第48話 蔵前の倉庫番
翌朝、喉の渇きで目が覚めた。
酒飲んだら水を飲んでから寝ないとアカン。
カウンターのおばちゃんに大浴場に水持って入っていいかお伺いしてみると、大丈夫との事だったので500mlのペットボトル2本持ち込みで、性懲りも無くサウナ水風呂3ターンした。
本日の予定は
待ち合わせ場所に指定されたのは、浅草線蔵前駅からほど近い精華公園だった。京急蒲田駅まで歩けば一本で行けるので気楽だ。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です。さいとーさん。場所はすぐ分かりました?」
干上がったビオトープ前にいた田辺さんはビジネスカジュアルだが靴はランニングシューズだ。もう1人は若めの小柄な男性。
「はい。大丈夫でした」
「こちらが蔵前界の主で、チームウェアハウジングのリーダー。ワイズマンです」
「初めまして、さいとーです。今日はお世話になります」
「カイザー。彼が例の?」
⋯⋯か、かいざー?
「⋯⋯そうです。魔法使いのさいとーさんです」
俺の隠しきれなかった驚き顔に、バツの悪そうな顔をした
道理でフレンド登録を求められない訳だ。
「よろしく、さいとー。今、調整する」
スマホを操作するワイズマン。悪い人ではなさそうだが、名前ほど賢くはなさそうだ。
とりあえず、見猿聞か猿言わ猿案を採用してこちらもアプリを立ち上げる。ここはアクティブな敵はいない初級エリアだ。
「魔導書の値段変更完了。よいぞ、さいとー」
「はい。お手数かけます」
画面のNPC商人さんをタップして、水と風の中級までの魔法をカートに入れていく。六万六千円だ。来月のスマホ料金が怖い。
鳴り響く決済音に、何か大事な物を失った気がした。⋯⋯お金か。
―Skill―
火球 cost: 8
消火 cost: 10
火矢 cost: 15
耐火 cost: 18
石礫 cost: 10
耐土 cost: 15
土槍 cost: 18
土壁 cost: 22
力水 cost: 10 new
濃霧 cost: 15 new
癒水 cost: 20 new
霧域 cost: 22 new
突風 cost: 6 new
無風 cost: 10 new
竜巻 cost: 16 new
風幕 cost: 20 new
⋯⋯増えたな。
水魔法は、10分間自然回復量が倍になる
風魔法も行動阻害やノックバックをメインに
⋯⋯原価だという事で購入してしまったが必要あったんだろうか。ただの貧乏性な気がしないでもない。
「中級魔法までをコンプできました。ありがとうございます」
「カイザーの頼みだ。否やはない。礼ならカイザーに」
「ワイズマン。私からも礼を言う。じゃ、さいとーさん、ちょっと打ち合わせしましょうか」
食い気味に入ってきた
このゲーム⋯⋯迂闊な名前付けると中々の羞恥プレイを強要されてしまうが、何故かサブ垢作成もプレイヤー作り直しもできないのだ。謎パワーで既存キャラにログインされてしまい、プレイ中に他の人にスマホを渡すとアプリが落ちてしまうらしい。
ワイズマンに軽く会釈して、そそくさと立ち去る
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