第12話 妖怪あんばらんす
京都のとある場所に、その妖怪は出没するという。
人々にまぎれ、その顔は目立たず、一見妖怪とはわからない。
一瞬その顔を見ても、何の変哲もないモブフェイスに記憶は脳への書き込みを阻止されて、一体どんな顔だったのか思い出せない、そんな妖怪。
一つ目立った特徴を挙げるとすれば、真っ直ぐ歩けないこと。
フラフラ、と歩いて行っては壁に激突する。
またフラフラと歩いて行っては、何の凹凸もない地面にひっかかってこけいてる。
その妖怪の名は「あんばらんす」。
誰に悪さをするわけでもなく、ひっそり生きている。
妖怪「あんばらんす」、ある日思い立ってカイロプラクティックへ行ってみた。
驚くほど、体が軽い。
真っ直ぐ歩ける。
彼女はもう妖怪「あんばらんす」ではなくなった。
ああ、それなのに。
何年か経ったある日、彼女はまた妖怪「あんばらんす」に逆戻り。
兆候はあったのだ。
なんか体がゆがんでるなあ、と思って過ごす日々の果てに、パワーを増して「あんばらんす」は戻った。
悩まされる腰痛、肩こり、冷え性。
そろそろ妖怪退治にカイロプラクティックに行くべきか。
早く人間になりたい……。
そもそも、筋力が落ちてきたのがいけなかった。
昔は体力だけが取り柄だったのに、今はどうだろう?
満員の市バスに乗って筋肉痛になるわ、横断歩道を走って渡るのにこけそうになるわ、足がもつれるわ……。
妖怪あんばらんすの正体見たり。
老化ってやつですな。
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