第104話 金融業者


「クエストお願いします!」


「は、はい。配置場所は……ここの橋台広場第一公園です。敵は上級のウッドジャイアントゴーレム。賞金は一体討伐につき8万円となります。尚、他の場所での狩りは禁止となってます。レイドを組んでいるチーム名と連絡先を交換お願いします」


「分かりました。……これでいいですか?では行ってきます!」


「ご武運を!」


 創成イースト界での運営公式討伐イベントでは冒険者ギルド合同会社が「界の主」であるモモカから仕切りを委託され、クエストの形でレイドチームごとに狩場を指定することにしていた。それなりの広さがある創成イースト界ではあるがプレイヤーが不自由なく走り回れるフィールドはそれほど多くはない。揉め事の防止と連絡先の収集のために登録制とさせてもらった。ここで一気に熟練プレイヤーを囲い込む予定だ。


 実際のところ、上級ボス一体討伐の場合だとAnotherDimensionクソゲー運営から10万円分の暗号通貨報奨金がイベント終了後に振り込まれる。そのうち9万円をモモカが冒険者ギルドに支払い、冒険者ギルドは討伐チームに当日即金で8万円を支払う形だ。2週間でボス200体2000万円の事業規模を予定している。狩場は3か所あり、モモカがモンスターの管理とログの管理を行い、俺とアルバイトの受付嬢がギルドに詰めていた。


 モモカも冒険者ギルドも200万円儲かるように見えるが、モモカは自分の界の防衛を含めたイベントがあった場合には広告宣伝費や委託料を使わざるえない立場でもある。他のプレイヤーや界主が界の乗っ取りに来ることもあるのだ。冒険者ギルドもアルバイトを雇ったりせねば回らない。


「さ、さいとーさん。お、お金、足りますかね……?」


「問題ない。運営が潰れない限りは」


「えー……。潰れたらどうしましょう」


 続々とやってくるプレイヤー達が借金取りにでも見えているのか不安そうな眼鏡っ子モモカだがそれほど心配する必要はない。当初考えていた1000万円からあっさりと倍の規模になってしまっていたが金のあてなら何とかなりそうなのだ。きっと大丈夫。


「それより状況はどうだ?」


「もう2体も減ってますぅ! ルイさん達とカイザーさん達のところです」


「……ちょっとペースが早いな」


 曲がりなりにも複数チームで長時間かかるはずのレイドボスなのだが開始2時間で2体も討伐されているようだ。ルイさん達札幌イースト組+エンプレス魔法使い組合同チームと、カイザー率いる関東連合が健闘しているようだ。


「火属性弱点があからさまだからな……」


 女帝エンプレス皇帝カイザーも魔法使いの育成に随分力を入れていたようだ。


「ど、どうしましょう」


「大丈夫だ。きっと、儲かる」


「……」


 なんですか?そのジト目は。お金なら大丈夫。あるところから借りればいいのさ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る