1280.テスト用第九号迷宮、ホムン迷宮。

「ちなみに、ここのモニターにはどんなものが映せるんだい?」


 俺は、統合指令室の前面に展開している巨大モニターやその周囲にある小さなモニターについて確認した。

 かなり気になっていたんだよね。


「はい、連結している各迷宮の内部の様子が映し出せます。

 それからシステムをバージョンアップし、撮影ユニットを稼働させれば、迷宮外部の様子でも投影できます。

 撮影ユニットを移動させ、迷宮から離れた場所の様子を映し出すことも可能です」


「それってつまり……迷宮と関係ない場所も映し出せるし、戦場とかの様子もここで見れるってことだよね?」


「その通りです」


 おお、めっちゃ凄いじゃん!


 それが欲しかったんだよね。

 これぞ、統合指令本部って感じだ。


 みんなでいつも集まる秘密基地『竜羽基地』にも、作戦指令室を作っているが、撮影する魔法道具やモニターの魔法道具がないから、ただの作戦会議をする部屋になっている。

 俺としては、満足度がかなり低かった。


 だがここは、俺が思い描いている通りの作戦指令室だ!


「その撮影ユニットっていうのは、どういうものなんだい?」


「はい、それはテスト用第九号迷宮『ホムン迷宮』で製造可能なユニットです。

 ホムンクルス及びアバターボディーの製造技術を生かした生物型のユニットになります。

 それに、撮影の魔法道具が搭載されているのです」


「撮影の魔法道具も作れるの?」


「はい、撮影の魔法道具は非常に貴重な魔法道具ですが、製造可能です。

 賢者コータロー様が、苦心の末に開発されました。

 『マシマグナ第四帝国』以前の文明の資料も参考に、開発したようです。

 ただ小型化は、ある程度までしかできなかったので、撮影ユニットのサイズは、小さいものでもカラス程度の大きさになってしまいます。

 戦場などでは破壊される可能性も高いですが、システムによる自動操縦ではなく、熟練した操縦者によるマニュアル操縦なら、損傷率を軽減させることもできるでしょう」


 なるほど、凄いな。

 早く見てみてみたいな。

 自由に活用できるようになれば、いろんな所の状況も確認できるし、戦場以外でも活躍してくれそうだ。

 動く監視カメラというか……ドローンだね。

 関係のある街とかを定期的にパトロールしてもいいかもしれない。

 そして熟練した操縦者によるマニュアル操縦というのも、ポイントなんだろう。

 そういう人選をしても、いいかもしれないな。


「マスター、テスト用第九号迷宮『ホムン迷宮』への転送が可能になりました」


 おお、いよいよ行けるのか。


「わかった。ところで、転送というのは転移とは違うのかな?」


「はい、ほぼ同義ですが、転送は物品などを一方的に送りつけることが可能となります。

 人を転送するのと、人が転移するのはほぼ同じですが、物品だけを送りつけるのは、転移ではなく転送となります。

 連結された迷宮の間では、人や物資を転送することが可能となります。

 もちろん今までのように、第九号迷宮に一度マスターが訪れれば、以後、転移で訪れることも可能です」


 なるほど、なんとなく違いはわかった。


 俺は、早速第九号迷宮に転送してもらった。


 転送と言っても、いつもやっている迷宮内での転移と変わらなかった。

 転送ルームのような場所があるわけではなく、その場所から一瞬にして移動したのだ。


 まぁ転送ルームについては確認していないから、もしかしたらあるかもしれないけどね。

 物品の転送ができると言っていたから、普通に考えれば物のやりとりをする部屋はある可能性の方が高い。

 後で確認すればいいだろう。


 視界が揺れたと思ったら、見慣れたダンジョンマスタールームの光景だった。


「ようこそおいでくださいました。

 私は『ホムン迷宮』迷宮管理システムです。

 『ホムン迷宮』は、『マシマグナ第四帝国』の人造迷宮『錬金迷宮アルケミイダンジョン』のテスト用第九号迷宮です」


「ああ、俺はグリム、よろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします、マスター」


 現れた立体映像は、いつもと同じ日本人顔だ。

 髪色は、ピンク色である。


「長らく『休眠モード』に入っていましたが、活動を再開いたしました。現在の状況も把握しております」


「君はどのぐらい休眠してたんだい?」


「およそ三千四百年になります」


 おお、最長記録だったダリセブンの三千二百年前よりもさらに古い。

 さっきの説明でも聞いたが、本当に人造迷宮技術の確立した初期の段階で、封印されていたようだ。


「……システムに大きな損傷はないのかい?」


「はい、現在確認をしている最中ですが、修復が必要な場所はありますが、大きな問題はないと思われます」


「今まで俺がダンジョンマスターになったテスト用迷宮は、長い休眠の間に魔素を吸い上げるシステムが損傷する場合が多かったが、それは大丈夫なの?」


「はい、魔素吸収システムに異常はなく、休眠しながらもエネルギーに満たされていたので、大きな損傷は発生していません」


 なるほど。たまたまかもしれないが、損傷はなかったわけか。


「この迷宮のテスト目的は、『ホムンクルス』の研究なんだよね?」


「はい、そうです。

 ただ『ホムンクルス』の製造は、人道的な問題があると考えられ、その時点でこの迷宮は封印されました。

 『ホムンクルス』を製造するかどうかはともかく、アバターボディーの製造もこの迷宮は備えています。

 リンクされたすべてのテスト用迷宮の『迷宮管理システム』用のアバターボディーが必要な場合は、ここで製造することができます」


 おお、なるほど。それはいいかもしれない。

 アバターボディーがあれば、活動の幅が広がるからね。


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