第52話 事業の方針


「さいとーさんのお陰です! さいとーさんのお陰様なんです!」


「マスター。変なもの混ぜてないですよね?」


「失礼な。100%みかんジュースとシロップだけだよ」


 モモカは雰囲気で酔うタイプなんだろうか。お酒は飲んでない。


「私、酔ってません!」


 いや、そらそうだ。でもそれは大体酔ってる人が吐くセリフだ。


「エーテル酔いか? 水でも飲んで落ち着こうか」


「私の話を聞いて下さい!」


 妙に滑舌も良くなってる気がしないでもないモモカだが、若干面倒な感じになっている。感謝の気持ちは伝わってくるのだが。


「送っていくのは、やぶさかではないのですが通報不可避な予感がビシバシと」


 既に他のお客さんからの視線が痛い。


「あーあー。カオルがそろそろ上がり時間のはずだから頼んでみよか」


「お頼み申す」



 やがて、やってきてくれたカオルさんから「こんな時間まで連れ回したらダメ」とお叱りを頂きつつ、眠そうになったロリ眼鏡を連行していってくれた。助かります。



「んで、さいとーさんの本題は?」


 他のお客さんも帰ったところでマスターが口火を切る。


「色々と急展開がありまして⋯⋯」


 ところどころぼかしながら、国の予算が付きそうな事と、起業する事を伝える。


「さいとーさんは何者なんだい?」

「一介の下請け企業サラリーマンだったはずなのですが」


「うーん。どう事業を回していくか⋯⋯か。正社員プレイヤーなんて抱えてられないだろうしねぇ」


「できて、1人2人ですね。戦力としては足りな過ぎます」


「いっそのこと、アレは? 冒険者ギルド」


「冒険者ギルド⋯⋯。ファンタジー小説によく出てくるやつですか?」


「まぁ、傭兵組合でも互助会でも何でもいいけど。クエスト形式でリアルマネーの賞金かけたり、素材とか武防具の買取とかもありかなー。プレイヤーの界は出現する敵は安定するけどその分ドロップアイテムも偏るんだよね。違う地域行けば良い値段付いても中々ねー。不便なNPC商人の代行とかエーテル売買とかもいけるかも」


「プレイヤーによるプレイヤーのための組織ですか。確かに賞金形式じゃないと回らないですね」


「札幌の拠点は請け負うよ?」


 なるほど、リアル店舗が窓口として存在した方がいい。とは言え、新たに交通の便の良いテナントを借りて人を雇うとなると出費が大き過ぎる。ここは交通の便が良くはないが悪くもない。


「昼間も営業する事は可能ですか?」


「条件次第で」


「昼間帯はバイトか何かを雇う形の見積もりで、発注の条件を煮詰めてみます」


継続していく前提ゴーイングコンサーンで頼むよ」


 利益の出ない事ボランティアはしないよって事だ。当然だろう。


「お任せあれ」


 ビジネスマンらしく握手を交わして、餃子バーを後にした。


 何にいくらかかるのかは知らないが、これがギルド一軒あたりの固定費のモデルになるのだ。

 理想は国の予算が無くなったとしても回る組織。


 やるだけやってみるか。

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