僕は風の子、神の御子
晃矢 琉仁
第1話消失と出会い
僕は昔から外で遊ぶのが好きだった。
風の強く吹く日が好きだった。
特に台風の日なんかは強風に体が飛ばされそうになるのが大好きだった。
その度に親に家の中に連れ戻された。
だから僕はよくお母さんに言われたんだ。
「お前は風の子だね」
優しい笑顔だった。僕はお母さんの子なのに何を言っているだろう、と思った。
そんなことを言われていたあの頃の僕は意味を知るにはまだ幼かった。
僕が生まれた日も風が強い日だった。
出産前日まで立ち込めていた雨雲を吹き飛ばすほどの強風が、
僕の誕生日には吹いていた。
僕の名前は七咲 晴夫。
僕が生まれた真昼には、曇天の存在を忘れさせるかの様な太陽が照っていた。
誕生を祝福するために風が雨雲を退かしたようだった、とお父さんは嬉し気にいつも語ってくれた。
~~~~~~~~~~~~
そうして時は経ち、俺が15の誕生日を迎える日の今朝両親が家から消えた。
何の音沙汰もなく消えてしまったのだ。
9歳の妹を連れて俺は心当たりのある場所は全て探した。
だが依然として見つからなかった。
周りが暗くなり始めようとする夕方、俺たちはフラフラと景色の良い高地の公園のベンチにへたり込んだ。
「父さんも、母さんも...どこ行ったんだ!」
行き場の無い怒りが爆発した。なんてったって俺の誕生日に姿を消したんだ......!
「...だいじょうぶだよ、おにいちゃん」
まだ幼い妹は親の見つからない不安を必死に押し殺した声で、俺の頭を撫でた。
情けない兄はその優しさに視界を涙で滲ませながら、妹の小さな体を抱き寄せた。
温かな体温に自分の方が体が大きいというのに包まれるようだった。
「そうだよな...お兄ちゃんが...しっかりしないとな」
震える手で頭を撫でた。
そうだ、この子には俺しかいないんだ......もうガキみたいな癇癪を起している場合じゃない。
きっと、きっとまだ探していない場所があるはずだ......!
そう、立ち上がろうとした時
再び、風は吹いた。
夕日に照らされて影を落とす地面から
顔を上げた時、
その姿はあった。
「「我が子よ、時は満ちた。私自ら迎えに来た。」」
何重にも重なった女の人の声が響いた上空には、
半透明の様々な文様が体に刻まれ光っている、
神秘的な青白い幽霊姿の女がいた。
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