第14話 魔王のセーブ8
「へ?公表しちまうのか?」
そうあからさまに驚いたのはブルーナだ、
ウェイズも黙っているが真意を測りかねているようだ。
「ああ、このまま俺達が黙って隠しておく事も考えたが、
他にズィーラを有効利用する機会も大してないからな」
フェルンは不安な面持ちでこちらを見つめてくる。
ズィーラの使い道より俺の行く末を心配しているようだ。
このリベリオヌス家のこじんまりとした
今のままの生活に満足している数少ない保守派だ。
「こいつを交渉の道具として最大限に利用してやろう。
他の魔王の奴ら、
最近周りの魔王共を出し抜いてやろうと躍起になってるからな。
こんな怪しい代物でもこぞって飛びつくだろうさ」
「しかし...」
ここでフェルンが口を挟んできた。
「そんなことをして我々に利益は有るのでしょうか...?
そんなに有益なものを変わりに得られる気が...私はしないのですが...」
なんとかこれから波乱に満ちた道を進む事を避けたいようだ。
だがこの狭い領地にずっとひっそり住んでいてもいずれ我々は滅びる。
たまたま近くにある鉱山で金脈を掘り当てたから、
交易でそこそこの生活が出来ているもののそれもジリ貧だ。
それに、
いつ聖界の奴が襲ってくるとも分からない。
勇者の脅威は俺によってどうにかなるにしろ、
俺自身その力を連発出来る訳じゃない。
それも大軍に対して使える能力かも怪しい、
そこで......
「俺の力を試すためにもズィーラの公表は必要不可欠だ」
今一番のリベリオヌス家の支えとなっている
俺の力のことについて引き合いに出すしかない。
これには閉口せざる負えないだろう、心苦しいが仕方ない。
俺の言いたいことがまだしっかりとは分かっていないようだが。
「しかし、魔王様。ズィーラに関してはあなた様にしか効果がないのですぞ?」
「ああ、そうだ。だが憎たらしい奴らだが、魔王共の実力は本物だ。
中には改良出来る者もいるし、
無理やり吸収して力にする化け物もいるだろうさ。
だから今回持ってくのは武具と防具をばらして細かいパーツだけ持っていこう。
適当にその後続々と出していって、その内に奴らも価値に気付いて高値で買うだ ろうさ」
それに甘い計算かもしれんが瘴気を放つ装備はもう元の形を
想像することも出来ないほど変形している。
装備を持っていく度に勇者を倒して得た物だと言い回せば、
俺に今まで通りの無下な扱いは出来ないだろう。
「でも奴らを強くする養分を渡しちまうなんて癪じゃねえか?」
と、ブルーナ。強さに関してだけは興味津々だ。
「それは大丈夫だろう、なあウェイズ?」
「まあ、今あるズィーラは全て合わせても大したものじゃありません。
それを小分けにするんですから尚更じゃ。
故にワシはそれが他の魔王共の神経を逆撫でするのではないかと...
思いますがね?」
しわくちゃな顔でも眼光だけは衰えていない。
だがこちらもそれくらいでは怯まない。
「価値なんてものは実際に使うまで分からない、
だから一人一人誘いを仕掛けてその内に余計な事を言いそうな奴は
消すつもりだ」
穏便なこれからの利益を上げるためだけの交易について話し合われていると思った全員は、
凍りついた。
「あー...今、あたしが聞いたのが間違いじゃなかったら良いが...
さっき魔王様は『消す』って言ったのか?他の魔王を」
いつも勝気なブルーナにしては
珍しく自信なさげに聞いてくるのが可笑しくて笑ってしまった。
「はっはっは...ブルーナ、俺は冗談を言うようなやつだったか?」
その発言を周りの全員の顔を見回して放った。
ブルーナは震えているようだ。
恐怖ではない、嬉しそうな顔からも武者震いだろう。
アトリックは驚いた顔しながらも平静そのものだ。
あとの二人はかなり驚いている。
特にフェルンは悲しそうな顔までしている。
「言っただろう?俺の力を試すと。
まずは今ある手元のちっぽけなズィーラという
魔王の栄養剤にもすがりたい奴を釣って
試すとしようじゃないか」
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