第62話 苦行合宿コンティニュー
「むー」
頬をつねられる感触に目を覚ますと、ふくれっ面が目の前にあった。
「おはようございます」
「⋯⋯おはよ」
「⋯⋯流石に一晩では詠唱短縮は無理ですが」
「そうじゃなくて⋯⋯もうっ」
「何とか半分はクリアしました」
「それは⋯⋯ありがと。でも、隣にこんなステキ女子が寝てたらムラムラドキドキで眠れないもんじゃないの? 何でグースカグッスリオヤスミなのっ!」
何だこの面倒くさい状況は⋯⋯。
「素敵女子はそんなこと言いません」
「⋯⋯ぐぬぅ」
「無防備に寝ているルイさんに悪戯心が湧いたことは否定しませんが、理性が勝りました⋯⋯くらいでいいですか?」
「それなら⋯⋯いいかな?」
私、騙されてる? みたいな顔をしているルイさんだが、元ススキノ界の主に仲間を寝取られたみたいな事を言っていたように色々拗らせている雰囲気だ。
ボッチを拗らせて、ボッチじゃないと無理になった自分が言うのもなんだが。
「自分に自信がない?」
「ぐはっ。ゴメンね。面倒くさい女だよね」
「まぁ、異性に夢を見るのはいいんじゃないですかね。乙女ですし」
「辛辣っ! でも夜やってると、男はやりたいだけなのかなって思っちゃうのよね」
「激しく同意!」
「同意かよ!」
「三大欲求ですから」
「確かに。というか、さいとーさんに性欲ってあったんだー」
「それこそ失礼かと。理性で隠す分別があるだけです」
「ほんと? やりたい?」
「否定はしませんが、それを自己評価に結びつけるのはおすすめしません」
ニヨニヨすんな。俺とやりたいわけじゃないのは知っている。興味を持たれ、やりたいと言われるのが筋違いの自己肯定感を高めているだけだ。
「やりたい! ということで朝飯行きましょう」
「さいとーさんって、そういうとこクールだよね⋯⋯」
「現実を見ていると言ってください。ドリームは寝て見ることにしています」
「情熱的に迫られたら陥落しちゃうこともあるかもよ?」
「ただし! イケメンに! 限る!」
「わぉ。さいとーさん大概だね」
「リアル⋯⋯リアルワールドは俺に優しくない」
「う、うん。ご飯食べに行こ!」
朝食バイキングでは、何故、型にハマった目玉焼きを取ってしまうのだろうか。いつから、目玉焼きなんていうお手軽料理すら作らなくなったのだろうか。
俺もいつから型にハマった生き方しかできなくなったのだろうか。
モヤモヤとした気分は会話することで伝染するのかも知れない。
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