第16話 独白


 皆さん土曜日もお仕事なので、打ち上げも17時で早々にお開きとなった。仕事前に飲んじゃって大丈夫なのだろうか。

 まぁ、夜のお仕事だし、喉が渇いて目の前にビールがあれば飲まないという選択肢はないか。



 何となく飲み足りなかった俺はホテルへは帰らず、独りはしご酒をしていた。


 俺の最近の趣味は独り飲みだ。


 誰に気を使うでもなく、のんべんだらりと小さめのお店のカウンターを渡り歩く。それなりに旨いものが食えて、安ければそれでいい。


 札幌に転勤前には、そんな名も知らぬ同類仲間がそれなりにいた。

 カウンターで何となく話題に混ざり、その場限りの適当な話題に興じる。別の場所で再会すれば適当に情報交換などしたりする。

 同類達も大体同じ様な場所を回遊しているのだ。


 できれば札幌でも同じ様な緩い人付き合いを構築できればと思う。


 浅く付き合えば傷も浅い。

 深く付き合えば傷も深い。


 どうせ傷つくなら浅い方がいい。


 信じていたものが偽物だった時の喪失感はもう味わいたくないのだ。どうせ偽物なのだから。


 男も女も、友情も恋愛も、深く付き合ってはいけない。お互いの嫌な部分にはメッキで蓋をして、その上でだけ浅く付き合う。


 それが一番だ。


 だからと言って閉篭もるのも、人として良くない。オンラインだけというのもバーチャルに過ぎる。

 俺にとってちょうどいい塩梅で、広く浅くを実践できるのが独り飲みだ。


 そういう意味ではAnotherDimensionというゲームは、オンラインのゲームであるにも関わらず、顔を合わせたコミュニケーションが必要という興味深いゲームだ。広く浅く人付き合いが必須なのは、独り飲みに通じる所がある。


 そんなあのクソゲーにも、ようやく仲間ができ、仕事が進み始めた。


 暗中模索だったものに見えてきた光明。やるべき事が明確になり、進歩している実感。



 魔が差したというべきか。


 ゲームの事を思い出してしまったから、魔法詠唱を練習したくなったのか。


 アルコールのせいか朧げではあるのだが、結果として実フィールドで魔法を使っていた。



 そこに待っていたのは



 ──死、そして無情なるデスペナルティだった。

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