まずいことに俺は戦闘中通信で、堂々と「アルマージュ・ランドー」と名乗っちまっていたのである。それがアーム王朝に傍受されてしまったらしい。アーム王朝軍は帰国後、直ちにこのことを発表。怒り狂った軍司令部は俺に対して軍籍の剥奪を通告。反逆罪での告発も行われ、帝国政府はなんと俺に懸賞金まで掛けやがった。後に手に入れたアーム王朝領内に流れたニュース映像では、俺はなんかどこかの凶悪犯罪者並みの扱いで、生い立ちから現在までが本人の記憶よりも正確にドキュメントされていた。小学校のテスト答案なんてどっから探してきたんだよ。


帰国などすれば、少なく見積もっても銃殺は確定だ。同じく帰れないなら、投降よりは自由意志での亡命を選択した方が良いに決まっている。


ということで俺はエトナに亡命することを正式に伝え、エトナは大喜びしながら俺をあらためて少将に叙任した。正直言って4階級特進はやり過ぎだと思った俺はエトナにそう言ったのだが、彼女は聞く耳を持たない。


銀河帝国軍近衛軍団皇帝付作戦参謀アルマージュ・ランドー少将というわけだ。深緑色と朱色で構成されたなんだか気取った感じのする軍服を着、俺は運命の流転とこれからの困難を思って深々と溜息を吐いた。




それから早くも半年が経った。その間に俺は一体何をしていたのかというと、


実は、特に何もやってはいなかったのである。


首都星レオンに帰還した帝国軍は熱狂的な歓声に迎えられ、ぼんやりしている内に俺は戦勝の式典やら記者会見やらパーティやらに引っ張り回された。一体何をし、何を喋ったのかも良く覚えていない。ただひたすらに右往左往していただけだ。そして、将官用の官舎だという一戸建てを与えられ、その中に放り込まれると、いきなり静寂が訪れた。


一通り儀式が終わったことで、世の中は俺に対する興味を無くしたようだった。あれほど俺に興味津々だった記者達すらまったく来なくなったくらいだ。俺は数日官舎の中でごろごろしていたが、やがてそれにも飽きて、とりあえず帝国軍軍令部に出頭してみた。少将というからには俺にも軍の中で何かしら任務が与えられるはずだ。


俺は流石に受付けで丁重に応対され、丁重に作戦参謀本部まで通された。そこで、帝国軍参謀本部長ルドルフ・ハイネス大将に会わされた。


しかめ面をしたえらく体格の良い初老の男である。彼は苦虫を噛み潰したような顔で俺の顔を一瞥すると、その顔のまま俺に椅子を勧め、まったく表情を変えないまま一言、こういった。


「貴官にやってもらう任務はない」


「…は?」


「貴官の所属は、近衛軍団皇帝付作戦参謀だが、実はそんな官職は存在しないのだ」


「…はぁ」


「皇帝陛下の創作だろう。まったく困ったものだ」


「…もしかして、小官の階級も正式なものでは無いのでありますか?」


「そんな事は無いが、存在しない官職に貴官が任官されている以上、私から貴官に任務を与える訳には行かないのだ」


しかめ面は彼の地顔のようであったが、困っているというのも本音のようだ。


「近衛軍団本部へ行って詳しい話は聞くと良い」


俺は仕方なく、王宮に程近い近衛軍団本部へと向った。


しかし、ここでも近衛軍団の軍団長ソロン・パブリス少将は首を傾げた。


「近衛軍団は、基本的に陛下の護衛だけが仕事だ。作戦参謀などおらん」


そもそも、近衛軍団の最高位はこのパブリス少将であり、そこに同階級の者が配属されたというのはどういう事なのか、と逆に俺に尋ねる始末だ。そんな事知るか。


結局、ここでも任務はないということになり、俺はすごすご官舎へ帰った。


自宅待機か。俺はベッドに横になりながらそれでもいいかと考えていた。俺が知っているアーム王朝の情報を細大漏らさず提供させられるような目に会うよりはな。もう軍人なんか辞めて、こっちの帝国で一民間人としてやり直すのもいいかもしれん。


そんな事を考えていたら、インターフォンが鳴った。見てみると、なんだか豪奢な車が停まり、スーツを着た男性が立っている。ドアを開けて出てみると、男性は慇懃に頭を下げた。


