奴隷商人の証言

はい。この場では彼について話せばよい、ということですよね?

・・・なるほど。そういうご事情でしたら、お話させていただきましょうか。


この案件とのご縁は、まず商人同士のつながりからでした。

かなりきな臭いが、報酬だけは異様に高い案件があると。

かみから来た依頼なんじゃないかなどと、教えてきた人はおっしゃっていましたね。


私は以前から軍人さん、特に事務方や軍人あがりの元老院議員さんたちのグループとはお付き合いがありましたので、これは許容範囲内のリスクだと思い、その案件をお受けすることに致しました。


そうして向かった先が、ルキウスの一軒家だったというわけです。


はい。逃亡奴隷マルクの第一印象ですか?


特に何も。名付けられていたのには驚きましたがね。大切にされていたんじゃないですか?人形みたいに着飾ってね。ほほえましいじゃないですか。世間が地獄でもね。御伽噺おとぎばなしの小さな家、のようなね。


その中では、確実なる楽園があったという。


ハハッ。印象的でしたよ。奴隷にそんなことする主人、まずいませんから。


そのあとですか?


まず彼の日記は捨てさせました。身体は丁重に扱え、とのことでしたので、傷一つ付けずにお送りしましたよ。


わたくしが存じ上げているのは、ここまででございます。


その後は陛下のご住所までは輸送されたと。

その先のお話は、私にはあずかり知らぬところでございます。



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