カフェ

久しぶりの通常作業。ツルハシを振り、氷を削り、生活必需品を取り出す。氷片の散るたびに目的にどんどんと近づいていく。

 周囲からは仲間たちが俺と同じように氷を削る音が聞こえてくる。


 電子レンジなど、ある程度四角いものなら取り出すのは容易だ。しかしコタツやエアコン、衣類などは柔らかく傷つきやすい、形が複雑などの理由で取り出しがこんなんである。


「………そーと…ここを削って………やった!!フリースが無傷だぜ!」


氷から取り出したフリースはまだ濡れているが乾かせば十分使うことができる。これから冬になるタイミングで防寒具は需要が高い。と言ってもいつでも寒いが。


「カストルフさん見てくださいよ、衣類が無傷!」


「よくやったマイン。ツルハシで布を取り出すのは集中力と技術がいるからね、うまくなってるよ。さ、配達ボックスに入れておいで」


「はい!」


今日の作業はフリースの後薪やら冷蔵庫やら四角いものが多かったので比較的容易に子やなすことができた。

 

 しかし冷蔵庫を配達ボックスに担ぎ込んだときにはもうへとへとだった。


「冷蔵庫ってやたら重いな…っていうか外に晒しといたらだいたい保存できるだろ……寒いし」


 自分でもびっくりするぐらいの正論を溢したところで今日の作業は終わる。俺は皆が着替え終わる前に全ての片付けを終えて控え室のドアを開けて出てこうとした。


「早いな用事かなマイン?」


「ミルとカフェで待ち合わせです!!」


 流氷のポーンが経営するカフェには不思議な飲み物が揃っている。流氷として旅してたときに色々手に入れたり製法を学んだらしい。


口の中で弾ける水。粉に水を入れるだけでできるスープ。初見のものばかりだ。


カフェに着くとポーンは暇を持て余しているようでグラスを頭で支えてバランスをとっていた。


「客いないんだ………」


「む?マインではないか。ふはは、この店のファンになったのか?」


「いや、ミルと待ち合わせ」


「ほー。で、何を飲む」


俺はメニューを開く。9割型経験のないメニューだ。初めて氷鉱夫として戦ったときレベルの驚きだ。眼から鱗の飲み物ばかり。

「なんでこれ、飲み物の上にアイスが?」


「理由はわからんが、なんかゴージャスだろう。後アイスは保存が効く。何せこの気温だ」


「じゃ、この四捨五入したらコーヒみたいなやつは?」


「それはココアというものだ。なんか知らんが粉を溶かすだけでうまい!以前どこかの国でたくさん手に入れたのだ!」


「うーん…じゃ俺はそれで」


「ホットが10銅貨、アイスが7銅貨だが?」


「ホットで」


 飲み物が来ると同時にミルも俺の隣の席に座ってきた。いきなりのことにココアをこぼしそうになる。


「お待たせしました。別にいいのに。戦いの後におごってくださいって言ったのを覚えているなんて………」


「ミルには世話になってるから…さ、好きなのをどうぞ!」


「では…ありがとうございます」


ミルは少し嬉しそうにメニューを開いた。彼女もおそらく俺と同じようにほとんどのメニューが初見だろう。おそらくは慎重に無難なものを選ぶだろう。以前のようにカフェラテでくるか?それともチャレンジしちゃうか?


「ではクリームソーダチョコスプレートッピングをアイス増量、氷少なめ、アイスはソーダとバニラのハーフで」


「承知!」


「ちょっと待てい」

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