「皇帝陛下がお呼びでございます」


そういえば、エトナとは2週間ばかり会っていない。何の用だか。俺はとりあえず軍服に着替えて車へ乗りこんだ。


ロスアフィスト王朝皇帝宮殿は、森の中にある。


 首都星レオンの都市部からリニアカーで2時間も離れた場所だった。針葉樹の森の中を走っていると、突然、巨大な建物が姿を現すのだ。計72の宮殿が森の中に点在している。


 エトナがいたのはその中の宮殿の一つであった。俺は車止めでリニアカーを降りると、侍従官に先導されて宮殿の奥へと導かれた。


 俺の人生はこれまで、宮殿などというものに縁は無かった。故にこの宮殿がいわゆる宮殿の中でどの程度のレベルにランクされるのかはさっぱり分からない。しかし、まぁ、控えめに言っても俺が立ち入ったことがある建築物の中で、最も豪勢な部類に属することだけは確かだった。


 まず、広さが訳が分からないほどデカイ。一人では間違いなく迷う。廊下でサッカーの試合が出来そうだったし、途中通り過ぎた広間は劇場顔負けだった。天井は遥かに高く、そこにはフレスコ画が描かれているのだが、細かいところが判然としないほどだ。


 絨毯がふかふかであるのは言うまでも無いとして、まったく汚れが無いのはさて、土足で上がってはいけないのだろうかと不安になるほどである。金糸で飾られた壁に掛けられた絵画や、所々に置かれている陶器などの美術品は、多分いい物なのだろうね。審美眼が無いのがまことに残念だ。


 あちこちにある巨大な天窓から森のイオンを吸い込んだ清涼なる日の光が燦燦と降り注いでおり、それプラス昼間から煌々と輝くシャンデリア等の明かりのおかげで宮殿内部は白々しいほどの明るさに満ちていた。俺と先導の侍従官は10以上の部屋を潜り抜け、庭園に隣接したサンルームでようやく目的の人物にめぐり合った。


 元気良く立ち上がったのは、純白のワンピースという拍子抜けするような軽装を身に纏った少女である。額に装着している略冠が無ければ街中に今時期うろうろしていてもおかしくない格好だ。彼女はやはり白いサンダルをぱたぱた言わせながら俺の方に駆け寄ってきた。


「アル!」


 彼女、エトナ・ロスアフィストは俺に向かって駆け寄ると、まったく速度を落とさないまま飛びついた。


「やっと会えた!どう?レオンには慣れた?引っ越してすぐは忙しいと思って呼び出すのを遠慮していたのよ。さ、こっちへ来て!ヘングベート茶は好き?あたしは好きなの。嫌いならコーヒーもあるわよ。あ、ワインの方がいいかしら?あたしは飲まないけど準備はさせられるわ」


 エトナは機関銃のようにしゃべりながら俺をソファーに引き摺って行き、俺の返答を待たないうちにお茶と山のようなクッキーを用意させ、俺の隣に座った。


 どうも、用など無いらしい。俺は既に理解していた。彼女が俺を呼び出した理由は純粋に、俺と会って午後のお茶を楽しむためであるらしい。何しろしゃべっているのは一方的にエトナの方であり、俺はただ相槌を打っているだけなのだ。話題は他愛も無い、彼女が育てている花壇の様子だとか、飼い猫が病気になった話、この間読んだ本、彼女が通っている宮廷内学校の学友について、侍従長が厳しくてやんなっちゃう等。


 一体、俺は何をやってるんだろう。俺はヘングベート茶とかいう甘いお茶をすすりながら苦笑した。宇宙空間ではこの瞬間にも銀河帝国同士の熾烈な戦いが展開されているのかもしれないというのに。俺も先日まで、毎日のように訓練や哨戒任務、作戦会議や演習に明け暮れていた。一般国民の間には厭戦気分が蔓延するほどの慢性的戦争状態とはいえ、戦争はやはり戦争だ。軍人というのは戦争が起きていればやはりそれなりに忙しく、毎日を殺伐として過ごしている。


 こんな風にして呑気にしているというのは軍人として、一種の罪悪感を覚えずにはいられないことであったのだ。しかも、戦争の最高責任者たる皇帝陛下と一緒にお茶してるといういのは。


 しかし、エトナには邪気の欠片も無かった。彼女は純粋に俺とお茶するという時間を楽しんでいた。そんなエトナの輝く笑顔を見ていれば、彼女を責める気にもならず、また、俺にはそんな権利も権限も無い。


