1115.人材の紹介も完璧な、『商業ギルド』スタッフ。
クランのメンバーとなった『ヘスティア王国』の第三王女のファーネシーさんの冒険者パーティー『守護炎の騎士』は、最近Dランクに昇格したとのことだ。
中堅冒険者の仲間入りをしたわけである。
かなりバランスの悪いパーティーだと思うのだが、一年でDランクに昇格するのは、結構すごいことなんじゃないかと思う。
どうやって冒険者ランクを上げたのかと尋ねたら、通常の迷宮探索以外に、クエストを頑張ったらしい。
冒険者ランクを上げるには、クエストの達成数などが大きく影響するようだからね。
魔物との戦闘は、バランスが悪くても、何とかなっているようだ。
やはり、元々のレベルが皆それなりに高く、一般的な新人冒険者とは違っていたのだろう。
ちなみに現在のレベルは、全員29とのことだ。
ファーネシーさんは、幼い頃から、いつも全身鎧を装着していたそうだ。
訓練のためと、将来人々を守る強い騎士になるという夢があったかららしい。
そんな姿から、密かに『鎧姫』とも呼ばれていたそうだ。
普通なら嫌がると思うが、ファーネシーさんは誇らしく思っていたとのことだ。
迷宮都市に武者修行に来ることについても、当然のことながら国王は反対したらしく、かなりもめたらしいのだが、最終的には折れてくれたのだそうだ。
迷宮都市に一緒に来た四人は、幼い頃に貴族の令嬢の中から選抜された子たちで、ファーネシーさんの学友であり護衛として、共に過ごしてきた姉妹のような間柄なのだと言う。
全員十六歳で、王女と護衛というよりは、友達としての関係性が強いようだ。
一通りの話が終わって、彼女たちは、輸送隊の消息の手がかりを確認するために、早速、衛兵隊のムーニーさんに会いに行った。
ファーネシーさんたちが去った後、ニアさんが待ってましたという感じで、俺の前に飛んで来た。
「あたしさぁ、今からちょっと猿を見に行ってくるから! 迷宮都市に、私の新たな『猿軍団』……飛猿軍団が誕生するから待ってて! 『猿軍団』……第三章の幕開けだわ!」
ニアは、めっちゃハイテンションで、悪い笑みを浮かべている。
そうなると思ったよ……。
我慢しきれないわけね。
大体……『猿軍団』第三章って何よ!?
まぁ第二章は、戦う猿のパーティー『モンキーマジック』の事だと思うけどね。
新たに『猿軍団』が増員されれば、元々のメンバーの『白島猿』や『赤リスザル』や『モンキーマジック』たちが、急に呼び出しされる確率が減るから、彼らにとっては良いことかもしれないけどね。
それにしてもニアは、猿を見に行くのを我慢できないらしい。
大体の場所は、バナボさんから聞いたので、一人で行っちゃうつもりのようだ。
俺も行きたかったのに……。
「わかった。でもほどほどにね」
迷宮都市の人たちには、凶暴な猿の軍団と恐れられているようだが、俺的には、その猿たちが不憫でしょうがない。
「わかってるわよ。巨大バナナも採ってくるからさぁ、期待して待ってて!」
ニアは、颯爽と飛んで行った。
飛猿たち……ご愁傷様です。
ニアが去ったのと入れ替わるように、『商業ギルド』のビジネリアさんがやって来た。
女性を四人連れている。
もしかしたら、昨日面接に来てくれた人かな?
声をかけて、ツリーハウス前のラウンジに通した。
挨拶をしたが、やはり昨日面接に来てくれた人たちだった。
『ツリーハウスクラン』で働きたいと言ってきた人たちだ。
飲食店での調理場の経験がある人が二人、ホールの経験がある人が二人だった。
「すみません。余計なことだったかもしれませんが、人手が欲しいかと思って、この子たちに声かけちゃったんですよ」
ビジネリアさんが、そう言って笑った。
「いえ、助かりました。さすがの気遣いですね。掲示板を見ていただいたかと思いますが、仕事をお願いしようと思います。住み込み希望だとも伺っています。すぐに入居できますよ」
俺はビジネリアさんにお礼を言いつつ、採用した四人に声をかけた。
「ありがとうございます。一生懸命がんばります!」
「「「がんばります!」」」
四人とも知り合いのようで、リーダー格と思われる女性が代表してお礼を言うと、息が合った感じで、他の三人が一緒に頭を下げた。
話を聞くと……四人は同じ店で働いていたらしい。
支配人と料理長のセクハラがあって、抗議したところクビになったのだそうだ。
……酷い話だ。
もしニアがまだここにいたら、「セクハラには死を!」とか言って、殴り込んだかもしれない。
貴族が経営するレストランだというので、まさかムーンリバー伯爵家の『フェファニーレストラン』かと思ったが、そうではなかった。
ホッとした。
まぁ『フェファニーレストラン』を見ているのはムーランさんだから、セクハラなんて許すはずがないしね。
ホールでリーダーをしていたという女性が、四人のリーダー的な感じだ。
見た感じ……テキパキと仕事をこなしそうな、できる感じの人だ。
なんとなく伝わる雰囲気も、サバサバした感じで男前な感じだ。
ホールリーさんといい、二十三歳とのことだが、すごくしっかりして見える。
黒髪ショートで良い笑顔を作るが、真顔になると眼光が鋭い。
支配人タイプかもしれない。
飲食店での接客経験は、八年あるとのことだ。
本当だったら、『フェアリー商会』の人材として欲しいくらいだ。
クランのメンバーの食事を作るのも、もちろん大事なのだが、この子に飲食店を任せたら、結構うまくやるんじゃないかな。
初めて会っても、そんな風に思ってしまう雰囲気を持っている。
もう一人のホール経験のある子は、二十一歳で、三年の経験があるそうだ。
後で、『ガングロおじさん五人組』と顔合わせしてもらって、今後の炊事を任せようと思う。
彼女たちの事は、当面『飲食店四人組』とでも呼んでおこう。
『ガングロおじさん五人組』と『飲食店四人組』を合わせて、『炊事チーム』とでも呼ぶことにしよう。
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