626.化身獣、覚醒!

 (緊急連絡! みんな、機械の殲滅兵が放出されている。人々を無差別に攻撃する可能性が高い。速やかに迎撃に当たってほしい! それから、俺とナビーは『波動収納』で、できるだけ回収してしまうつもりだ。みんなも『共有スキル』の『アイテムボックス』で、回収できるかもしれない。できたらやってみて! 多分それが一番早い!)


 俺は『絆』通信のオープン回線を使って、仲間たちに指示を出した。

 俺と俺の分身である『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビーは、共用で『波動収納』を使うことができる。

 これを使えば、魔法機械の殲滅兵を戦わずして回収することができるのだ。

 奴らは魔法的なAIで動いていて、魂がないから魔物と違って回収することができる。

 そして『目視回収』コマンドを使えば、視線でロックオンするだけで回収できてしまうのである。

 それ故、一体一体に近づく必要はないが、見てロックオンする必要があるので、数が多いと時間がかかる。


 そこで仲間たちにも、収納スキルで駆逐するという方法を試してもらうことにした。

 仲間たちの使える『共有スキル』に入っている『アイテムボックス』スキルでも、回収可能という実験結果をナビーが報告してくれていたからね。

 しかも殲滅兵自体の大きさは、人間の子供くらいだから巨大なメカヒュドラの首と違って、ある程度の数を回収できるはずなのだ。


 俺は、とっさにこの作戦を思いつき、みんなに告知したのだ。

 まぁナビーが、この“すご技”を思いついてくれたからこその作戦だけどね。

 それから、『アイテムボックス』のスキルレベルが10だからこそできる技でもあるようなので、俺たちだからこそできる“すご技”ということになるだろう。


 ん……殲滅兵の放出スピードが速まっている。

 というか……すごい数が放出されている。

 しかも方々に散らばり出した……。

 この『コロシアム村』だけを目指してくれば良かったのだが、四方に放出している。

 手当たり次第に皆殺しにするつもりなのか……まずいな……


(ナビーとケニーは、外に展開して殲滅兵の拡散を防いで!)


(了解しました)

(かしこまりました。すぐに向かいます)


 俺は、遊撃担当のナビーと『アラクネロード』のケニーに指示を出し、離れた場所の殲滅兵の駆除に向かわせた。


(ご主人、またアチシの出番みたい! 天声がまた告ってきたし。アチシ今回大活躍だし! マジ最高かよ!)


 突然、『龍馬たつま』のオリョウから念話が入った!


 ……天声が聞こえたのか……?

 今度は一体なんだ……?


(ぬし様、ワタシも聞こえた〜。空に浮かんで楽しい〜)


(マスター、私にも聞こえました。ペンダントが光っています!)


(マスター、ワタクシにも聞こえましたわ。ワタクシたち、みんな『化身獣』になるみたいです)


 オリョウに引き続き、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラ、『スピリット・オウル』のフウ、『スピリット・タートル』のタトルからも念話が入った。


 事態が飲み込めないが……


 天声が聞こえたと言っていたし、ペンダントが光っていると言っていた……。

 あの『階級』不明の謎アイテムのことだろう。

 昨日も突然光ったと言っていた……。

 そして『化身獣』って……?


 何かが起こっているのは間違いないようだ。


 この大変な時に……いやだからこそなのか!


 そして、すぐにオリョウたちが現れた!

 この『コロシアムブロック』の上空に飛んできたのだ!

 宙に浮かんで、強制移動させられたような感じだ。


 この『コロシアムブロック』は、『コロシアム村』の真ん中に位置している。

『東ブロック』のオリョウ、『西ブロック』のトーラ、『南ブロック』のフウ、『北ブロック』のタトルが宙に浮いたまま上空を飛来し、コロシアムの中央付近で停止した。

 そのまま東西南北に位置して、向かい合ってる。

 タトルは、首領の攻撃の際にコロシアム内の人たちを守ってもらう為に『コロシアムブロック』に来てもらっていたのだが、襲撃を防いだので担当エリアの『北ブロック』に戻ってもらっていたのだ。


 ここからでもわかる……首のところについているペンダントが光り輝いている。


「うん、わかったし! アチシは、キンちゃんパイセンと一緒に、ドラゴン王になるけど、セイリュウ様はドラゴン神なんだかし? まぁとにかく任せてだし! マジ手加減なしだかんね! セイリュウ様最高かよ! 化身獣覚醒! セイリュウ憑依!」


 なんだ……?