 つまるところ、皇帝付作戦参謀というのはエトナのお守りなのだ。その事に気が付くのに努力は要らなかった。俺は別に、それでもいいか、と考えた。俺はアーム王朝にそれほど強い忠誠心を持っていたわけでもなく、現在ではまったく拘りを持ってはいなかったが、「裏切り者!」と面罵されれば羞恥心の一片が疼く位の自尊心は持っていた。かつての祖国を滅ぼすために全知全能を尽くした挙句、敵からも味方からも冷笑で報われるというのも業腹だ。なら、全てを放擲して、エトナの気晴らしの相手になってやっていたほうが余程ましではないか。


 と、いうことで、それ以来俺は3日と空けずに宮殿に登城しエトナの相手を勤めることを任務とすることになった。ずいぶん楽な少将もいたものである。


 エトナはなにしろ皇帝であるから、俺とお茶ばかり飲んでいるわけにはいかない。俺がこの時に知る由も無かったことなのだが、彼女はそれなりに高い理想を持った若き皇帝であり、自分の理想を実現するために、元老院や軍の上層部に積極的な働きかけを行っていたのだ。それ以外にも謁見やら裁判やら会議やら、晩餐会、舞踏会、挙句に宮廷内学校に通い勉学にも励まなければならない。超多忙だ。その合間の貴重な息抜きの相手に指名されたのだから、名誉に思っても不思議は無いと言えなくも無い。詳しい事情を知らないのだから思えるはずも無かったのだが。


 俺は良く分からない後ろめたさを覚えながらも、エトナの相手をし、そうでない時には官舎でごろごろした。収入には困らず、レオンの街には歓楽街も多数あったので毎日遊び歩いてもよかったのであるが、先の戦いで俺はそれなりに有名人になっていたから、悪い評判が立ってエトナの耳に届くのも問題があるだろうと考えたのである。


 もっとも、後から考えると、平和な時間はこの頃だけだったのであるから、もっと満喫しておけばよかったと後悔しないでもない。




 そんなこんなで半年が過ぎたわけだ。この頃になると、門外漢の俺にもロスアフィスト王朝内部の様々な事情が見えてきた。


 エトナの父、ドルトン・ロスアフィストは惰弱な皇帝としてアーム王朝では知られていたが、それは敵国でありがちな宣伝に過ぎないことが判明した。ただし、特に英邁な皇帝だったという訳ではなく、そこそこ有能な皇帝であったに過ぎないのだが。


 しかし、このそこそこ有能、というのがまずかった。家臣たちにとっては心より心服するには物足りず、侮り嘲るには有能過ぎたという、いまいち中途半端な存在だったのである。このため、家臣たちと皇帝との間に深刻な対立が起きてしまう。畏怖の対象、あるいは問題にならないほど惰弱な存在であれば対立は起きないものだ。


 結局、この対立はドルトン帝の暗殺という形で決着がついた。暗殺の首謀者だったと言われる太政大臣ケントス・ルクスがエトナを擁立し、彼女は皇帝の位についた。


 太政大臣ルクスがエトナのことを侮って即位させたのだとしたらそれは大きな誤りだった。エトナは即位当初からルクスに反発し、事あるごとに彼と対立するようになったのである。エトナにしてみれば、父を殺したルクスは憎悪の対象ですらあったからだ。


 実際上の権力はルクスの方が断然上である。しかし、権威という点ではやはり皇帝の位がものをいう。宮廷内に再び混乱が起こる。まさか2代に渡って、しかも2年連続で皇帝を暗殺するような真似はルクスにも出来なかった。そんなことをすればルクスに対する批判は彼の足元を掬うだろう。エトナは国民からは高い支持を集めていたから、彼女を暗殺などすると、下手をすれば民衆の間から反乱が起きかねない。苦りきったルクスはエトナを、大して重要でもない戦いに親征させた。それが先の戦い、いわゆる「アリスト会戦」である。


 皇帝が率いるにしては5千隻というのはあまりに少ない戦力だと思ったのであるが、そこにはこういう事情があったのである。ルクスにしてみれば、ここでエトナが戦死してくれれば言うことなし、というところだったのではないか。そこまで行かなくても、エトナの指揮で敗北すれば、それは彼女の権威の低下に繋がる。そういう計算だ。


 しかし、エトナは危ういところで勝利した。ルクスにしてみれば計算違いもいいところだ。エトナの権威は強化され、発言力も増した。しかし、このことは、宮廷内対立の深刻化も意味したのである。


