1166.スライムの資料を、調査。
ニアからの報告を聞き終えた俺は、いい加減休もうと思ってはいるのだが……どうしても気になることがある。
もう明け方近くになっているが……やむを得ない。
『精霊神アウンシャイン』様が、わざわざ働きすぎないようにメッセージをくれたにもかかわらず……全く守れていない。
まぁ突発事態だから、しょうがないよね。
俺がどうしても気になっている事は、『セイチョウ迷宮』で聞いた『スライム聖女』の話なのだ。
『スライム聖女』が言っていたという、特別な『スライム』を作り出す儀式の話が気になるのである。
この話が元になって……変な風にねじ曲がり、都市伝説みたいになってしまったのだと思う。
百八体の『スライム』を集めると願いが叶うみたいな都市伝説になっているのだ。
そしてそれを信じたアホ貴族ボコイが、百七体まで『スライム』を集めて監禁していたわけだ。
俺は、奴の屋敷から『スライム』に関する本を二冊没収している。
時間がなくて、まだ内容を確認していなかったのだが、その内容をどうしても確認したくなってしまった。
前に目次だけ確認したときに、スライムの特殊なクラスチェンジに関するものがあったのは、覚えている。
その辺の内容も、確認したいのだ。
没収した本は、『スライム その神秘と可能性』と『幸福を呼ぶ百八体のスライム』という二冊だ。
『スライム その神秘と可能性』という本の目次に、『特殊なクラスチェンジ』いう項目があったのだ。
まずは、この本の内容を、さっと確認しようと思う。
著者は、『スライム博士』となっている。
ペンネームだろうが……『スライム博士』と名乗るくらい『スライム』のことが好きな人だったのだろう。
この中には、『スライム』の生態が中心に描かれている。
ゴミを分解して吸収してくれたり、水を綺麗にしてくれたり、サビを落としてくれたり、などの『スライム』の能力について書かれている。
ごく稀に、体の中に物を収納できたり、体の一部を変形させることができる『スライム』がいるとも書いてある。
これも、すごい情報のように書いてあるが、俺としては当たり前のことだ。
ある程度レベルが高くなると、『種族固有スキル』が新しく発現して、できるようになるんだよね。
ただ通常の野生の『スライム』は、ほとんどがレベル5以下なので、『体内保存』や『変形』という『種族固有スキル』を持っていないのである。
それで、そのようなことができる『スライム』を、珍しい『スライム』としているようだ。
通常、『スライム』はレベル6になると、『種族固有スキル』に『増殖』というのが発現する。
これにより、野生の『スライム』はみんな分裂増殖してしまうのである。
レベル6の『スライム』が、二体に分裂増殖したとすると、レベル3の『スライム』が二体になる。
まぁ分裂する際に、特別に意識すればレベル1とレベル5という感じにも、分裂することはできるみたいだけどね。
いずれにしろ、『種族固有スキル』の発生に伴って、分裂増殖してしまうので、野生の『スライム』たちは、レベル5以下がほとんどなのである。
マスターがいる『スライム』で、このスキルの使用を禁じていれば、分裂しないのでそのままレベルが上がっていく。
そうすると、『体内保存』と『変形』という『種族固有スキル』や、『膨張』といった体を巨大化できる『種族固有スキル』も発現するのである。
これらのスキルは、普通の『スライム』の状態で、レベルさえ上がれば獲得できるのだ。
レベル20を超えると、通常であれば『ハイスライム』にクラスチェンジできるのだが、その前の段階つまりレベル20未満で、これほどの『種族固有スキル』が取得できる種族は、他にいないのではないだろうか。
また『種族固有スキル』と言いながら、最初から所持しているスキルよりも、後から発現するスキルが多いのも、際立った特徴かもしれない。
いずれにしろ、この本に書いてある『スライム』の特徴は、俺にとってはそれほど目新しいものではない。
というか、『スライム』のスキルを含めた特殊能力については、多分俺の方が詳しい。
ただこの本には、『スライム』がごく稀にレベルが高くなると、クラスチェンジするとも書いてある。
『ハイスライム』になって、その後は『ロイヤルスライム』という上位種になるらしいと書かれている。
ただ『ロイヤルスライム』については、噂に過ぎないとも記述されているので、その存在を何かで耳にしたという程度なのだろう。
その更に上位種の『エンペラースライム』については、まったく記述されていない。
あと、『ハイスライム』になるのではなく、特殊なクラスチェンジもあるらしいということも記載されている。
俺が発見した『小悪魔 インプ』や『小悪魔 ジャキ』を吸収することによって、『マジックスライム』にクラスチェンジできるという明確な記述はされていない。
ただ特殊な『スライム』の例として、魔法が使える『スライム』という記述があるから、これがおそらく『マジックスライム』のことだろう。
『スライム博士』は、自分では見たことがないようだが、そんな伝承が残されていると記述している。
他の例としては……浮遊する『スライム』、光を発する『スライム』、水の中にいる『スライム』なども記載されている。
こういう『スライム』の存在は、初耳だ。
俺の仲間の『スライム』たちは、『共有スキル』の『浮遊』で浮けるわけだけど、『スライム』の本来の能力として、空中を移動できる『スライム』がいる可能性があるということだ。
あと面白いのは……『スライム』ではないが、『スライム』に似た魚も確認されているとの記述があった。
そのイラストを見ると……めっちゃ可愛いのだ。
正面から見ると、しずく型になっていて、俺がゲームなどで知っている『スライム』にそっくりなのである。
しずく型の『スライム』に、ちっちゃな尾びれと胸びれが付いている感じなのである。
『デミスライムフィッシュ』という名前らしく、『スライム』と同じように、ぷにぷにしているらしい。
水の中で暮らすこともできれば、陸に上がって跳ねながら移動することもできるらしい。
ぜひ一度会ってみたい!
そんな感じで、変わり種のスライムの情報は面白かったのだが……肝心の特殊なクラスチェンジをするための条件については全く書かれていなかった……残念。
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