786.温泉旅館に、集合。
『マシマグナ第四帝国』が作った人造迷宮のテスト用第六号迷宮『ゴーレマー迷宮』を後にし、俺たちは温泉旅館に戻ってきた。
もうすっかり夕方になってしまっていたのだ。
今夜は、国王陛下たちがやって来る予定になっている。
新設した『隠れ家別館』には、温泉アイドルユニット『
今夜は、俺の仲間たちも旅館のスタッフとして、もてなす予定だ。
『アメイジングシルキー』のサーヤ、『家精霊』こと『付喪神 スピリット・ハウス』のナーナ、『兎亜人』の姉弟ミルキー、アッキー、ユッキー、ワッキー、『魚使い』のジョージ、『アラクネロード』のケニー人型分体、俺の『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビー顕現体に、スタッフとしてスタンバイしてもらう予定なのだ。
『フェアリー商会』の『おもてなし事業本部』の『おもてなし特別チーム』にも、来てもらうことになっている。
これだけスタッフを揃えたので、温泉旅館……『ピア温泉郷 妖精旅館』の通常営業に支障をきたさず、この『隠れ家別館』を運営できるだろう。
少しして、国王陛下たちがやってきた。
ユーフェミア公爵をはじめとしたいつもの貴族メンバーが、転移の魔法道具で連れてきてくれたのだ。
今回、初めてこの温泉旅館にやってきたのは、国王陛下と王妃殿下、その護衛の『近衛騎士団』団長で格付け第一位のタングステンさん、第二位のミチコルさん、ビャクライン公爵一家と護衛の近衛兵十人、『セイリュウ騎士団』の皆さんだ。
それから『光柱の巫女』の三人も招待した。
もちろん、『総合教会』が運営する孤児院の子供たちと、元『花色行商団』で『フェアリー商会』のスタッフになってくれた大人女子のメンバーと亜人の子供たちも招待した。
元怪盗と敏腕デカの特捜コンビのルセーヌさんとゼニータさん、見習いの犬耳の少年バロンくんとゼニータさんの弟のトッツァンくんにも来てもらった。
まずはゆっくり温泉につかってもらって、その後宴会をするという流れなのだが、俺は最初に白衣の男の件について報告することにした。
早く温泉に入りたいと思っている皆さんに対して申し訳ないとも思ったが、重要なことなので先に報告する時間を作ってもらったのだ。
その間に、子供たちに先に温泉に入ってもらうことにした。
女湯は、『フェアリー商会』のスタッフになってくれた元『花色行商団』の大人女子メンバーが見てくれ、男湯は犬耳の少年バロンくんとトッツァンくんが見てくれることになった。
「そうでしたか……ついにあの男が……。あの男にふさわしい哀れな末路だったということですね……」
アンナ辺境伯が、静かに言った。
逆恨みによってピグシード辺境伯領を壊滅寸前に追い込んだ……そして、アンナ辺境伯のご主人をはじめ多くの命を奪った張本人の死の報告だけに、いろんな思いが交錯しているのだろう。
努めて冷静にしているという印象を受けた。
「シンオベロン卿のお陰で、非常に重要な情報を掴むことができたね。悪魔が大掛かりなことを計画している。そして『アルテミナ公国』が悪魔に支配されている可能性が高い……」
国王陛下が、思案顔で言った。
「そうさね……『アルテミナ公国』の政情不安は聞いていたが、やはり密かに悪魔の介入があったってことだろうね。あの国は七年前に政変があったからね。公王の弟がクーデターを起こして、王位についたんだが、それにも悪魔が関係しているのかもしれないね……」
ユーフェミア公爵も、腕組みしながら渋い顔をしている。
「『悪魔の領域』とやらも、どうにかして探し出さないとねぇ……」
マリナ騎士団長が、顎に手を当て呟くように言った。
「そうなんです。奴らの話しぶりからして、簡単に発見できそうにはありませんが、何か手立てを考えようと思います。もう少し落ち着いたら、『アルテミナ公国』に行ってみようと考えています」
俺は、そう答えた。
「そうだね……。まぁ乗り込んでみるのが、早いだろう。だが、話の感じからして表立って行くのは……まずいかもしれないね。『上級悪魔』まで倒したあんたたちが危険とは思わないが、警戒されたら情報収集するのも容易じゃないからね。入国するにしても、別人として入ったほうがいいかもしれないね。ニア様もいつもの姿じゃ目立つから、人型になって行った方がいいね……」
マリナ騎士団長は、そうアドバイスしてくれた。
確かにその通りかもしれない。
妖精女神とその相棒、そして妖精女神の使徒については、悪魔も情報を持っているはずだからね。
警戒される可能性がある。
そう考えれば、ニアは羽妖精の姿はまずいし、いつも俺たちと行動を共にしていた『エンペラースライム』のリンをはじめとした人型でないメンバーも、目立っちゃうから一緒に行かない方がいいかもしれない。
ニアは、結構長い時間、人型でいられるようなので、多分問題ないと思う。
ただ俺が困るんだよねぇ……ニアさんが人型になってると……何か知らないけど、ドキドキしちゃうんだよね。
調子が狂っちゃうのだ。
まぁ慣れの問題だから、慣れちゃえば平気だと思うけど……。
入国するのも、俺とニアとリリイとチャッピーといった最小限の人数で、入国した方がいいかもしれない。
緊急事態や戦いのときは、いつでも転移で助っ人に来てもらえるしね。
そしてまずは、ひっそりと情報を集めるという計画でいくか……。
まぁ今決めてしまう必要はないので、アドバイスを参考にしつつ、じっくり計画を練ってみよう。
俺はとりあえず、今後の予定だけをみんなに告げた。
七日後に『領都セイバーン』で行われる式典が終わったら、準備を整えて『アルテミナ公国』に向かうというものだ。
国王陛下をはじめ、みんな協力すると申し出てくれた。
心強くて、ありがたい限りだ。
そして『アルテミナ公国』への潜入作戦を立てようと、マリナ騎士団長が張り切っていた。
まさか……来ないよね?
来たら目立ちすぎるから、絶対駄目だと思うんだけど……。
ちなみに白衣の男と悪魔を倒した報告の中で、迷宮が生きていて俺がダンジョンマスターになったという話は、割愛した。
俺の『絆』メンバー以外の人たちには、テスト用迷宮のダンジョンマスターになっているということは公開していないので、このタイミングで話すと色々と面倒くさくなりそうだったからだ。
できれば『上級悪魔』を倒したという話も、秘匿したかったが、『怨念珠』のことなどの情報を出さなきゃいけないので、そこを隠すことはできなかったのだ。
ただニアと俺と使徒たちの力を合わせて、なんとか倒したという感じで話を盛っておいた。
実際には、瞬殺で倒したんだけどね。
まぁ『赤の上級悪魔』には、自爆されてしまったわけだが……。
俺の予想に反して、『上級悪魔』を倒したと報告をあげても、あまり大きく驚かれなかった。
まぁこの前の戦いで、天災級の魔物で伝説の魔物でもあった巨大クラゲ『イビル・アーマークラゲ』を倒しているから、『上級悪魔』を倒したといっても、それほどのインパクトがなかったのかもしれない。
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