第11話 ススキノ探索
歓迎会の会場はススキノのラーメン横丁の北向かいのビルだった。五分前に到着したものの誰もいない。
結局、全員揃わないまま、なし崩しにスタートし、グダグダと全員揃わないまま終了した。
火鍋は美味かった。野菜も沢山食べれる鍋は良い。漢方の香りがする辛いスープを潜ったラム肉もビールと非常によく合い、杯を重ねてしまった。
⋯⋯が目的であったはずの歓迎会の体はなしていなかった。参加者が増えるたびに仕事内容を何度も説明する羽目にはなったが逆に良かったのかも知れない。
業務内容が違い過ぎるのだ。彼等のお客さんにあだ名を付けた内輪ネタには全くついていけない。
人並み以上に飲んだのに割り勘だったので得した事にしておこう。
外に出るとまだ冷たい外気が火照った肌に心地良い。
二次会のお誘いは、やんわりとお断りしたらあっさりと引き下がってくれた。向こうも同じフロアにいるとは言え、共通話題のない異物と飲みたいわけでもないだろう。二次会に誘うのも礼儀みたいなものだ。
お疲れ様ですと二次会へ向かう面々を見送り、スマホを見るとアンテナ表示が不安定で、圏外になったり繋がったりしている。これがススキノの電波障害か。
先日、戦って死んだところはここまで酷くはなかったが、ここのこの状態ではろくに通話もできないだろう。客足も減っているというのも致し方ない状況だ。
ふと正面に目をやると電波障害なんのそのと外国人観光客で溢れるラーメン横丁も、昔とは大分様変わりして見える。
ここからならホテルへも余裕で徒歩で帰れる距離なので時間的にも余裕はあった。
外国人観光客をかき分ける様にラーメン横丁を通り抜け、軒を連ねるラーメン屋を物色する。
やはり昔ながらの札幌味噌ラーメンとは違うイマドキのラーメン屋や札幌ではない北海道のラーメン屋などに移り変わっている様だ。
そういえば、餃子バーのマスターに聞いていたルイさんの
左に行って⋯⋯バニーのバーの隣に階段が⋯⋯あった。
扉を開けると、フカフカとした絨毯が敷かれた上り階段のみ。怪しいが店名は合っている。
恐る恐る上がっていくと、薄暗い照明に窮屈そうなテーブルが並び、奥には天井まで伸びるポールが見える。
やっちまったかなと思いながら、マスターからは悪質な店だとは聞いていないのだ。ボッタクリには合わない普通の店か、札幌イーストがボッタクリかの二択だ。
「いらっしゃいませー。お一人様ですか?」
下着姿の女の子が照れも恥ずかしげもなくやってきた。
「って、さいとーさんじゃない。何やってるの?」
どうやらこの扇情的な格好をした女の子が我等がイーストのチームリーダーであるルイさんの様だ。流される様に席に案内される。
「⋯⋯えーと。初めまして?」
「初めまして。ルイです」
そう笑いながら、ブラジャーに包まれた豊かな膨らみを顔に押し付けられたのだった。
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