第75話 ススキノ攻略に向けて
スポンサーとなってしまった打ち上げの後も、俺は1人で飲み直すことにした。
帰るホテルはすぐ裏なので、餃子バーの奥にある居酒屋のカウンターに腰を落ち着ける。
「お酒と……ツマミになる魚卵とかあります?」
「……あるよ。国稀と筋子とかでいいかい?」
「お願いします」
オールバックの一見強面のマスターが意外とにこやかに応えてくれる。深夜食堂のようにメニューに無くても聞けば何かしら出てきそうな店だ。
向こうとしても冒険者ギルドへの
ここまでは順調と言っていい。
送られてきたオーダー内容もススキノ攻略を果たすことが条件ではない。ススキノ攻略のために、どのような事をどのように予算を使い、どのように行ったかのレポート提出が納品物だ。
ご予算は税抜き二千万円。理由が付けばオカワリOKとある。
ただし、ススキノ攻略時には冒険者ギルドが
調子にのってホイホイ招集をかけて、予期せぬ出来事で長引けば予算超過もありえる。それでなくともエーテル暴走している界の攻略は前例がないのだ。
招集したところで、来てくれるかどうかも分からないが。条件次第か。
まずは地場のイーストメンバーやホクダイの高ランクパーティで、上級を超える超上級とやらを威力偵察だろう。
「国稀と魚卵ね。こっちがカジカの卵で、こっちが
カジカとは別名なべ壊し。頭がデカく寒い時期の魚で鍋に合う。粒の大きさから秋のケムシカジカだろう。冬のトゲカジカはもっと粒が小さく鮮やかなオレンジ色だ。
「……That’s tight!」
卵かけご飯にも通じるものがあるHarmony。間違いは起こらず正しくマーベラス。頭でっかちに考えたところでどうせ前人未到だ。生命の素を頂いて、転がる岩の如くrock 'n' rollで行こう。
塩気の強い魚卵をちまちまとやり、あっさりめの日本酒をちびりちびりとやる。冷凍保存していたものだろうが贅沢な時間だ。もうちょっとどっしりした酒も飲みたい。
ふと、ケチャップのこげる凶悪な香りが漂う。
「……ナポリタン、ちょっと食べるかい?」
「いただきます!」
間髪入れずに脊髄反射で返答した。
炭水化物を炭水化物で流し込む背徳の行いは、俺の脳内ロックンロールを落ち着かせてくれた。そこで気になったのが本日のボス戦の成果だ。
先程の打ち上げで、モモカがイースト界の敵を
―STATUS―
Name: さいとー
HP: 50 / 50
MP: 196 / 196
LC: 65
EP: 15652
EPがまさかの万越えしていた。
そして、ポーションを消費して空いていたストレージには……。
【賢者のローブ】
被ダメージ5点減少。MP自然回復率+50%、MP消費軽減+10%。重量5。
魔道を極めし賢者のローブ。
……という「LC増やして紙装甲を卒業し、重装備魔法使いでソロ活動するんだ!」という俺の秘めたる意向をあざ笑うかのようなレア装備がドロップしていた。
強化もできるらしいが、防御力には期待薄だ。
性能は素晴らしいから悩ましい。このレベル性能の杖なら良かったのに……。
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