710.海の魔域の、情報。
打ち合わせが終わって、俺は転移で大森林に来ている。
いくつか確認したいことがあったからだ。
まず昨日の戦いの時に、仲間にした者たちのことだ
ジョージが仲間にした巨大ザメの浄魔『マナ・メガロドン』たちと、俺が仲間にした巨大クラゲの浄魔『マナ・アーマークラゲ』たち、そして俺の眷属『聖血鬼』のキャロラインさんが、俺の血を飲ませて仲間にした『聖血生物』たちだ。
この新たな仲間たちには、一旦、大森林に移動してもらっていたのだ。
『マナ・メガロドン』は三体、『マナ・アーマークラゲ』は、六体仲間になっている。
『
『聖血生物』たちは、二種族で合計二十体だったのが、合計三百二十体になったのだ。
『聖血生物』たちは、元々ヘルシング伯爵領内の第二秘密基地ともいえる『翼森基地』に所属していた。
今回、合計で三百二十体の大所帯となってしまった。
『翼森基地』は広いので、十分収容することはできるが、キャロラインさんと彼女の配下の女性『聖血鬼』たちが使役するには数が多い。
そこで数を半分に分けて、半分はキャロラインさんの指揮下、残り半分は大森林でケニーの指揮下に入ってもらうことにした。
『マナ・メガロドン』三体と『マナ・アーマークラゲ』六体は、当面大森林にいてもらうことになる。
彼らは、魔素が濃い大森林に居れば、食べ物を摂取しなくても活動が維持できる。
普通なら大量の食料を必要とするが、大森林にいる限りは大丈夫なのだ。
だが、いかんせんこの巨体だから、目立ってしまう。
まぁ大森林の上空を通る生物もそれほどいないだろうから、大丈夫だと思うが……。
ただ、悪魔が動き出しているようなので、より注意が必要になる。
以前にも、大森林は悪魔の侵攻を受けているからね。
そういう観点からも、彼らは空中ではなく水中にいたほうが良いのだが……。
大森林にいくつかある巨大な湖でも、彼らにとっては小さいんだよね。
場合によっては、元いた場所に戻ってもらった方がいいかもしれない。
水の中の方が暮らしやすいだろうし。
俺は、それぞれに、元々いた場所を尋ねてみた。
それによると、まず『マナ・メガロドン』たちは、セイバーン公爵領の南にある海の魔物の領域にいたらしい。
魔素が濃い海域とのことで、魔物が多く人族の船などが近づくことは、ほとんど無い場所のようだ。
陸地から離れた外洋とはいえ、比較的陸地には近い場所とのことだ。
実際、『正義の爪痕』が潜入できたのだから、そうなのだろう。
『マナ・アーマークラゲ』たちは、『
『魔域 スパイラル大海域』と呼ばれているらしい。
ここも、セイバーン公爵領から南に下った場所にあるようだが、陸地とはかなり離れていて、人族の船が近づくことは、ほとんどないようだ。
「強き王よ、我々がいた“海の魔域”の主になられてはいかがでしょうか? もし我々のように正常な思考を取り戻すことができるのであれば、多くの海の魔物が従います。戦力も大幅に増えるでしょう。『魔域 スパイラル大海域』には、強力な魔物が多く、戦力が拮抗していて全体を支配する主は存在していない状態です。我々以外にも、『オリジン』と呼ばれる特別な魔物も存在しています」
『マナ・アーマークラゲ』たちの一体が、提案してきた。
これ以上、主になるつもりは基本的にはないが……ただ気になるのは……この天災級の伝説の魔物だった巨大クラゲたちと、互角の魔物が生息しているということだ。
もしまた悪魔に利用されたら……厄介だ。
その危険を排除するためにも、仲間にできるならした方がいいかもしれない。
もちろん、大幅な戦力増強にもなるしね。
それに、巨大な海の浄魔たちの拠点にすることも、できそうだ。
それから、俺は少し気になったのでどんな『オリジン』がいたのか訊いてみた。
「まずは『スキュラ』という『オリジン』です。上半身は人間型で、下半身は魚なのですが、腰に六頭の犬の上半身がついています。サイズは小さいのですが、独自の縄張りを持っていて、それを強固に守っています。それからサイズが大きいので言うと、『シーサーペント』というウミヘビ型の『オリジン』がいます。少し前まで『オクトパスクラーケン』と『スクイードクラーケン』もいたのですが、どこかへ行ってしまったようです」
『マナ・アーマークラゲ』の一体が教えてくれた。
なかなかに興味深い……。
クラーケンといえば、海の魔物の定番だが二種類いたのか……。
魔物の総数もかなりいるそうなので、結構大変そうだ。
倒してしまうだけなら面倒くさくないのだが……『操魚の矢』を打ち込んで仲間にしていくとなると、骨が折れる作業という感じだ。
遠征隊を組織して、大規模遠征をするか……。
「強き王よ、我らがいた海域も、魔域とまではいかなくても、魔素の濃い魔物の領域です。そこも制圧できれば、戦力増強になります。人族の航路にも近いですから、人族の危険を減らすこともできると思います」
今度は『マナ・メガロドン』の一体が、そう言った。
『マナ・アーマークラゲ』といい、『マナ・メガロドン』といい、『絆』メンバーになったばかりなのに、念話でなく、もう通常会話ができるようだ。
『マナ・メガロドン』の提案は、的を射ている。
前に、『格闘術プロレス』の継承者アンティック君が言っていたが、魔物に襲われ『シンニチン商会』の船も二隻失ったとのことだった。
海の魔物が突然現れて、命を落とす者も多いらしい。
人々の危険を減らすためにも、その魔物の領域は制圧してしまった方がいいだろう。
それじゃあ……二つの場所を制圧してしまうか!
「わかった。じゃあ今度戦力を整えて、その二つの場所を制圧しに行こう。最初に『マナ・メガロドン』たちがいた海域で肩慣らしをして、その後、“海の魔域”に乗り込むとしよう! ただ海での戦いになる上に、なるべく殺さずに仲間として組み込みたいから、戦い方が非常に難しい。戦い方の想定をしておいてほしい。ケニーに任せるよ」
俺はみんなにそう言いつつ、大森林のリーダー『アラクネロード』のケニーに対策を委ねた。
「「かしこまりました、あるじ殿」」
ケニーは、人型分体と蜘蛛型分体に分かれたまま存在しているが、二体とも指をツンツンさせている。
もちろん人型分体は人差し指を高速でツンツンさせ、蜘蛛型分体は触脚をツンツンさせているのだ。
相変わらず可愛い奴め。
魚型の魔物を仲間にする方法は、今のところ二つだ。
一つは、『魚使い』ジョージの血が入っている『操魚の矢』を打ち込んで、ジョージが『魚使い』スキルで強く念じて仲間にする方法。
もう一つは、同様に『操魚の矢』を打ち込んで、俺が『操魚の笛』を吹きながら強く念じるか『テイム』スキルを使って仲間にするという方法だ。
数が多いと、ジョージと俺の負担が、かなりのものになる。
効率よく仲間にできる方法を、シュミレーションしておかなければならない。
ジョージにも、やり方をシュミレーションしておくように言っておいた。
あまりにも大変なようなら、思い切って倒してしまうという手もあるけどね。
ちなみに、大量に必要になる『操魚の矢』は、俺の『波動複写』でコピーできるので問題ないのだ。
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