 オリョウが話してる。

 話の感じからして……なんとなく神獣セイリュウ様と会話している感じだが……

 そして、発動真言コマンドワードのようなものを唱えていた……。


 やはり発動真言コマンドワードだったようだ。

 オリョウが、みるみる光に包まれていく……

 ペンダントが発する光が、オリョウを包み込んでいるのだ。


 光がまん丸に変わっていく……。


 そして眩しさが収まると……透明なガラス玉というかシャボン玉の中にいるような感じになっている。


 だが……中にいるのはオリョウではない……東洋の龍の姿だ!

 青い龍……つまり青龍なのか!?

 俺が知識として知っている『青龍』と、この国の『護国の神獣』と言われている『セイリュウ』様が、同一の存在かはわからないけど……見た目的には『青龍』だ!


 ただサイズは、オリョウのサイズと同じくらいで大きくはない。


『波動鑑定』をかけてみると……


 姿が変わっているだけで、オリョウであることに間違いはない。

 ただし……『職業』欄に『化身獣けしんじゅう(セイリュウ)』と表示されている。

 そして『状態』の表示が、『セイリュウの化身状態』となっている!


 なんと……オリョウは、神と同様の存在である神獣『セイリュウ』様の化身になってしまったようだ!

 なにそれ!?

 凄過ぎるんですけど……というか……全然理解が追いつかない……。


「うん、わかった〜。がんばる。化身獣覚醒! ビャッコ憑依!」


「はい。わかりました。全力を尽くします。化身獣覚醒! スザク憑依!」


「かしこまりました。使命を果たしますわ。化身獣覚醒! ゲンブ憑依!」


 おお、トーラ、フウ、タトルが、オリョウと同じように次々に発動真言コマンドワードを発した!


 そして、オリョウの時と同じように、首のペンダントの光が全身を包み込み、最後にはシャボン玉のようなものの中に現れた!


 黒地に白い虎模様だったトーラは、反転したかのように、白地に黒い虎模様の白虎の姿になっていた。


 フウは、赤き朱雀の姿になっている。


 タトルは、黒き甲羅の玄武になっている。


 みんなサイズは、元の自分のサイズとほぼ同じだ。

 だから結構小さい。


 トーラはまだ子供なので、中型犬くらいのサイズだったし、フウは肩に乗るくらいの小さなフクロウサイズだった。

 タトルは、陸ガメのサイズだった。陸ガメとしてはかなり大きめで、リリイが乗れるくらいのサイズではあったけど。


 それにしても……この化身した姿は……俺の元の世界の知識で知っている四神そのものだ。

 ビャッコ様、スザク様、ゲンブ様と、白虎、朱雀、玄武は同一の存在ではないだろうか。


 『コウリュウド王国』を建国した初代王と従者たちに力を貸してくれたという護国の神獣たちが、今再び力を貸してくれたようだ。

 この王国の危機を救うために、憑依というかたちで現れてくれたのだろう。

 その寄り代として……オリョウたちは選ばれたようだ。

 おそらく、それが『化身獣』という存在なのだろう。


 あの『想いのペンダント』という名の『階級』不明の謎アイテムは、実は神獣と繋がるためのものなのかもしれない。

 オリョウたちは、それをたまたま持っていたから選ばれたのか……

 それとも、こうなる運命だったのか……


 『想いのペンダント』は、『マシマグナ第四帝国』の人造迷宮のテスト用第二号迷宮である『イビラー迷宮』の宝物庫にあったものだ。


 それを、オリョウたちが気に入って取得していたのだが……

 偶然にしては、出来過ぎな気がする……。


 オリョウたちは、自分で選んだつもりでいるが、このペンダントの力で選ばされたのかもしれない。

『想いのペンダント』は、付いている宝石の色がそれぞれ違うが、その色も見事に対応しているからね。

 青をオリョウ、白をトーラ、赤をフウ、黒をタトルが気に入って身に付けていたのだ。



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