 このままでは、父ドルトン帝の二の舞だ。父帝に比べても更に悪いことに、エトナはやはりどこまで行っても16歳の少女でしかなく、はっきり言えば理想はともかく政治能力は皆無だった。求心力はあってもそれを政治的勢力に変換することが出来なかったのである。太政大臣に逆らうのはいいが、彼の意見に対案を出すことが出来ないのだ。これでは国政が無用に混乱するばかりである。


 俺はしばらく脇からロスアフィスト王朝宮廷の混乱を眺めていて、エトナの立場の危うさが見えてきてしまった。う~ん、これはまずいのではないか。


 俺にとってエトナはロスアフィスト王朝における唯一の保護者であった。エトナが俺のことを気に入っているから、俺は何もしないで少将でござい、とふんぞり返って(別にふんぞり返ってはいないが)いられるわけだ。例えばエトナが暗殺でもされた日には、俺は下手をすれば路頭に迷うだろう。悪くなくても、賓客から捕虜に格下げになるのではないか。


 半年眺め暮らしているうちに、状況は悪化しているようなのであった。元老院内部は皇帝派と太政大臣派に完全に分裂してしまっているようであるし、軍の高級将官にも派閥は及んでいるようであった。戦争中に国が分裂するなどあってはならないことだ。このことをアーム王朝政府が聞いたら喜びのあまり踊りだすだろう。


 というわけで、俺は再び決断を迫られていた。このまま何も知らないふりをしてエトナのお茶の相手を勤め続けるか。それとも・・・。




 俺はその日一つの決断を胸に秘めてエトナの前に座っていた。例によってエトナは満面の笑みを浮かべながら、テーブルの上に並んだ菓子を食い散らかしている。俺はヘングベート茶をすすりながら彼女に話しかける機会を待つ。


 気が重かった。これから彼女に話すことは、ひょっとしたら俺の命取りになるかもしれなかったからだ。俺は、俺の今の立場がエトナの気まぐれによって成り立っていることを十分知っていた。エトナが一度気分を変えれば、俺の少将の位も、ひょっとしたら命さえも、あっさりと吹き飛ばされてしまうだろう。


 それを恐れるなら、俺はただひたすら彼女のご機嫌取りに終始しているべきなのだ。太鼓持ちとなり、彼女が気分良く思えることだけを言ってやれば良い。


 ああ、悲しいかな、俺はいつもこういう余計なことを考え付いて我慢出来なくなるのだ。アリスト会戦でもそうだった。何かおもしろそうな事を思いつくと、どうしても実行してみたくなってしまう。おかげで故郷を捨てざるを得なくなった。今度は何を捨てることになるのやら。俺はようやく決心して、口を開いた。


「太政大臣と和解すべきだ」


 エトナはきょとんとしている。それはそうだ。彼女と俺はつい先ほどまで彼女の学ぶ学校の教師が変な髪形であるという話をしていたのだから。あまりにも話題が飛びすぎた。


「ケントス・ルクス太政大臣と和解して、国政の混乱を収拾しないと、戦争に負けるよ」


 俺は多少まじめな顔をしながら、言い聞かせるように、ゆっくりと言った。


 エトナは初めは呆然と、そして、俺の言葉の意味を吟味すると、途端に眉をしかめて俺を睨み付けた。


「何を言い出すのよ」


「ここのところ、ずっと考えていたんだ。この国の、今の状況は非常にまずい。そして、そのまずい状況の元凶は・・・」


 俺はエトナの漆黒の瞳を覗き込むようにしながら言った。


「君だ」


 見る見るうちにエトナの麗貌が朱に染まった。テーブルを鳴らしながら立ち上がる。


「何を無礼な!」


「国政の混乱の原因は偏に君にあると思え。君には国家を導いてゆくために必要なビジョンが何も無い。単純に太政大臣に対する反発心があるだけだ」


「黙りなさい!」


「太政大臣にはビジョンがある。そして、それを実現に持ってゆけるだけの実力と、豊富な経験も。この国は彼に任せるのが一番上手く行く。君は彼を信任し、後見するだけでいい」


「何を馬鹿な!」


「考えても見ろ。このまま国政が二分していたら喜ぶのは誰だと思う?戦争相手のアーム王朝だ。あっちは皇帝以下、今のところ完全な一枚岩だ。こんな状態で戦えば負ける。賭けてもいい」


