あなたのいない日々

華愁

貴方を待ちわびて

彼が行方を眩ましてから

五年の月日が経ち

私は自分の家である一軒家は

ほったらかしで

彼のアパートに住んでいます。


家賃は彼が出て行く前に

八年分まとめて

支払っていたらしいです……


家賃を払っているということは

此処へ帰って来る気は

あるということですよね……?


部屋の中は彼が

出て行った時のままです。


【八年分】


後三年したら彼は帰って来るのでしょうか?


私も職場の皆もあなたを待っていますよ……


そして、戻ってきたら

いなくなった理由を聞かせて下さい。


事の発端が何だったのかは

今となってはわかりません。


五年前のある日

彼は忽然と行方を眩ましました。


上司にも学生時代の友人にも

同僚兼恋人だった私にさえ

何も言わずに行方を眩ましてしまった彼は

今、何処で何をしているのでしょうか……


彼の部屋には

私宛ての手紙が一通だけ

置いてありましたが

行方を眩ました理由等については

何も書かれていませんでした。


家主が出て行って五年。


私の物も多少増えましたが

基本的には彼が出て行った時のままです。


寂しい日々を仕事と

彼が残していった書籍類で紛らわし

碌に食事も取らずに

倒れたのは一度や二度ではありません。


彼の作った食事以外

受け付けない私は

もっぱら、栄養補助食品と水分だけで

済ませてきたのです。


元々、華奢だの細すぎだのと

言われていた私は益々体重が落ち

一時は入院を余儀なくされました。


病院食は仕方ないので

毎食、完食しましたが

味がしませんでした。


彼の手料理が食べたいです。


すぐに食事を忘れてしまう

私を叱ってほしいです。


【君はまた、食事を抜いて

倒れられたら僕は心配で

眠れなくなってしまうよ】


【今日は君の好きなものを

作ったから無理しないで

沢山食べるんだよ】


あなたに会いたいです。


あなたの声が聞きたいです。


あなたに抱きしめてほしいです。


私は今日もあなたを

思いながら眠りにつきます。


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*


久しぶりに夢を見ました。


彼が居た頃の

優しく、暖かで

楽しかった日々の夢を。


夢の中で彼が私を呼ぶのです。


優しい声で。


柔らかな表情で。


早くおいでと。

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