第二話 力の種類

 ~王都ベルグラディス・民家~



転移は成功、私はあの男の目の前へと一瞬で辿り着いた。

急に目の前に人が現れたことにより驚く中年の男。

何が起こったのか分からない、と言った表情が変わり始める。

この後は大抵大声を出すだろう。

それでは転移してきた意味がない、私は男の首に剣を向ける。


「叫ぶな、大声を出すな。少しでも長く生きたいなら」


男は震えながら首を縦に振る。

私は剣を男の首に向けたまま言う。


「今日の昼間、お前は財力を使い幼き少女が先に買った物を横取りした」


男は震えたまま片手を挙げる、何かを言いたいようだ。


「大声でなければ話していい」


「横取りじゃない。ちゃんと金は払った。それに店主が許可したんだ、それに……」


店主はこの男が金持ちだから逆らえなかったのか、または大金に目が眩んだのか、どちらにせよ私からすれば同罪だ。

何を、誰を捌くかは私が決める。


「それに?」


「アンタが最初に言った通り、俺は財力を使ってほしい物を手に入れた。あの子には力がなかった。子供だからなんて関係ない、これが世の中で、現実、そうだろ?」


良かった。この男は世の中を、現実を理解しているらしい。


「そう、その通り。なら今私がしようとしていることも理解できるよね」


男は突き付けられえた剣と私を交互に見た後、口を開いた。


「ま、待ってくれ! あれが欲しかったってんなら返す、返すよ!」


「残念だけど、その必要はない」


私は男の首に突き付けていた剣に力を籠める。


「私は暴力を使ってほしい物を手に入れる。あなたには力がなかった。金持ちだからなんて関係ない、これが世の中で、現実、そうでしょ?」


男が口を大きく開け何かを叫ぼうとした瞬間、私の剣が男の首を飛ばした。

この首はあの店にでも吊るしておこうかな。

間違っていると思いながらもその行為を認めた報いだ。

明日の開店準備は店主の悲鳴から始まることだろう。


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