 エトナはわなわなと震えている。


「国政を統一しなければならない。そして、公平に見て国家を円滑に運営できる能力を持っているのは、残念ながら君ではなく、太政大臣のほうだ」


「でも!」


 エトナはテーブルに思い切り手を突いた。カップが跳ね上がって彼女の若草色のワンピースを汚す。


「あいつは父上を殺したのよ!」


 ああ、言いたくない。でも、言わずにはいられない。難儀な性格である事よ。俺は致命的だと分かっている一言を発した。


「些細なことだ。国家にとっては」




 と、いうわけで、俺は牢屋に叩き込まれた。


 逆上したエトナは衛兵を呼び、俺を牢屋に叩き込ませた、という訳だ。驚くには値しない。俺はそれくらいのことはしてしまった。


 地下牢だ。石造りで、窓も無い。なんだか厭な臭いも漂っている。・・・次に待っているのは拷問かもしれないな。俺は特に感慨も無くそう思った。


 端から無理だったのだ。俺は石の冷たい床にごろりと横になりながら思いにふけった。


 お嬢様皇帝のご機嫌をとりながら生きるなんてのは、この余計なことを言いがちな俺の性格には向いていなかったのだ。


 何せ、俺という男は常に一言多く、やらないでいいことは率先してやり、その結果ろくでもない結末を甘受せざるを得ないという人生を送ってきた。学生の頃からそうだった。いまさら修正してみようがない。


 なるようになる、というのが俺の人生哲学だと言っても良く、なるようにならない時には死ぬだけだろう。どうも、程なくそうなりそうな気配ではあるが。


 それにしても、もう少し言い様があったのではないか?俺の後悔はそれだけだった。エトナとのやり取りを思い出す。やや性急に過ぎた感はあるな。だが、言ったことに後悔はない。俺は、反省はするが後悔はしないことにしている。


 しばらくそうして寝転がっていた。考え事をしていたので、檻の前に何者かが立ったことにはかなり長い時間気が付かなかった。


 …誰かいる。俺は、薄暗い地下牢の中、その方向を透かし見た。


 重々しい格好だった。かなり昔に滅びた民族の衣装を参考にしたという、何枚もの服を重ねて着るという暑苦しい格好のドレスは、ロスアフィスト王朝宮廷の正装だった。彼女はその反動か、普段着はいつも軽々したワンピースなのである。ゆえに、俺は彼女のその姿をあまり見たことは無い。出合った時は軍服であったし。


 彼女は一言も発さず、ただ寝転がっている俺を見下ろしていた。陰になっているために表情は分からない。怒りに燃えているのか、あるいは冷酷な表情で、俺をどうしてくれようかと観察でもしているのか。


 しかたなく俺は声を掛けてみた。


「何しに来たんだ」


 こんな格好が相応しい俺の知り合いはただ一人しかいない。エトナは俺が口火を切ってやってもなかなか口を開かなかったが、やがて、ようやくといった感じで言った。


「ずいぶんのんびりしているのね」


「そうだな。ちょっと床は固くて冷たいが、静かなのは悪くない」


「呑気なこと。ここは牢屋なのよ?牢屋は悪いことをした者を反省するまで放り込んでおく場所なんだからね」


「俺は悪いことをしたつもりはない」


 沈黙が流れた。


「何しに来たんだ」


 俺はもう一度問うた。


「確かめたくて」


「何を」


「あなたの本意を」


 俺の本意?さてね。それは難問だ。俺にも良く分かっていないような気がしているからな。


 相変わらずエトナの表情は分からない。


「理由がないはず。あなたには」


「何のことだ?」


「あたしを怒らせてまで、あのような諫言をする理由が、あなたには無い。あなたは我が国に対して愛情も忠誠心も抱いていないはずよ。我が国の将来を心配するなんておかしいわ」


 確かにな。俺が心配したのはこの国の行く末ではない。


 では何か?第一に俺の身の安全だ。このままこの国がアーム王朝に敗北するようなことになってみろ、俺はアーム王朝の首都星ギュールの市中を引き回された上に公開処刑の憂き目を見ることになるだろう。この国に負けてもらっては困るのだ。


 そして、まぁ、もう一つの理由を付け加えるのに吝かではない。


「何?」


 エトナが問う。その声色は既に聞きなれた調子、明るく楽しげな雰囲気に戻っていた。俺はほっとした。良かった。この娘はやはり馬鹿ではない。


「君の身の安全のためでもある」


 エトナと太政大臣の対立がこれ以上深まるようなことになれば、太政大臣はエトナを実力で排除しなければならない、と考えるようになるだろう。太政大臣ルクスが何よりも優先するのは、国家としてのロスアフィスト王朝の安定だ。エトナの父ドルトンは、その阻害要因になったがために消された。エトナもまたそうだと判断されたなら、彼はエトナを躊躇無く消すだろう。


