691.不思議な奇跡クロスして、何度も巡り合う。
俺は、早朝に行った『べつじん28号』と『メカヒュドラ』の調査の結果ついて、みんなに簡単に説明した。
そして、その中で首領のアジトを発見する方法を思いついて、試したところうまくいったことと、そのままアジトを制圧し探索してきたことも報告した。
その結果判明したことについても、説明をした。
俺の報告に、みんな驚いていた。
そしてユーフェミア公爵とマリナ騎士団長からは、呆れた顔で見られてしまった。
一人で行ってしまったことに、お小言をもらうかと思ったが……かろうじてそれは大丈夫だったようだ。
呆れられただけで終わったようだ。
『真祖の血統』である『真祖吸血鬼 ヴァンパイアオリジン』のカーミラさんと出会えたお陰で、吸血鬼一歩手前の『適応体』状態の人たちを、元に戻すことが出来るということも皆喜んでくれていた。
カーミラさんの母親が、始祖であるドラキューレさんだと聞いて、みんな驚いていたが、特に『魔盾 千手盾』の付喪神フミナさんが衝撃を受けていた。
そして、なぜかカーミラさんをまじまじと見ている。
「やっぱ似てるわ。あなたは……始祖ドラキューレの娘ってことは……ヒナの娘なの?」
「はい。そうです。『守りの勇者』さんのことは、母から聞いたことがあります。大事な親友だったと。そして守ってあげることができなかったと言っていました。残留思念とはいえ再び実体化したあなたを見たら、きっと母も喜ぶと思います」
カーミラさんが、笑顔を作った。
よくわからないが……二人の話の内容からして……フミナさんと始祖ドラキューレさんは親友だったということなんだろうか?
「フミナさんは、カーミラさんのお母さんのドラキューレさんと知り合いだったんですか?」
俺はたまらず尋ねた。
「はい。親友だったんです。勇者仲間の間でも、特に親しい間柄でした。ああ、ヒナは『癒しの勇者』だったんです」
フミナさんが、懐かしそうに微笑んだ。
てか……どういうこと!?
癒しの勇者!?
なにそれ!? なにそのビックリ情報!
始祖ドラキューレさんって、『癒しの勇者』だったの!?
さらっと言ったけど……めちゃめちゃ衝撃発言なんですけど!
聞いていたみんなも、固まっちゃってますけど……。
『ヴァンパイアハンター』のエレナ伯爵やキャロラインさんはもちろん、ニアまで固まっていた。
そして全員が固唾を飲んで、二人の会話に注目している。
この世界では、『魔法機械帝国と九人の勇者』の英雄譚はかなり有名で、ファンが多いからみんな興味があるのだろう。
その一人である『守りの勇者』の残留思念であるフミナさんの存在だけで衝撃なのに……『ヴァンパイア』の始祖が『癒しの勇者』だったなんて話は、衝撃なんて言葉を通り越すようなびっくり情報だろう。
そんな俺たちの衝撃をよそに、フミナさんはカーミラさんに更に問い掛けた。
「あの……お父さんて……もしかして……ケントくん?」
「はい、そうです。正確には、転生した存在ですけど。『斬撃の勇者』ケント=レンゲジが転生した存在です。父の魂は、五百年ごとに転生を繰り返し、その度に母と結ばれています。もう見ているこっちが嫌になるくらい、熱々です」
「そうなんだ。よかった……ふふ、あの二人らしいわね。一人は五百年眠って待って、もう一人は五百年毎に転生を繰り返して、何度も巡り会う。すごいロマンチックなラブストーリーね。でも、その話を聞いて安心した。二人が幸せそうで。あなたみたいな素敵なお嬢さんもいるしね」
「ちょうど今が、転生時期なんですけど、今回転生してくれば五回目になるんです。私は四回目の転生の時の末っ子で、全体の末っ子でもあるんですけど、子供を全て合わせると、二十八人にもなるんです。母は吸血鬼の始祖でありながら、五百年を眠ることで人の体に近い状態になって、子供を産むことができるようになるのです」
「えー……ヒナってば……通算でそんなに子供産んでるの? 超ビッグマミィね。やっぱすごいわ……。相変わらず予想の斜め上を行ってくれるわ……」
フミナさんが、楽しそうにニヤけている。
初めてフミナさんの楽しそうな顔を見たかもしれない。
二人で盛り上がってくれて、良かった。
なんか二人とも元気な感じになってきている。
俺たち周りの人間は、衝撃を受けたまま……完全に置いていかれている。
そして聞き逃しそうになったが……衝撃も冷めやらぬまま……次なる衝撃ワードが出ていた気がするが……。
『斬撃の勇者』がお父さんなの?
それどういうこと……?
『九人の勇者』の中でも人気が高く、俺が剣道の部活少年だったのではないかと予想していた『斬撃の勇者』?
『魔竹シリーズ』の武具が『斬撃の勇者』の初期装備に似ているということで人気になっていたので、ちょっと身近に感じていた存在だ。
それだけに、衝撃だ!
一体どうなってるわけ……?
もう……我慢できない。
みんなも同じ気持ちだろう。
俺は、代表して詳しい事情を訊いた。
二人が説明してくれたところによると……
俺が会いたいと思っていた『ヴァンパイア』の始祖であり真祖のドラキューレさんは、元は『九人の勇者』の一人『癒しの勇者』ヒナ=ヒナタさんだったとのことだ。
そして、その旦那さんが『斬撃の勇者』であるケント=レンゲジさんだったらしい。
ケントさんは、ヴァンパイアになることなく、人として生涯を終え、何度も転生を繰り返し、巡り会って結ばれているとのことだ。
転生ものの恋愛小説を、地で行っているようだ。
そしてケントさんは人として生まれ変わることで……ヒナさんは五百年を休眠することで……子供を設けることができるということのようだ。
そんな話を聞いて、ここにいる女子たちは……みんなうっとりとしている。
そして何故か俺の方を見ているけど……はて……?
国王夫妻とビャクライン公爵夫妻は、お互いに見つめ合っていい感じになっているし……勝手に盛り上がってくださいな!
ラブストーリーの甘い雰囲気が、この空間を包んでいるが……。
二人の話は、まだ続いているからね! みんなちゃんと聞いてよ!
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