第54話 石屋は石屋

 3LDKの一室にて。エリとレマがナゴブロックを両手に持ち、格闘している。オタッキーな室内からして、どうやらエリの部屋のようだ。


「お姉さま、やはり図面を大幅に変更して良かったですね」

「うン! オリジナルの神殿ハ、ちょっと物足りなかったからネ!」

 イスラエル第三神殿の設計図の元になる記述は、聖書にこと細かく記載されている。王の住まう居城にしては、いささか簡素な作りであった。どことなく日本の神社に似ているのは、メシヤの指摘で気づいた。


「確かに手狭な感は否めないのですが、神殿だけでの使用目的でしたら十分な大きさですわ」

「そうだネ。居住スペースに関してハ、はっきりとした文献が残っているわけじゃないけド、王族が住む建物は別にあっただろうからネ」

「お姉さまの設計図は素晴らしいですわ。幼少の頃より絵がお好きでしたから」

「へへヘ。でもメシヤもイエスもマリアもすんごいのをいてたかラ、負けられないヨ!」


 小気味よく積み上がっていくブロック。イスラエルも日本と同じで、科学立国である。小さな頃から手を使うことを厳しくしつけられる。

 メインの神殿は造り終わり、築城にとりかかるエリ。外周の壁ブロックは、最後に積む段取りだ。

頃合いを見て席を立つレマ。どうやらお茶をれに行ったようだ。


「はい、お姉さま」

「トダラバー(ありがとう)」

「べバカシャ(どういたしまして)」

 エリにはイスラエルの飲み物、リモナナが手渡された。レマはサクロブをいただくようだ。

「「レハイム!(乾杯!)」」

ごくごく飲む二人。

「「タイーム!(美味しい!)」」


 一息つき、会話を再開する仲良し姉妹。

「お姉さま、重大な任務を仰せつかりましたね」

「アーロン様だネ」

「私達のナゴブロックを元に、本物の第三神殿を造るというんですから」

「うン。メシヤは知ってるのかナ? 自分の宿命ヲ」

「メシヤさまもああ見えて、しらこいところがありますからね」

「最初は獣が王座に就くけド」

「ええ。黙示録ではそう言われていますね」

「でモ、ヒーローは遅れてやって来ル」

「はい。最終的にイスラエル第三神殿の玉座に座るのは、他でもないメシヤさまなのですから」

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