第3話 初遭遇

 札幌のオフィスからは目と鼻の先であるドーリに向かうも、情報のあった大通公園六丁目にはやはりプレイヤーはいない。


 雪解けのぬかるみが残る大通公園だが、本当にプレイヤーが集まるのだろうか。


 ⋯⋯というか冬場はどうしているのだろうか?


 雪が積もる北国のプレイヤーは明らかに不遇である。


 しょうがなく、次のホクダイへと向かうべく地下鉄出入口へと歩を進めると、噴水広場の前でプレイヤーらしき集団を発見した。


 スマホ片手に振り回したり、逃げ惑ったり、「スイッチ!」等と怪しい号令を発したりしている。


 ⋯⋯あれと同類になるのか。


 元々、リアルなコミュニケーションはそんなに得意ではない。オンラインゲームであれば精々がチャットによるコミュニケーションだ。

 ボイスチャットが必須なゲームであれば迷わず避ける程度に口も回らない。声を張るのも苦手だ。


 ゲンナリとした俺は、取り敢えず一番離れたベンチに座り遠巻きに眺める事にした。


 前衛3人に後衛3人の男6人パーティの様だが、定期的に前衛と後衛が入れ替わり、後衛は大人しく休憩してHPを回復しているだけの様だ。


 役割分担的にはタンクとかアタッカーとかヒーラーとかあるはずなのだが、役割分担はされていないのだろうか?


 アプリを立ち上げてみると、プレイヤーとしてはまだ死んだままではあるが敵の姿が確認できた。乗用車程の巨大な蜘蛛だった。


 初級者向けのエリアな割にハードルが高くないか?

 ススキノで遭遇した1m級の蛾より強そうなんだが⋯⋯。


 戦闘は15分程続いた。


 意外だったのは、その間にベンチでスマホ片手に観戦する人が増えていた事だ。

 どうやらこの時期のドーリは、若干位置を変えて地面が舗装されている噴水広場になっている様だった。1つ収穫だ。


 自分もスマホ片手にキョロキョロと見渡していたら隣のベンチの人と目が合った。同じくスマホ片手に観戦していたパーカーのフードを被りマスクをした女性だ。


 何となく会釈すると会釈が返ってきた。

 向こうもコミュニケーションが上手くは無さそうだ。

 しかし、こちらは仕事なのだ。遊びではない。

 意を決して声を掛ける。


「すいません。プレイヤーの方ですか?」

「はい。そです」

 目線を若干外しながら言葉少なく反応があった。

 ナンパに思われただろうか。


「始めたばかりなんですけど、どうやって仲間とか作ったらいいんですかね?」


「⋯⋯うーん。そうですね」

 上から下まで値踏みするかの様に視線が動く。


「この辺だとポーターとタンクはダブついてて、アタッカーが足りてないです。特に魔法アタッカーなら引く手数多だと思いますよ。ウチのチームでも募集中です。物理アタッカーはやりたがる人多いけど体力保たない人多いし」

 急に饒舌になった事に内心驚きつつも募集中の言葉が心に刺さった。


「なるほど⋯⋯魔法使いですか」

「なり手があまりいないんですよねー。魔法使い」

 期待する眼差し⋯⋯うん?黒目が不自然に大きい。コンタクトか?


「どうやったら魔法使いになれるんです?」


「⋯⋯お金、持ってます?」


 なにそれ?怪しい勧誘?

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