第76話 燃える街
日曜日である。
曜日など関係なくなってしまった根無し草なので、気を付けなければ曜日感覚までなくなってしまう。
そんな事を考えつつも、朝のサウナ水風呂で昨日のアルコールを搾りながらEPのステータス割り振りを考える。
EPは1万5千くらいもあるのだ。運営に売っても4万5千円になってしまう。
しかし、MPに全振りしても300には届かない。
MP250まででも必要EPは1万オーバーとなってしまう。紙装甲を覚悟の上で、ある程度HPにも振りたいのでMP250がいいところだろうか。
賢者のローブ装備で毎分7.5%回復なので切り捨ての出ないMP240で毎分MP18回復の方が、他のステータスが低い今なら効率が良いかも知れない。
―STATUS―
Name: さいとー
HP: 150 / 150
MP: 240 / 240
LC: 90
EP: 18
結局のところ、詠唱短縮や破棄をまだまだ取りたいので
がっちりEPを使い果たしてから装備品や他にもEPの使い道はあったのではないかと思いたった。後悔先に立たず。
「稼ぐか……」
いや、今日は休むのだ。
体力作りのランニングも始めようと考えていたがもう風呂にも入ってしまった。
何となくテレビをつけると、ススキノが燃えていた。
元々の火災現場は中心部から少し離れた西6丁目の古い長屋だったのだが、ススキノ上空を飛んだ報道ヘリが墜落して二箇所で炎上している。
消防のポンプ車も電気系統がダウンしているのか放水ができていない模様が切迫したリポーターの声とともに放送されていた。
隣の国の大停電もススキノの電波障害も、どこか他人事のように考えていた。
死傷者の名前が読み上げられる。
電波の調子が悪かったり、停電が頻発したりでイライラする……その程度だと思い込んでいた。
報道関係者として生死不明と発表された高校の同級生の名前を見るまでは。
もはやこれは災害なのだ。
燃え続けるススキノを呆然と眺めていると、スマホが震える。
「さいとーさん。ススキノ火災はご存知ですか?」
「……はい。テレビを見ていました」
「政府は事態を重く見て、対策本部を設置する動きとなっています。恐らく私も呼び出される事になるだろうと事前連絡がきました。想定より早く動くつもりでいて下さい」
「承知しました」
「昨日の今日で忙しないですがよろしくお願いします。では」
ぶつりと切れたスマホが状況の厳しさを物語っていた。
いい加減、認識を改めねばなるまい。
ゲームで遊んでいるのではない。
世のため人のためになる事を継続していくために対価を得ていく。それが仕事というものだと早世した父親がよく言っていた。
暴走したススキノ界の攻略……それはまさに俺の仕事だ。
一般的には前職の方が体裁はいいが、世のため人のためとは言い難い、無駄と思えるものを売上のためだけに沢山作ってきた。
暴走した界は害悪だ。誰にとっても良いことなどない。
「俺の仕事を見せてやろう」
そして、前職ではできなかった「仕事を通して世のため人のため」を実現してやるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます