第22話 魔境誕生秘話


「あらぁ、さいとーさんも来てたのねぇ。」


 二軒目の餃子バーでバーボンソーダを飲んでいたら、無駄にイケメンなゲイもやってきた。


「ガイさん、今日はお休みですか?」

「そ、ウチは月曜定休なの。マスター、ビールちょうだい」


 お疲れ様と乾杯を交わす。


「聞いたわよ。デスペナ取り返したんですってね? 偉いわぁ」

「先日はレベリングにお付き合いありがとうございました。何とかMP100まで増えました」


 昨日、ルイさんと話をした事が、しっかり情報共有されている様だ。迂闊な事はできないな。


「あら、早い。エーテル酔いには慣れたかしら?」

「慣れるもんなんですか?」

「人間、慣れるものよ」

「飲み過ぎない様に気を付けます」


「昼間っから飲んでたみたいだけどねー」

 マスターが余計な横槍を入れてくる。スマホの充電のために致し方なかったのだ。


「皆さんはモバイルバッテリーをお持ちですか?」

「充電器? モチのロンよ。アタシ盾職だからリュックとかポシェットとかに入れてるけど。マスターは動き回るから、動きを阻害しないピッタリ背負うタイプのバッテリーよね?」

「そだね。さいとーさんは魔法使いだから、どんなんでも大丈夫そうだけど」


 なるほど。確かに魔法使いは足をあまり使わない。モーションセンサーにスキル入力もないから何でもいいのか。適当な大容量のモバイルバッテリーでも購入しよう。


「買うなら予備も買っておいた方がいいわよ。後、防水の入れ物と。雨の日はやらないけど、急に降られる時もあるからねぇ」


「なるほど。参考になります」

「固いわねぇ。マスター、ビールお代わり」

「あいよー」



「そういえば、ススキノって何でエーテル暴走したんですか?」


「⋯⋯そうねぇ。1番致命的だったのは場所がなかった事かしらねぇ」

「場所⋯⋯?」


「バトルフィールド⋯⋯戦える場所よ。ススキノってね、公園とかオープンなバトルフィールドがないの」

「え? あー⋯⋯」

 随分と現実的な理由がでてきた。確かにススキノは繁華街で道路とビルしかない。用地問題か。


「なのにねぇ。ルイに対抗意識を持ってたニュークラ嬢が。あ、ニュークラって東京で言うところのキャバクラね。ススキノでキャバは東京のセクキャバだから」

 ⋯⋯どうでもいいです。


「当時、ススキノは初級の界だったんだけど、夜中に寺とか神社の境内に客とかパリピ友達集めたりして、界の難易度を上げ過ぎたのよねぇ。そして、マナーも悪かったし当たり前にあちこちから締め出されたの」


「うわぁ⋯⋯」


「それで、ススキノの主はモンスターに奪われるわ、間引きされずに異常発生したモンスターが何故かイーストにも流れ込むわの大騒ぎよ。以来、ススキノは魔境になったの」



 上級難易度の敵が出没する魔境ススキノは、それだけではなく戦える用地もないと言う鬼畜難易度である事が発覚したのだった。

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