「なぜ、ルクスに肩入れするの?」


「肩入れじゃない。客観的評価だ」


 エトナには認め難いだろうが、ルクスは私心の無い、実に清廉潔白な政治家なのだ。ドルトン帝の前、エトナの祖父帝ケドルの時より宮廷を司り、政財軍を統括し破綻を見せず、本質的には戦争向きではないロスアフィスト王朝をアーム王朝と互角に戦わせている。実に有能な政治家であると言ってもよい。


 ドルトン帝暗殺にしてからが、宮廷内に蔓延し始めたドルトン帝への不満、反発に突き上げられ、国家の安定のためにやむを得ず行ったという感が強い。


「…ルクスを許せというの?」


「そうは言わん。父の敵を許すなど心情的には難しいだろう。ただ、政治家としての彼を信任すべきだと言ってるんだよ」


 ルクスを信任し、彼の政策を支持する。エトナがそうするだけでロスアフィスト王朝の国論は統一される。戦争中である現在、それは何にも増して大事なことであるはずだった。


 再び沈黙が舞い降りた。


 俺は、エトナが馬鹿であるとは思わなかった。高すぎるほど高いプライドを持っていることは確かだったが、それが現実認識を曇らせるようなことは無いはずだ。


 自分に、意思はともかく経験不足という、政治家としては致命的な欠陥があることに、エトナが気付いていない筈は無かった。政治には長期的計画と短期的な対応措置の両立が不可欠だが、それにはどうしても、天才的な閃きよりは、老練さが必要なのだ。


 もちろん、政治家に必要な資質はそれだけではないが、それにしても、実務経験皆無なエトナが政治家としてルクスに対抗出来るようになるには、まだまだ長い時間が掛かるはずだ。そして、エトナが経験を得るまで国家を二分しておくことなど出来はしない。


 ならばこの際、私怨は置くべきだ。エトナが経験を自分の糧とし、実力がルクスを上回るまで、エトナを信任しているふりをすればいい。


 エトナは国王だ。国王がまずなにより最初に考えるべきことは何なのか。エトナにそれが分からない筈は無かった。もし、彼女が俺の想像よりも頑迷で、我侭なだけのお嬢様であったなら、ロスアフィスト王朝はもとより、彼女自身、そして俺の運命も奈落の底に落ちるだろう。


 長い長い沈黙が過ぎ、気が付くとエトナは牢屋から去っていた。


 おいおい、出してくれないのかよ。俺は苦笑して彼女が立っていた場所を見つめた。




 結局俺は次の日には無罪放免になり、エトナにあらためて呼び出された。


「あなたの言を入れます」


 彼女お気に入りのサンルーム。ワンピース姿でソファーにだらしなくもたれ掛かりながら、エトナは俺を睨む様に言った。顔色が悪い。おそらく良く寝ていないのだろう。


「そりゃよかった」


「そのかわり!」


 エトナは眉間に皺を寄せた。


「あなたにも、協力してもらいます!」


 一体何を?


「は・た・ら・け、という意味です!もう無駄飯喰らいは許さないわ!しっかり給料分は働いてもらうんだからね!」


 そりゃぁ、道理ではあるな。


「とりあえず、あなたを中将に昇進させて近衛艦隊司令官代理に任命します!」


 俺は流石に驚いた。おいおい、一体何を言い出すんだ?


「近衛艦隊は皇帝直属の艦隊です。本来は皇帝自らが指揮を執るのが慣わしなのですが、あなたが言う通りあたしには経験が足りません。よって、あなたにやってもらいます」


 近衛艦隊はアーム王朝で言う第一艦隊である。名前とは裏腹に、ロスアフィスト王朝宇宙軍の中核をなす艦隊なのだ。


 それの指揮をしろと?


「それと、同時にあなたをあたしの秘書官に任命します」


 はぁ?


「あたしの政務の補佐をしなさい」


「まってくれ!俺は政治なんかやったことは…」


「昨日のあなたの分析はなかなかのものだった。あれを年中やってあたしを助けてくれれば良いの!」


 エトナはここで決然と立ち上がり、俺に向かって右手の人差し指を突きつけた。


「覚悟なさい!こき使ってやるから!」


 なぜかその表情は晴れやかな笑顔を浮かべていた。可憐な笑顔。俺はなんとはなく苦笑しながら無意識に頷いていた。


 休暇が終わったというわけだった。







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