バグ修正でレベルは下がりましたがパッシブスキルは残りました
ぷぁぷぁ
第一話
「ひ、ヒイイイイイ」
「おばさん、旅立つ不幸をお許し下さい。ルーメンは、ルーメンは.......」
目の前に現れたゴブリンに腰を抜かして驚く。特有の早口でおばさんに謝罪を述べるが、届くことは無いだろう。その醜悪な姿は見るもおぞましく、口からは涎を撒き散らし、目は血走り目の前の餌を求め、体は何年も洗っていないのか酷く臭い。
ゴブリンは持った錆び付いた長剣で斬りかかる為にその場を跳躍する。咄嗟に持っていた短剣を向けるもそれしか出来ず、攻撃を止めることも何も出来ない。スローモーションになっていく光景。キーンという耳鳴り。死を直感し、目を瞑る。
しかし、待っていても死は訪れることはなかった。
「へっ?」
重くなる短剣。香る強い悪臭。感じたのは血の温かさだった。
「さ、刺さってる、やった」
震える手で握っていた短剣をゴブリンから抜き、仰向けになったゴブリンの死体を見る。
「うわぁ、ほんとに殺したんだ」
生き物を殺したのは初めてだった。殺すことに躊躇いはなかった。
何故こんなことをしているか、それはルーメンの住んでいる村の近くで初めて『レベル上げイベント』が行われたから。レベル上げイベントとはその名前の通りで、ある一定の場所でのみレベルを上げるために必要な経験値量が下がるというものだった。
しがない村人なルーメン好機と思い、ここで一旗揚げようと思ったのだが、思っていた以上に魔物との戦いは過酷なものだった。
「こんなに大変なら今日はもういいかな」
ため息をつき、近くに置いてきたリュックサックを取りに戻る。せっかくゴブリンを倒したのだ。素材を持って帰らない訳がなかった。
『経験値――を手に入れました。レベルが上がります』
♦
剥ぎ取りを終え、村に向かう。村の名はアーカンソ村。村の規模は小さく、特産は調合すると傷を癒す効果があるヤック草で、それ以外には何も無いごく普通の村だ。
「おかえり、ルーメン。大丈夫だったかい?」
「ただいま、フルハおばさん」
村の入口で母親に挨拶する。フルハおばさんは孤児のだったルーメンを養ってくれている人だ。
「見てよ、これ、ゴブリン!」
リュックサックからドヤ顔でゴブリンの素材を取り出しフルハに見せる。
「怪我はないかい?」
「うん」
「よかったよぉ」
涙ぐみながら心配してるくれているフルハが抱きつく。
「心配したんだよ? もう帰ってこないんじゃないかって」
「大丈夫だって」
2人で帰還を喜び合って家に帰る。今日はご馳走らしい。フルハが腕によりをかけてくれるそうだ。フルハのミートパイが大好きだからミートパイをお願いした。
「任せておきなよぉ」
腕をまくり腰にエプロンを巻くおばさんは逞しかった。
夕食を終え、自室のベッドに座ったルーメンは、ふと気になったことがあった。現在の『レベル』だ。
この世界には『レベル』、『スキル』、『マジック』、『カード』が存在する。
レベルは、僕達の成長度合いを表す数値。
経験値を手に入れることでレベルが上がり、経験値は様々な方法で手に入れることが出来る。手っ取り早いのが魔物を倒すことだろう。
スキルは、獲得した能力のこと。
パッシブとアクティブがあって、レベルが上がると手に入ることもあるし、訓練や勉強でも可能だ。
マジックは、魔法、魔術、呪術、奇術、祈り等のこと。スキル同様レベルアップや訓練、勉強で習得可能だ。
そして、カード。これはスキルとマジックを覚えることの出来るものだ。効果は弱いものから強いもの、入手は簡単なものから困難なものと、ピンからキリまである。レベルやジョブなどによって習得数には制限がかけられていて自分でカスタマイズすることも可能だ。ただ、カードで入手したら、レベルアップで習得したとはよくある話だ。
では、初めてゴブリンを倒したルーメンのレベルはどうなったのか。気になって当たり前だろう。
「アクセス、オン」
ルーメンが掌を上に向け呟くと球体状の立体映像のようなものが現れた。それはナーヴ。この世界の人間が自分のステータスを確認する時に使用するものだった。
「えーと、レベルは、っと」
球体を右に左にとスワイプし、自分が見たい項目の所まで飛ばす。何故かログが長く、おかしい事になっていたのが気になった。
「ん?」
ログを見るとそこには恐ろしいほどの文字列。レベルアップしました。〇〇を獲得しました。〇〇を習得しましたの連続。
「え???」
そして見つけるレベルの項目。
今朝見た時のレベルは3だった。
そこに書いてあったのは想像を絶するものだった。
「れ、レベル、1358!?」
きゅー、と不思議な言葉を発しながら気が遠くなる。ベッドに倒れ込んだ時、ルーメンの意識はなかった。
翌朝、目が覚めて直ぐにナーヴを起動する。
レベルの項目に辿り着くとそこにはいつも通りのLv3ではなかった.......
「Lv4か、なんだ、やっぱり夢、か」
安心したような残念なような気持ちに苦笑いする。
「当たり前か、そんなに直ぐに上がったら苦労しないもんね」
ナーヴを閉じ、ベッドを降りて着替える。フルハの作る朝食を食べ、再び森へ入る。
ルーメンは気がついていなかった。メッセージ機能などないナーヴにメッセージが届いていたことに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます