襲撃

 それからも毎日のように作業は続いた。削った氷の分だけ豊かになるとはいかないが、順調に資源が溜まってきた。衣類、食料品は即効性の資源なので倉庫に貯める。そう言った資源を求めて俺はツルハシを振るう


「あのさ………マインとミルはいつまでいてくれるの?」


「うーん………力になるって言ったからにゃ当分困らなくなるくらいになるまでだな」


ココは嬉しそうに笑う。そしてより一層ツルハシを動かす手を早める。そんな時突如ミルが顔色を変えてツルハシを壁に引っ掛けてよじ登る。


 「機械音………!オイルの匂い!マイン!」


俺の脳裏にはあの機械の鎧をした強力な守護者がこびりついていた。資源を求めて動く機械獣が資源の多いショッピングモールに来るかもしれないと少し心配だったのだ。


「ブリザードドライか?!」


「遠いですが………いや………こちらに向かってます!」


硬いものが擦れ合うような音、オイルの匂いがだんだんと近づいてくる。ブリザードドライがショッピングモールに来て仕舞えば資源難のショッピングモールがより一層厳しくなる。俺とミルは氷の壁から後退し、ツルハシを構える。敵意があるのならショッピングモールを守らなくてはならない。


「ココ!ショッピングモールのみんなに奥の方で避難する様に頼んでくれ」


「こんな大きい足音2人じゃ無理だよ!!ぼ、ボクもやる!」



振動が大きくなってくる。それにつれて俺たちの鼓動も早くなる。ブリザードドライは時間が経つにつれて装甲が強固なものとなる。そして何の資源を纏う蚊によって強さも戦法も変わってくる。例えば鉄を多く纏っていれば固くなる。


「ココ………前に出過ぎるなよ」


俺は彼女を止めることはしなかった。リーダーとして戦うというのなら止められない。一瞬の静寂の後、鼓膜が砕けるかと思うほどの咆哮が聞こえてきた。氷の壁から着地したブリザードドライは四足歩行だった。体は様々な電化製品や鉄板、衣類が巻きついている。


ガラスでできた牙を剥き、ショッピングモールの方を睨んだ。そしてその前に立ちはだかる俺たちを威嚇する。


「ここは資源難なんだ!違うところに行ってくれ!」


 しかしながら俺の声を無視してブリザードドライは四本の屈強な足でショッピングモールに突進しはじめる。


「装甲を剥がさないと中心部の本体には全く影響がない!ミル!」


言われずともわかっていた、というように俺とココの真横でミルが鉱技を発動した。エネルギーを充填しておいたツルハシはミルの雄叫びと共に振られて突風を巻き起こす。


  突風に始めは抵抗していたブリザードドライ。しかしだんだんと突進のスピードがおち、ついに真後ろに吹き飛ばされた。すぐさま立ち上がるも先ほどよりも走行が減っている。と言ってもブリザードドライからしたら吹き飛ばされた装甲は薄皮一枚ぐらいだろう。


 装甲を作っていた鉄や布は氷の壁の向こうにガシャんと落ちる音がした。


 ブリザードドライが再び吠える。俺は鼓膜が砕けそうになりながらブリザードドライに向かって走る。相手の突進は早々止められない。ならばこちらが突進し、ペースをとる。


「推進力発動!!」


俺の突進はツルハシの推進力を得てさらに加速した。ブリザードドライの前足が鉄の爪をぎらつかせ俺に迫るがそれを掻い潜り懐に潜りこむ。

  すれ違いざま推進力で加速したツルハシを振るい装甲に当てる。激しい音を立てて足の装甲を形成していた布や冷蔵庫の一部を剥がす。


ブリザードドライのカウンター。しかしそれを受けることはなかった。ココがツルハシを伸ばし俺に巻きつけ、引き戻したのだ。


「ナイス!」


「…う、うん!」


ココは相当緊張しているようだ。ブリザードドライはまだショッピングモール襲撃を諦めてくれていないらしい。

 体についた金属片を辺りに撒き散らす。弾がが周囲にばら撒かれ、氷の壁やショッピングモールに穴が空いた。


「ショッピングモールが!」


 ココはショッピングモールの方へ走り出した。しかしそこは次の攻撃が来ると思われる場所だ。ブリザードドライは膝を折り曲げ突進の体勢だ。


「ココもどれ!コンクリはそこまで傷ついちゃいない!!」


しかしブリザードドライの体はココの前に迫っていた。接敵とココがそれ気づいた時にはもう遅かった。ココは目の前の強大な鉄の四肢を持つ守護者に驚愕し、動けないようだ。


「ココか!!」


ツルハシを投げようか、そんなことさえも思った次の瞬間目に飛び込んできたのはミルが必死にブリザードドライの突進をツルハシを通して体全体を使ってガードしているところだった。


 ツルハシに充填しているエネルギーを逆に体にいくつか戻すことで身体能力を上げるミルの技。しかしその技を持ってガードしてもミルは歯を食いしばり、今にも崩れそうな姿勢を必死に維持していた。


 ココは突進の迫力に思わずぺたんと尻餅をついていた。









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