1198.クラン屋敷、拡張。
昨夜の俺の『闇の掃除人』としての行動で、またもや迷宮都市に、その評判が広まってしまったようだ。
英雄視する感じで、人気が広がっているらしい。
だがあくまで謎の正義漢となっているようで、俺のことではないので、いくら有名になっても、俺としては結構気楽だ。
昨夜密かに行った事は、『闇の掃除人』としての活動だけではない。
俺は、この『ツリーハウス屋敷』を拡張したのだ。
現在の『ツリーハウス屋敷』の左右にある倉庫と、『ツリーハウス屋敷』を含めたその全体の後ろ側にある家屋五棟も買取り、区画ブロックが全部丸ごとが『ツリーハウスクラン』のものになったのである。
そこで俺は闇夜に乗じて、既存の建物を全て『波動収納』に回収し、更地にした。
そして、区画ブロック全体に壁を巡らせ、その内側に建設用の目隠しとして、長い板を設置したのだ。
敷地の整備と建物の建設は、魔法ですぐにできるので目隠しは必要ないのだが、急に建物が現れたらみんなびっくりするので、しばらくの間は目隠しして、わからないようにしたのだ。
もっとも、その目隠しも数日しか設置しない予定なので、いずれにしろ周りの人はびっくりするだろうけどね。
一夜にして激変しているよりは、数日でもあったほうが、まだマシだろうという程度の小細工なのである。
『ツリーハウス屋敷』を入って右側に、冒険者たちが暮らす『冒険者館』を作ったのだが、そのさらに右側の倉庫だった場所も、冒険者用のスペースにしようと思っている。
広がった敷地にかけて、『冒険者館』を増築して、さらに大きな建物にした。
増築しても、たっぷりとスペースが残っているので、元からある空きスペースと合わせて、冒険者たちが訓練する場所として使ってもらう予定だ。
門を入って左側には、子供たちの『養育館』がある。
この左隣にあった倉庫スペースも、『養育館』用の敷地にしようと思っている。
今のところ建物の増築の必要はないので、広い遊び場として使うつもりだ。
公園のようにしても良いだろう。
滑り台などの遊具を設置したい。
敷地が広がると思わなかったので、『養育館』の前に立てた『お風呂館』が微妙に邪魔な位置にある。
そこで『お風呂館』を、東西方向の建物だったのを南北方向になるように移動して、西側の外壁に隣接させる形で設置し直した。
一旦『波動収納』に回収して、取り出して置き直しただけなので、大して手間はかからなかった。
もちろん、配管の接続など細かい所の調整は必要だったけどね。
『養育館』と『お風呂館』が向かい合うような形になっている。
もっとも、その間のスペースは、子供たちの遊ぶ広場がある。
そしてその中心には、この前『デミトレント』として覚醒した『ワイルドガジュマル』の木があるのだ。
『デミトレント』になった子が、四体いるわけだが、通り過ぎるときに話しかけると、返事をして枝を揺らすんだよね。
とっても不思議な気分なのだ。
『ワンダートレント』のレントンは、木というよりは生物という感じだから、実際生えている木が言葉を返してくるっていうのが、不思議な感じなのだ。
『ツリーハウス屋敷』と両側の倉庫だったところ全体の後方にある家が五軒あった場所についても、今後活用していく予定だ。
今は更地の状態にしてあるが、様々な工房とかを作ってもいいと思っている。
場合によっては……『冒険者館』のスペースの後方の更地を使って、スーパー銭湯のようなものを作ってもいいかもしれない。
やはりお風呂文化を広めたいし、その中でちょっとした飲食物の提供もできるからね。
屋台で出店するようなメニューを、そこでまとめて提供してもいいよね。
そういうことも考えると……どうせなら温泉にしたい。
迷宮都市の南側の街道の出た盗賊たちのアジト近くにあるという源泉を、なんとかして見つけたい!
そして、ここまで引っ張ってくる方法を真剣に考えたい。
◇
俺は、迷宮都市の南門を出て、街道を下った西側にある盗賊のアジトだった洞窟にやって来た。
小山で全体が岩場という感じの場所だ。
ここにのどこかに、源泉があるはずなんだよね。
なんとなく気になって、洞窟に入ってみた。
アジトとして使っていたわけだが、そこにあった品々は俺が没収しているので、今はただの洞窟状態だ。
特に変わった様子もないので引き上げようと思ったのだが……なんとなく奥の方が、暖かいような気がする。
洞窟の突き当たりまで行って、確認をすると……やはりちょっと暖かい。
俺は予感めいたものを感じ、『波動検知』をかける。
念じるのは、温泉というか源泉だ。
そして同時に……『財宝発掘』スキルが仕事をしてくれるのを祈る。
鉱脈も発見できるスキルだからね。
…………感じる。
この奥だ!
多分この先をずっと進めば、源泉にぶち当たるはずだ。
俺は、切れ味抜群の『魔剣 ネイリング』を取り出し、突き当たりの洞窟の壁を丸く切り抜く。
それを繰り返し、十メートル程掘り進むと、空洞地帯に出た!
すごい蒸気だ!
間違いない。
源泉だ!
そしてこの空洞地帯には、温泉のようにお湯が溜まっている大きな凹みがある。まるで湯船だ。
かなり広い。ちょっとした池くらいの大きさだ。
半径十メートルくらいの楕円形の凹みで、お湯が湧き出ている場所はその中にあるようだ。
あふれたお湯は、自然にできた溝へと排出されている。
この溝から、地中に管を通して『ツリーハウスクラン』まで引けないかなぁ……?
溝のようなものがあって、どこかへ排出されているようだ。
この凹みの水深は……五十センチくらいしかない。
本当に湯船のようだ。
そのまんま秘湯状態である。
手をつけてみると……かなり熱い。
多分だけど……50℃以上はあるんじゃないだろうか。
いくら熱いお湯が好きな俺でも、ちょっと入れない温度だ。
まぁ水で薄めれば、いいんだけどね。
この空洞はかなり広いので、この源泉が湧いている凹みの近くに新たに湯船を作って、水を足せるようにすれば温泉として利用できる。
とりあえずここは、俺と仲間たちだけの秘湯にしよう!
将来的には、ここにも温泉旅館を作ってもいいかもしれない。
迷宮都市から近いから、保養地として、人を呼べるかもしれないし。
当然、街道やここに至るまでの安全対策は必要になるけどね。
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