第50話 出張終了


 翌日、早めに起きて温泉に浸かる。サウナ付き大浴場生活もまた終わってしまう。


 急にやらなければならない事も増えてしまった。

 今日は北海道に帰るだけだが、考える事も多くて少々気疲れしてしまう。


 田辺さんカイザーと友誼を深めれた事は良しとしよう。フレンド登録もできたし。


 検索してみると要塞フォートレスという二つ名を持つプレイヤーだった。

 フォートレスのカイザー⋯⋯黒歴史フィードバックに悶えそうだ。


 札幌のチームイーストは昨日の木曜日の間引きは予定通り中止。明日はまだ未定の様だ。


 モモカから狩りのお誘いも着ているが、午後一は無理だ。15時からなら可能と返信する。


 ホテルをチェックアウトするも、まだ飛行機の時間までは時間がある。マッサージでも行くか。




「オキャクサン。サンジュップン、センエンヨー!」


 京急に乗れば一本で空港なのだが、JRに乗った俺は新橋の格子状模様の駅前ビルの二階にいた。


 ここは昼間安い上に、異国情緒も味わえる。


 軒を連ねるマッサージ屋。中には強引に腕を掴んでくる客引き女性や、マッサージにはやや似つかわしくない格好の女性もいる。


 だが、それがいい。

 こういったカオス感は割と好きだ。


「カワイイコ、イルヨー」


 もはや何屋か分からない。

 グルリと一周し、マッサージがマシそうな店を物色していく。


 ふと、目が合ったのはTシャツにジーンズの素朴そうな女性だ。


「マッサージ、ドデスカー?」


 日本語も片言。スレてない感じも良い。


「フット30分で」

「ホント? アリガート」


 AnotherDimensionクソゲーをやる様になって急激に歩行距離が増え、凝り固まった足裏からふくらはぎまでを揉んでもらう。


 しかし、痛い。

 こんなに足裏弱かっただろうか。グリグリと無遠慮に攻められ悶絶する。

 そして、よく見ると厚化粧だ。素朴に見えたのはフェイクか。


 30分を耐え、クリームを落とし切らない状態に雑に拭われて店を後にする。足は軽くなった気もするが苦痛から解放された開放感の方が強い。


 良い時間になったので空港へ向かい、飛行機に乗り込んだ。



 飛行機は飛んでしまえば割とすぐだ。飛行場までの移動時間と待ち時間の方が長く感じた。



「おっお疲れ様です!」

「お疲れ様」


 新千歳空港から札幌駅までJRで移動し、そのままモモカと合流して札幌駅北口地下歩道に潜る。


戦士の咆哮ウォリアーロアー!」


 見慣れてきた感のあるロリ眼鏡の戦士の咆哮だが、最初にここで出会った時とは見違える程だ。見ていて安心のタンク感も出てきた。


 寄ってきた敵に合わせて位置を変える。


 左に回り込もうと走り出したが、止まれない!

「何っ⋯⋯!」

 そのまま横倒しになり、ゴロゴロと転がる。

 靴下のグリップを感じない。マッサージの残留クリームか!


「痛つつ⋯⋯」


「だ、大丈夫ですか?」


 結局、1人で倒しきったモモカが心配そうにしゃがんで覗き込む。攻撃系のスキルも取ったのか。

 近くでよく見ると可愛いな。⋯⋯ロリだけど。


「大丈夫だ。すまない」



 何となく、この地下歩道は俺と相性が悪そうな気がする。モモカには迷惑をかけてばかりだ。

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